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準備世界

相変わらずプロット無しでの見切り発車。

10話ぐらいで終わるんじゃないかと、淡い予測のままにスタート。


言い回しが変なので改変しました。

 


 まずは準備世界から、500万円を持ってスタート。


 既にアイテムボックスが支給されているので、何かしら買い物をして準備するのが通例なれど、NPCの自殺志願者に絡まれると厄介なので、橋の近くには行かないようにしろと、攻略掲示板のβテスターたちは皆口をそろえて警告していた。


 何でも借金の都合が付かないのが原因らしく、500万円が必要と言われるらしい。


 かつてβテスターでそれをやり、貴族の生まれになれるかと期待した者は、当然のように職業『貧民』となったうえに、すぐに病気になって強制ログアウトを食らったとか。

 どうやら死ねば強制ログアウトになるらしく、そうなったら当分の間は次のログインが出来ないらしい。

 つまり、そのβテスターは、テストが終わるまでログインできず、その鬱憤を晴らすかのように攻略掲示板に警告を出した。


 そんな訳で、絡まれると金を渡さない限りは離してくれなくなるので、橋には絶対に近づくなと警告していた。

 なので本サービスでそれに引っかかるのはひとりも────否、主人公以外はいなかった。


 ◇


 いきなり無一文になったな。


 だけどその見返りがあるとは寡聞にも聞いてないが、本サービスで変更になったのかな。

 設定も違っていて、借金が返せないからじゃなく、商品が売れないからとか。

 なので500万円を渡す代わりに、その売れない品を引き取ったんだ。


 確かにこんな現代社会では需要は恐らく無いと思しき品だったけど、異世界ならもしかして、あるかも知れないと思わせる品。


 これってきっと運営の罠だろ。


 わざとβで理不尽な目に遭わせておいて、本サービスでちゃっかり変更するとかさ。

 もしかするとGM辺りが利用する為の設定じゃないかと思わせるそれは────


 生活改善用品だった。


 そんなの都会の街中で店をやっても意味は無く、売れないのも道理ってもんだ。

 本当に儲けたいのなら、その手の需要のある辺鄙な村とかじゃないと無理だろう。


 ・虫避けの塗り薬。

 ・水中害虫対策の塗り薬。


 虫避けって蚊を防ぐのは売れそうだけど、今時なら電子なんちゃらがあるから塗り薬はマイナーなのだろう。

 それに、外でもスプレーのほうが人気があるようで、ますます不良在庫になっていたとか。


 それにしても、水中害虫ってツツガムシかよ。

 そんなの異世界に居たら大変だぞ。


 ・水質改善薬品。

 ・河川水ろ過器具。


 これも水道のある町じゃ必要の無い代物だな。


 未だに井戸水なんかを使っている村とかなら、渇水時の水質悪化の改善に使えるかも知れないけど、都会じゃ渇水時には水の配給もあるだろうから必要はあるまい。


 器具のほうも、キャンプ用品のようだけど、もっと本格的な代物だ。


 つまり、ろ過器具も業務用なぐらい大きくてさ、大量の水のろ過が出来るのは良いものの、やはり都会では需要は無いだろうって品だ。


 500万円のカタに受け取ったのは、ろ過器具を含む、大量の各種塗り薬と水質改善薬品+αだった。


 虫除け軟膏(昔のオロナ○○のようなビン入りキャップ付きの品、100本入り箱) 5箱。

 水中害虫対策の塗り薬(やはり同様のキャップ付きビン容器、100本入り箱) 3箱。

 業務用ろ過器具(100リットル毎分・太陽光発電充電システム搭載、予備リチウムイオンバッテリー含む) 2基。

 水質改善薬品(1000リットルに対して1袋、100袋入箱) 15箱。


 +αだけど、大量に仕入れたものの全く売れず、今回の件に直接的な影響のあった、有名某社のパクリと思われる、栄養補給食品バーの箱を全部。


 気分はバッタ屋である。


 さすがに500万円をオーバーしそうな量だけど、本職のバッタ屋に売れば二束三文らしく、軽く見積もりしてもらった結果は、倉庫の品を全部売っても300万円に満たないらしいのだ。


 だから全部受け取ってくれと言われた。


 ゲーム前の準備段階の世界と思わせ、妙に手が込んでいる。

 運営はこんなのにどんだけ手を入れてんのかと思ったけど、やはりGMに向けた準備か何かだろう。


 まあいいや、くれるならもらうだけだ。


 商品名『栄養の友』


 あのな、それってさ、栄養はカロリーでさ、友はメイトだよな。


 そんなあからさまな名前だからモロパクリと分かる品で、だから売れないとか妙にリアリティのある設定になっていた。


 他にも売れない理由はある。

 本物と希望小売価格が同じなのだ。

 同じなら本物のほうが良いよな。


 だから売れなかったとか、妙に辻褄があっている。


 店主は早速、支払いに向かうらしく、倉庫の中の品は全部構わないと告げ、倉庫を出ていった。


 だもんでそれぞれの品を全部、アイテムボックスに詰めていったんだ。

 そうしたらだよ、商品の奥に何やら古びたテントを被せたものが鎮座している。

 なんだろうとめくってみれば、なんとこれが原チャリだ。


 おいおい、これも良いのかよ。


 走行距離は726キロとか、殆ど新品のようだけど、これも良いならもらってくぞ。

 横にポリタンクがいくつか置いてあるけど、これって燃料なのかな。

 小さな缶はオイルのようで、他にも整備用品と思しき工具の数々もある。

 既に言質は得ているので、遠慮も無しに全て接収した。


 倉庫から出ようと思ったら、壁に何か吊るしてある。


 この鎌って雑草用か? もらいだな。

 このノコギリは日曜大工用か? もらいだな。

 このハンマーも良いのかな? もらいだな。

 このバールも良いのかな? もらいだな。


 ついでに吊るしてあるロープももらうぞ。


 おおう、下にとぐろ巻いてて、これって100メートル巻きを切らずに使っていたのか、もらいだな。

 なんだ、釘の箱もあるじゃないか、もらいだな。

 床敷きのテント生地のこれ、雨避けになるよな、もらいだな。


 倉庫の中にはもう、全く何も無い。


 ◇


 橋からの帰り、プレイヤーと思しき存在に見咎められ、攻略掲示板を見なかったのかと言われた。


 そこで軽く同意して哀れまれたが、支援しようって物好きは現れず、それどころか『貧民決定者』として皆に要らぬ紹介までする始末。


 ふふんだ、お前らが飢えてもパクリのバーはやらないからな。


 食べてみたけどさすがにパクリ商品だけの事はあり、味がそっくりだったんだ。

 言わば、箱の印刷だけ偽って品でさ、中身はそっくりと言ったほうが良いか。

 だから食べてもなんら違和感はなく、あれだけの量ならありがたいぐらいだ。


 時間が余ったので、何かしら無駄な努力でもしているように見せかけようと、巷をうろついてみた。

 そうしたところがそれこそ日曜大工をしているおじさんが居て、釘が無いと騒いでいる。


「何本欲しいの? 」


「あるのかね、ならばな、7本欲しいのだ。たったそれぐらいだから買い物に行っても余るからの、どうしようと思っていたのだ」


 接収したばかりの釘の箱から7本渡すと、お礼だとジュースをくれた。


 ボックスに入れとこ。


 さすがにもう無理だろうと思いつつも、無駄なあがきをしているように見せかける為に町をうろつく。


 いやね、どうせ転生になったらバラバラになるものの、惨めなスタートだと思わせておけば、余計な茶々が入らないものだ。

 だから表向き、貧乏に見せるのは必要だからさ、転生になっても貧乏暮らしに見せておけばいい。


 人は他人と比べ、劣っていたら哀れんで優しくなったり、蔑んで無視したりするようになる。

 その代わり、凌駕していたら羨んで余計な情報を他人に与えたり、僻んで様々な邪魔な行為に走るむものだからさ、あんな大量の品を確保したとか、余計な物言いは破滅の元になるのは確実。

 そんなこんなで町のはずれ、プラスチックごみの集積場を見つけた。


 あるよ、あるある、ペットボトルの空いたのがわんさかと。


 全部もらいだな。


 残り2時間余りとなり、そろそろ広場に戻ろうと思いつつ、途中の公園で接収したペットボトルに飲料水を詰めておいた。


 125本の2リットル飲料水確保っと。


 ◇


 そうして憐憫やら嘲りの視線の中、通称、転生オンライン、正式名称、アナザーライフオンラインの始まりである。


 聞こえてきた話によると、皆は運営御用達の食料品店で、お買い得弁当を大量に仕入れたらしく、当分の間、日替わり弁当状態になるらしい。


 1食が最低1000円で、高い物になると5000円ぐらいする弁当を、まとめて買えば割引になるかとで、500万円全て弁当にしたって奴がかなり居た。


 ちなみに5000円の弁当は高級寿司の詰め合わせらしく、大トロが旨そうとか言っていたけど、食ってみた訳じゃないのによく大量に買おうと思ったもんだ。


 だけどさ、異国の食事とか、親に知られたらヤバくないか?


 オレ達は転生になれば、それぞれに親を持つものの、アイテムボックスの存在は極秘であり、バレたら途中退場する場合もあるとか。

 現地では汎用の拡張カバンがあるらしく、それの入手まではみだりに使うなと言われている。


 そもそもさ、アイテムボックスって時は停止しているのか?


 確かに小説なんかでは停止ってなっているけどよ、このゲームでは何故か言及されてない。

 そりゃ運営御用達の食料品店で、日替わりに出来るぐらいの大量の弁当とか、時が止まらないと腐るだけだろう。


 だから皆は止まると思っていて、βでは停止だったとか。

 確かに現在も停止のようだけど、異世界でも停止の保障は無い。


 しかるにオレが接収したのは、箱の印刷だけ偽の品だ。


 あれは5年ぐらい保つ品だからさ、停止しなくても問題は無いし、仮にその倍の10年だとしても、風味が落ちるぐらいで腐る事はないはずだ。

 確かに古くなった飲料水はヤバいけど、それこそ水質改善の手段はあるから、別に飲めなくなったのを無理して飲む必要も無い。

 だからもし、あれも運営の罠ならさ、大量弁当組は相当ヤバい事になるな。

 赤子の頃には出せず、少年ぐらいになって、いざ食おうとしたら猛烈な臭気とかさ。


 まあ、そこまで悪質じゃないだろうし、停止は続くと思うんだけどね。

 

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