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Paradox・A lover パラドックス・ラヴァー  作者: さかき原枝都は
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第19話未来から来たと言う青年

 風呂から上がり、二人でベットに並んで背をかける。

 「ふう。やっぱり風呂上がりの一杯はいいねぇ」

 優美はまるで、どこかのおじさんの様な事を言う。そういう自分も

 「ふう。ほんと生き返るわ」

 こっちの方がよっぽど叔父さんだ。

 二人で「ヤダなぁ」なんて言いながら笑い合った。

 そして優美は静かに話し始めた。

 「ねぇ倫子。これから私が話す事、信じるか信じないかはあなた次第なんだけど……」

 その表情は少し重く感じた。

 「なぁに、優美らしくない。どうしたって言うのよ。それともかなり深刻な事なの」

 私はその表情を見て聞いてみた。

 「うーーん。深刻って言えば深刻なんだけど、実際私自身もあまり感覚ないんだ。だから困ってんのよ」

 一体何のことなんだろう。優美自身も感覚がないって……もしかして

 「もしかして、優美妊娠しちゃったとか」

 「へっ」

 一瞬あっけにとられたような感じの顔をする優美。

 「ばかなぁ。そんなへましないわよ。ちゃんと避妊してるわよ。生理もバンバン来ているわよ」

 お腹を叩いてハハハと笑う。

 「じゃ、何なのよ」

 缶ビールを口にして優美に投げやりに聞く。少し酔いが回ってきていた。

 「うん、それがね。実は彼の事なんだ」

 「彼って今付き合っている彼の事」

 優美の彼って言うのは数が多すぎて困る。

 「そうなんだけど……」

 ためらう様に目線を落とし、優美の表情はこわばりを見せ始めた。


 「あのね、もしもよ。もしも、あなたが一番愛する人がこの世から突然いなくなったら、あなたはどうする」


 私の一番愛する人が……この世からいなくなる。

 つまり、私の前からいなくなる……一番愛する人が。

 優美は一番つらいと感じる問をなげかけたんだと思う。

 今、私が一番愛する人。それは、今まで私を支え育てこの世に生んでくれた両親……確かに、とても大切な、そして愛すべき人。でも、今はもっと私にとって大事な人がいる。

 それは「俊昭さん」

 私の一番愛する人それは俊昭さん。

 もし彼が突如この世から去ってしまったら。

 そんな事、想像も………この頭の中にもその存在が無くなるなんて考える回路させない。

 「優美どうしてそんな事いきなり訊くの」

 私は目にうっすらと涙を浮かべて優美に訊いた。

 「ごめんね。いきなりこんな事訊いて。でもね、彼私にも同じ事この前訊いてきたの」

 「それで優美はなんて答えたの」

 彼女はじっと下を見つめ

 「そんな事考えたくもない。そんな悲しいこと、あってほしくない」

 優美の率直な意見だっただと思う。

 そう、それの答えは誰しもが、同じ答えを返すだろう。

 「でも彼は言うの。人間だれしもいずれは死を迎える。それが早いか、遅いかの違いだけだって。でもそれは自然の事だから致し方が無いことだって言っていたわ」

 確かに優美の彼が言う事は正しい。

 お姉さんは、医者として私にこんなことも話してくれた。

 「人には寿命というものがある。それは、必ずしも年を老いてからくるものではない。病気や怪我、もしかしたら事故でこの世を去らなければならなくなるかもしれない。そう私たちの両親の様に……だから、人は今を精一杯生きなければいけない。生きている事の喜びを感じながら、今、この時を精一杯生き抜く努力をしないといけないんだ。私達医者は、その生きる力に対してほんの少し手助けをしているに過ぎない。医者は、神でも何様でもない。同じ人間なんだ。人が人を助け支え合う。そんな事、当たり前の様な事だがこの世界では一番難しいことになっているのも事実だ」

 この言葉は私の胸の中に刺さる思いがした。

 お姉さんのこの言葉があるから、俊昭さんは、私を助けてくれた。そして今、一緒にいる事の本当の意味を理解しながら、私は俊昭さんを支え、そして支えられている。

 だから今の私は生きていることがとても幸せだ。

 辛いことも沢山あるけれど、それよりも俊昭さんと一緒に生きていくことの大切さの方が、今の私にとって一番大切なことだと感じている。

 私は優美に

 「そうね。人間はいずれ死という事を迎える。それがどう言う形かはわからないけど、この世に生まれてからすぐに私たちはその死という人生の終わりに向かっているんだと思う」

 優美は下を俯いたまま訊いていた。そして

 「うん。そう彼の言う事も倫子の言う事も確かな事。でもね彼が言っていた本当の意味って違っていたんだ」

 「それってどういう事よ」

 「彼、私に言ったの。僕は未来から来た人間なんだって」

 「未来から来た人間?それって真面目な話なの」

 とっぴおしもないことを言う優美にちょっと驚いていたけど、その優美の真剣な表情は変わっていない。

 だとすると優美の彼がそう言ったことは確かな事だと思う。 

 「でもそれって、冗談かなんかじゃないの」

 「ううん。私も初めは冗談だとだと思って笑い飛ばしたわ。でもね、彼いろんな事私に話してくれたの。今の時代から見て過去の事や、そして未来の事」


 過去と未来の事。過去の事だとすれば今の時代ちょっと調べれれば、解ることはたくさんある。でも未来の事は調べようがない。だってまだ事が起きる前の事なんだから

 「彼ね、私と初めて出会ったときなんて言ったと思う。山村優美やまむらまさみさんですね。本当にお久しぶりです。て言ったのよ。最初は、どっかで私の事調べて来てからナンパしてきたんだと思ったわ。だから最初は本当に無視してやった」

 優美の彼は実はストーカーだったのか

 私はそう思った。

 だけどその後優美が話した事は本当に信じられない事だった。

 



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