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Paradox・A lover パラドックス・ラヴァー  作者: さかき原枝都は
10/20

第10話石崎家という家の人達

 「ねぇね。倫子ちゃん」

 優美は必要以上に私たちの関係に食い込むように質問をしてくる。

 「告白はどっちからなの?」

 告白?ああ、それは好きだと言う事を告げる事だったけ。

 実は私、こういうなんて言うか恋愛の関係の話って物凄く苦手。

 普通ならこの手の話ってみんなよくするんだろうけど、何だろ。人前で話すようなことでもないと感じてしまっているからかも……

 だから優美から「告白どっち」なんて言われてもあまりピンとこない。

 まぁ、確かに付き合うと言うか、こう言う関係になったきっかけは私にあるったんだろうけど、実際ここまで発展させたのは、実を言う俊昭さんの姉であるあの院長先生だ。

 優美はつづけさまに

 「それで、確か倫子ちゃんもSEXの経験ありって言ってたよね。それってやっぱり石崎先生が相手なの」

 もう、彼女は本当にこういう話や、私の事になると遠慮と言うか、恥じらいと言うか……いいえ、それを言うなら私もその恥じらいの部分については自分の性格とは反比例している。ただし本当に特定の人にしか作用していない様だけど。


 「頼む山本。このことは誰にも言わないでくれ。むろん学校になんかばれたら俺はすぐに首になっちまう。それに倫子にあらぬ噂が立つのも避けたい」


 俊昭さんは、目を星の様にキラキラ輝かせて質問攻めする優美に願うように言う。

 「そんなの当たり前じゃん先生。だって私の大切な友達だよ、倫子は。その倫子が困る様な事私は自分が死んでもやらない。私は倫子と心は一つだと思っている。もし倫子に何かあったらその時は私にも何かあると思う。だから言うんじゃないけど、私倫子の事なんでも知っておきたいの。どんなことも、どんなに小さいことでも私倫子の全てを知っておかないと気が済まないの」

 …………優美。

 その後優美はつけくわえて

 「でもね本当は、二人の関係にとても興味があって質問しているのは否定しないけどね」

 私と俊昭はお互い顔を見合わせて、同時に多分こう思ったに違いない。

 「この子にはかなわないな」って。


 私が始めて俊昭さんと彼の姉である真純さんに出会った日、怪我の治療が終わればアパートの帰るつもりでいた。でも

 「なぁ、倫子ちゃん。今日はもう診察終わりなんだけど、良かったら一日入院でもしていく?」

 とさりげなく言う。

 「え、入院ですか。ここって入院も出来るんですか」

 「あははは、まぁ、ココは診療所だから入院の設備はないけど、どうせ明日も来てもらわないといけないし、ましてその足で今晩一人にさせるにはいささか心配でな。どうかな、家に一晩泊まると言ういい方に変えるとしたら」

 「え、そ、そんな。そこまで……」

 と遠慮しながらも本当はとても有難かった。多分このままアパートで一人いても動くこともできないだろうし、まして食事を作ることも大変なんだろう。と内心感じていたのだから。

 でも、どうしてこの人達はこんなにも優しんだろう。

 始めて来た都会。

 初めて味わった人の冷たさと、疎外感。

 そしてここで知ったここに住む人の暖かさ。

 それはこの大都会にもこんなに暖かい人がいるんだと言う事を感じさせてくれた事。

 もしあの時彼、俊昭さんと偶然出会わなかったら、私はこの都会を嫌いになっていたと思う。

 人がただ多くて溢れかえっていて、他人の事なんか目もくれず自分させ良ければそれでいい。その卑屈な気持ちが私を支配し続けていたに違いない。

 私は本当に運がよかったのかもしれない。

 そして、この人たちに信頼という気持ちが芽生えてきているのも感じている。


 石崎家に泊まることになった私は、この二人とその家族の事。そして最大の秘密?多分そうだろうと思う事を知ることになった。


 夕食の時間が近づくと、おもむろに俊昭さん、彼が動き出す。

 キッチンに行き、冷蔵庫の中を確認して

 「わりぃ、俺、ちょっと足りないもの買ってくる」

 そういうなり、とっとと家を出た。

 その前に何やらほかでもごそごそやっていた様だったが。

 少ししてから、彼が買い物袋を手に下げ帰って来た。

 居間でテレビをボーとしながら眺めている私に

 「大丈夫?まだ傷痛むだろう。倫子ちゃんは何にもしなくていいから、それに遠慮なんてしなくていい家だから気楽にしていて」

 とは言われたものの、実際落ち着くなという方が無理な話だ。 何となく肩身の狭い思いをしていた。

 そこで「ピピピピ」と電子音が聴こえた。

 「おっと、終わったみたいだな」

 彼はその方向へ足早に行き、居間に戻ってきたときは大量の洗濯物を抱えていた。

 「さてと」と一言言ってその洗濯物を選別するようにより別ける。何気なく見るとそこには男性もののシャツや下着、それにタオル。そして派手目のパンティにブラ、?ブラにパンティ?ハット目にしたものを疑うようにしている自分がいたが、彼は何も気にすることなくその女性用の下着類をたたみ始めた。 思わず

 「あの、それ、私やります。座って出来ますからやらせてください」

 俊昭さんは私の言葉に

 「え、本当。助かるなぁ。悪いけどお願いしちゃおうかな。そっちのブラとかは姉さんのだから、そこにまとめておいてくれればいいよ。後で俺が戻しておくから」

 はぁ、としか声が出ない。そして彼はキッチンに向かい。

 「今日は酢豚にするよ。倫子ちゃん酢豚大丈夫?あ、それと人参とピーマンも入るけど大丈夫かなぁ」

 ふんふんと鼻歌交じりに私に問いかける。

 「だ、大丈夫です。私酢豚大好きです」

 「そうか、そりゃよかった。今日は作り甲斐がありそうだ」

 なんだかとても楽しそうに声が返ってくる。

 そこへあの院長先生がやって来た。

 「なんだ俊昭。お客さんに洗濯物たたませてるのか。それに彼女は怪我人だぞ」

 少し呆れたようなそして刺のある様な感じの声だった。

 「あ、いえ、私が俊昭さんにやらせてくださいってお願いしたんです。俊昭さんは悪くありませんから怒らないでください院長先生」   

 彼女は少しふうとため息をつきながら

 「俊昭さぁん。そう言う事なんですかぁ」

 にたっとした声で彼に向かっていった。

 「ああ、そういう事だ。姉さん」

 彼は彼で「しれっ」とした感じできびすを返した。

 「ふぅん。俊昭さんねぇ」と呟いた後

 「ねぇ、倫子ちゃん。ここはもう診療所の範囲外だからここで院長先生て呼ぶのは無しよ」

 「え、っと、それじゃなんてお呼びすれば・・・」

 「そうねぇ。真純でもいいし、そうだ。お姉さんでもいいわよ。私出来れば妹がいたらなぁて思っていたから」

 そしてちらっとキッチンにいる彼の後姿を見て

 「いいんじゃない、それで。ねぇ、俊昭いいでしょ」

 彼は一瞬動きを止めて。こっちを見ないで

 「ね、姉さんがいいんだったらいいんじゃないか……」

 「うふふ、決まり。それじゃ今から私の事はここではお姉さんよ」

 足元にたたんでいる下着をひょいと取って

 「それじゃ私先にお風呂入ってくるから」と言って多分浴室の方だろうと思われる方へ向かう。

 「俊昭さん。私本当にお姉さんと呼んでもいいんですか」

 何気なく訊いた。

 彼はまたピタッと手を止めて

 「いいんじゃない。姉さんがそう言ってんだから。それにもう俺の事名前で呼んでるし。俺は大歓迎だけど、倫子ちゃんから呼ばれるの」

 一気に顔が赤くなったいや、顔から火が出るほど熱くなっているのを感じた。

 自分でも気が付いていなかった。彼を「俊昭さん」と何気なく名前で呼んでいたことを。

 いま、彼に言われ始めて知った。

 「ご、ごめんなさい。私。わたし……」

 もう顔の熱いのはからだ全体に伝わり、膝はじんじんと痛み出すわ、心臓はドキドキして飛び出しそうになるわ。私どうしたらいいの。意識しすぎるほど意識してしまった彼、俊昭さんの事を。




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