CURSE in HELL ~ONE~
昔々、神代の昔のお話です。
争いに満ち、滅びに瀕した世界にひとりの少年がいました。
誰もが誰かを憎む世界で、少年はただ独り、誰よりも優しい心を持っていました。
だけど、その心は、すべての人に偽善とののしられました。
しかし、どんなにひどいめにあっても、少年は、優しさを忘れずにいました。
そして、少年は、思いました。
<みんながみんなを大事に思える幸せな世界になるにはどうしたらいいんだろう>
少年は、考え、そして、世界と契約を交わしました。
少年がすべてから憎まれる敵になる、と。
自分ひとりが敵となり、みんなから憎まれれば、自分を憎むことで、世界は一つになる。
すべての悪い出来事も、全部自分のせいだと思われれば、憎しみが世界に広がることはない。
敵である自分に打ち勝つために、みんなが手を取り合い、仲良くできる世界になるんだ、と。
契約を交わした瞬間、少年のその身と心は、あらゆるものから最も遠く離れた場所につくられた牢獄に繋がれ、世界にあるすべてのものの憎悪を受ける供物となりました。
耐え難い苦痛にその身を貪られ、絶え間ない怨嗟にその心を苛まれ、それでも少年は、自分が苦しんだだけ、みんなが幸せになれるんだと信じていました。
しかし、現実は、違っていました。
明確な敵の存在が示され、すべての原因がそこにあるという事実は、逆に何をしても、それが原因だという身勝手な考えを生み出し、世界は、ますます争いに満ちていったのです。
世界にあるすべてもののは、敵に立ち向かうため、互いに手を取ることはなく、敵の存在を拠りどころに身勝手な自己を振り回すだけの暴君となったのです。
少年は、繋がれた牢獄でそのさまを見て、自分の犯した罪を嘆き悲しみました。
少年は、誰一人としてうらまず、ただ必死なって世界を支え、憎悪にその優しい心と小さな身体をさらし続けました。
しかし、突然、少年にある衝動が生まれました。
<敵となったからには、すべてを屠れ>、と。
少年は、世界の敵となりました。
だから、世界に対し、立ち向かう義務があるのでした。
すべてが幸せであればいいという少年の願いからかけ離れた世界となったとき、少年は、敵となった自分の手で世界を屠らなければならなくなったのです。
そして、その手で幾多の命を手にかけ、手にかけたものの罪をその心と身体に刻みつけたあと、少年は、世界が遣わした寵児ともいうべき神の子によって打ち滅ぼされ、再び牢獄へと繋がれたのでした。
その契約は、その一度だけではありません。
新しい別の世界でも、少年は、その身にすべてのものの憎悪を注ぎ込まれ、その世界が滅びに瀕したとき、少年は、世界を屠らなければならなくなったのです。
そのたびに、少年は、穢れ濁った黒にその身を染められ、世界の遣わした金色に輝く神の子に滅ぼされるのです。
それが、世界と―神―と交わした契約。
ゆえに、その二つ名は“神代の忌子”。
神代の昔、神に代わり忌み嫌われた子ども。
いけにえとして、世界―星―を護る座に奉られた、ただ独りの魔。