第10話
日も傾き、遠くのほうに南の王城の尖塔が見えてきた。
南の王都は、白い壁に赤い屋根の明るい雰囲気の建物が並ぶ。農耕の盛んなこの国らしく、舗装されたれんがの道の脇には小さな果樹園のように実を付ける樹木が並んでいる。
平和な国であったから、王都の周囲には門も壁もない。王城は、この国の王都の他の建物と同じように、白い壁に赤い屋根の建物である。ただ違うのは、その周囲に堀があり、四隅に尖塔がたっていることくらいだろうか。
その白い尖塔に夕陽が照りつけ、真っ赤に染めている。
二人は、初めて足を踏み入れる王都を珍しそうにながめた。
もう時間も遅いからか、街に立ち並ぶ市場の露天商たちは店じまいを始めている。
二人は、市場を横目にみつつ、まっすぐ王城へと向かった。
二人が王城へと馬を進めていると、ジンジャーの前に突然子供が飛び出してきた。アップルは、急いでジンジャーのたずなをひく。
「ひひーんっ」
ジンジャーのいななきが響く。
アップルは、さっと地面に降り立った。
子供の無事を確かめると、アップルにしては珍しく声を荒げる。
「危ないだろっ」
「ごめんなさいっ。門限に遅れそうで、急いでたんだ」
子供は舌をぺろっと出す。
「アップル、急がないと日が暮れてしまうわ」
マリッサが言う。
「王城まで乗せてってよ」
子供は悪びれもせず言う。
「いいよ」
アップルは、子供を乗せると自分もひらりとジンジャーにまたがった。
そのまま、王城へと馬を走らす。
城門まで行くと、子供と一緒に、アップルとマリッサも馬から降りた。
「あれ?君たち王城に用があったの?じゃあ、入りなよ」
子供は、城門の兵に手をふって、そのままスタスタ歩いていく。アップルとマリッサは顔を見合わせたが、そのままついていった。