第11話
城門から、中に入ると子供は、くるりと振り向いた。
「で、君たち誰?ここに何しにきたの?」
「あ、あなたこそだあれ?」
マリッサは思わず尋ねる。
「僕は南の国の王オリヴィエの息子ヴィー」
ヴィーは、ちょっとばかりふんぞり返る。
いや、アップルたちだって王子と王女なわけだしと思うが、アップルは少し考えて、ここは下手に出とくことにした。
「わあ、それはすごいな。ところで国王陛下にお会いしたいのですが」
「ついてこい」
ヴィーは、ふんぞり返ったまま歩き出す。マリッサが、ぷっと吹き出して慌てて咳をしてごまかす。
門限に遅れると言って慌ててた子供では、今更威厳を取り戻せるわけもない。
二人を連れて城の中に入ったヴィーは、いくつか角を曲がったあと、小さな扉の前で立ち止まり、コンコンとノックした。
「誰だ」
中から声が聞こえてくる。
「父上。ヴィーです」
ヴィーが、少し緊張しているのが伝わってくる。
「入りなさい」
ヴィーは、二人のほうを振り返ると指でついてくるように示して、扉を開け、中に入って行った。
一人掛けの大きな肘掛け椅子に、男性が座っている。ヴィーの後ろに続く二人を見た男性は、立ち上がった。
「誰をつれてきたんだい?」
そう言いながら近づいてくる。
「知らない。街で会った友達です。父上に逢いたいって言うから」
そう言うヴィーに、男性は少し困ったように微笑みかける。
「あまり知らない人を、ここに連れてくるのは良くないね、ヴィー」
そう咎めはするものの、その声に怒りはない。
二人は、国王の前でもあるから、頭を下げたままである。
「私が国王だ。面をあげなさい」
二人が顔を上げると、国王は口をぽかんとあけた。
「オリヴィア、オリヴィア…」
うわごとのようにつぶやく。