28話 前半のおさらい
ここまでで第一章45%ほどです。
出来事やアルカの思考及び価値観を軽くまとめてみました。必要無いとお考えの方は、飛ばして頂いて結構です。
鰐丘高校に入学して、寮暮らしとなったあたし広瀬亜瑠香は、そこでエキセントリックな少女、二宮美子と知り合った。
いつも髪をお団子にまとめて、背も低く痩せぎすな彼女は、地元では誰もが知る斐氏教の総本山、斐氏神社の正当後継者でもあった。
奇妙な行動を取ることが多いミコとあたしは徐々に親交を深めていく。
ミコの幼馴染であり、地元政治家の娘でもある才女、森崎恋も加わり、トラブルもあるが比較的平凡で穏やかな高校生活を送り続けていた。
そんな三人は二年に進級して同じクラスとなり、転機が訪れた。
初めて対面したミコの母親であり、斐氏神社宗師の二宮那美に反発を感じたあたしは、ミコを自分の寮の部屋に泊めさせる。
その時に、ミコの持つ妖の枝があたしに移ってしまったのだった。
夢で見た世界に転生することが可能になるという枝の力。それが自身に宿っていると気付かないまま過ごしたあたしは、ミコがテストでトップになる世界、中国国旗が改変された世界、レンが苦しむことになる世界と、三度の転生を繰り返してしまう。
親友の父親の命すらも奪ってしまう自身の能力により、身も心も疲れ果てたあたしは、那美に自身の窮状を看破されることにより救われた。体力と精神力を取り戻したあたしは、斐氏神社にて那美やその配下の信徒、大江烏の助力を受けて厳しい修行を繰り返すことになる。
肉体を限界まで追い込むことにより、あたしは覚醒。妖の枝の制御に成功した。
しかし、自身の身の安全を確保したあたしが再び学校に通い始めた時には、レンは留学して学校から去り、マリウスという謎の男が担任教師に変わっていた。
自身を取り巻く環境の変化に翻弄されつつも、日常生活の中で徐々に枝の秘められた能力を引き出し始めたあたしに、鰐丘病院の看護師、ストゥディウムが襲い掛かった。
ストゥの目的はあたしをガーゴイルと呼ばれる宝石に変えること。クルーチスと呼ばれる組織に属したストゥは、その秘術を隠し持っていた。
殺される直前、間一髪でマリウスに助けられたあたしは、ガーゴイルの人知を超えた力を目の当たりにする。しかし、マリウスの強さはストゥすら上回っていた。ストゥを無慈悲に殺したマリウスの凶弾が、そのままあたしに向かってくる。曰く、彼はコミュニオンという組織に籍を置きながら、『水曜会』と呼ばれる集団のスパイであるのだとか。
生死を賭けた戦いの中で、あたしは枝の更なる秘儀を体得。マリウスを倒し拘束するも、あたしもまた負傷して、傷を癒すため斐氏神社に身を寄せることになったのであった。
ほんの三ヶ月前までは普通の女子高生だったあたしが、いつの間にか大騒動の中心にいた。
コミュニオン。クルーチス。水曜会。
世界を支配する二つの組織と、それに敵対する謎の集団。
烏さんも言っていたが、たしかに陰謀論者の妄想としか思えない。
ただ、あたしには記憶がある。三度の転生の記憶。
妖の枝を持ち、その能力に振り回されて疲弊するだけだった、最初の世界のミコ。そして、あたしが悪夢を見てしまったばかりに、父親を失い、人生を狂わせてしまったレン。
かけがえの無い友達との思い出。それは今もあたしの心に根付いている。
過ぎてしまった過去を取り戻すことは、もうできない。
しかし、今の状況をより良く改善することなら、あたしにはできるはずだ。
妖の枝には、人を救う力があるという。マリウスが言うには、あたしは神とも呼ばれる存在らしい。
馬鹿なことを言わないでほしい。あたしは人間だ。
ごはんがおいしくて、平和だったらそれで良いと考える、平凡な人間。
だけど、力があるというのなら、神とやらの真似事だってやってやる。
困っている人がいるのなら助ける。苦しんでいる人がいたら助ける。
世界の平和とか、大きすぎることは先が見えなくてわからない。だが、目の前で悩み傷ついている人がいたら、あたしが救えるならば救う。今はそれでいい。
それでいいはず。