第6話出会いは奇なり。でもその出会いは私の気持ちを暖かくしてくれた
「ねぇ倫子、次の講義代返できないかなぁ」
「またなの優美、最近こんな事頼むの多くない」
倫子は少し優美の最近の行動に違和感を持ち始めていた。
彼女優美とは高校からの付き合い。
同じ高校で、同じ大学のこれまた同じ学部にいる。
だから何かがあればいつものように優美は私を頼る。
でも最近はそれが多発している。
「ねぇ、優美。あんたもしかしてまた男出来た?」
優美は少し眉をピクッとさせて
「いいじゃないの。だってねぇ出来たものは仕方ないじゃん」
「それにしてもあなた、講義をこんなに休んでまでもその彼の所に行って本当に大丈夫なの」
優美は高校の時からそうだった。
「私、好きな人が出来た」
そう言ってその彼に一直線。
もう周りなんか何も見えないって感じで、学校に来ない事もよくあった。
そしてそのつけは全て私に来る。
私が優美と知り合ってもう6年近くになる。
初めはお互い特別意識することもなく、ただのクラスメイトの一人としか感じていなかった。
優美の性格は明るく誰とでも隔たりを持たなく付き合えて、そして彼女自身誰かを見下すようなそんなことはしない性格の子だった。
しかもハッと見の外見も結構かわいい感じだ。
それに引き換え、私はどちらかと言えば性格は地味な方で、自分の感情にかかわる事以外については、何かにつけ後先を考えすぎるような性格だったと思う。
だから、クラスの中でも浮いていたと言われればその通りの存在だった。
まぁ、二人の共通点と言えば、目立つような優秀な成績を持っていない事だった事だけかもしれない。
彼女優美と親しくなったのは、高校に入学をしておよそ半年が過ぎたあたりだったと思う。
まぁ、特に親しい友達もなく、昼休みお弁当を一緒に食べようとする人もいない私のいつものランチ場所は、生徒は立ち入り禁止の屋上だった。
その昔、この屋上は生徒の隠れたたまり場だったらしい。
そこで煙草を吸ったりもしくは陰険ないじめをして居たり。
まぁいかがわしい場所であったことには違いないだろう。
そんな事が続き、この屋上は生徒は立ち入り禁止になっている。
でも私は特別。
この屋上のドアの合いかぎを持っているから。
どうしてって、それは今は言えない。
それは私ともう一人の私の大切人との約束だから。
「うーん。今日は風が気持ちいい」
小さなお弁当に、ペットボトルの冷たい紅茶。
ここで過ごす時間が私にとって唯一学校に来る意味だと感じている。
そんな時、なぜか誰かがこの屋上のドアを開ける音がした。
ここに来る時、誰かに付けられていた形跡はない。それはいつも十分に気を着けている。
「バタン」
風に少し押され、大きな音と共にドアが閉まる音がした。
「まずい。ここにいることがばれると多分飛んでもないことになってしまう」
心の中で叫ばずにいられなかった。
慌てて、食べかけの弁当を保冷バックに押し込み、隠れる所はないかとあたりを見回す。
「あれぇ、誰かいると思ったら倫子ちゃんじゃない」
既に私は見つかっていた。しかもそこに居たのは優美だった。
「あ、え、えーと。あのね、だからね……えーとね」
私はしどろもどろになって何とか言い訳を考えていたが、動揺しすぎて言葉にならない。
でも彼女はそんな事お構いなしに
「倫子ちゃん、ここでお弁当食べていたんだぁ」
私の横にある保冷バックを指さして言った。
そして私の横にスカートを膝の後ろで抱えながら座った。
「私さぁ、今日朝から何も食べてないんだぁ。朝寝坊したし、さっき購買に行ったら、パンはもう上の人達に買われちゃっててなかったし。なぁーんにも食べるものないんだぁ」
つまりそれは、私のお弁当を譲渡せよと言っているのだろう。
もし、それで私がここの常連である事がばれなければ安いものだ。
「よ、良かったら食べるお弁当……食べかけだけど」
彼女はそれを聞いて大きく
「うん」と頷いた。
「わぁ、すごい。このお弁当倫子ちゃんが作ったの」
「う、うん。そ……そうだけど」
彼女は興味津々に箸で卵焼きをつまみ大きな口を開いて頬張った。
「美味しーーーい。美味しいよ、この卵焼きほんと美味しいよ。涙が出ちゃうほど美味しいよ」
「ちょっと、大袈裟よ。普通の卵焼きよ。そんなに褒められたら、かえって恥ずかしい」
「だって本当だもん。こんなに美味しい卵焼き私生まれて初めて食べたよ。倫子ちゃんって料理上手なんだね」
優美は口が上手いのかそれとも、本当にそう感じて言ってくれているのか、ここにいる事の秘密がバレない様にと思う気持ちが先だって素直に受け取れない。
優美は夢中になって私の弁当を綺麗に残さず食べた。
「ねぇ。何か飲み物ない」
「飲みかけの紅茶ならあるけど……口つけちゃってるんだけど……」
「別に、そんなの気にしないよ。もしくれるんだったら頂戴。喉乾いちゃった」
そういう優美に、私が口を付けたペットボトルの紅茶を渡した。
彼女はキャップを開けて何も気にする素振りも見せないでゴクゴクと紅茶をのどに流し込んだ。
ちょっと複雑な気持ちというか気分というか……此れって関節キッス?女同士だけど……。
少し顔が赤くなってきた。
そんな私を優美は見つめて、一言
「倫子ちゃんってもしかしてまだバージン?」
いきなりそんな事聞かれたって……どう答えればいいのよ。
「だって、これくらいで顔赤くしてるんだもん。あ、もしかして倫子ちゃんレズだった。それならわかるかもしれないけど。あははは」
「そ、そんな私レズなんかじゃないわよ。それにバージンなんかじゃないし……」
声を大きくして言ってしまった。
言ってしまってから最大の後悔の波が押し寄せて来た事は言わないでおきたい。






