第12話
「私は、オリヴィアではございません」
マリッサが静かに答える。
「あ…ああ、そのようだな。オリヴィアにしては若すぎる。すまない。少し座らしてもらおう」
国王は、少し青ざめたまま、よろよろと椅子に腰掛ける。
「おそらく、陛下は私の母のことをおっしゃってるのでは?私は、ソレイユと申します。こちらは妹のルナ。私たちは、北の国のオリヴィア王妃の子供です。ここに、シルヴィア・ダージリンからの手紙を持参しております」
アップルは、手紙を国王に手渡した。国王は、手紙を一読する。
「なるほど…、よく見るとオリヴィアとは瞳の色が違う。
そなたたちに、どれほど会いたかったことか…。だが、この手紙は、非常に重要である。
とりあえず、日も沈んだことだし、今日はここに泊まって行きなさい。ヴィー!」
「は、はい」
「この方たちは、北の国のソレイユ王子とルナ王女だ。お前の従兄弟でもある。私は大臣たちと会議をしなくてはならない。その間、丁重におもてなしするように」「はいっ」
ヴィーは、直立不動である。
「…お二人を部屋に案内するように」
ヴィーは深くうなずくと、二人を振り返った。
「ご案内します。父上、失礼いたします」
二人は、国王のほうを見る。国王の目は笑っているように見える。
国王の前を辞すると、三人は一言も喋らずに廊下を歩き続ける。
三人は、それぞれに物思いに沈んでいた。
シルヴィアからの手紙のこと、オリヴィエ王の様子など、アップルとマリッサは、考えることだらけである。
「こちらにどうぞ」
気がつくと、ヴィーが小さなドアの前に立っていた。ヴィーがガチャッとドアを開ける。そこには、小さな老婆が立っていた。
「ソレイユさまとルナさまのご滞在中は、私がお世話をさせていただきます。ミアと申します」
黒い長い衣装をまとった老婆は、お辞儀をする。