表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王ではなく、神様倒します。  作者: コロッケ
2/6

第一章 一話 忠誠

ここから先の話は、サンク(冒険者)視点の話となります。

俺の名前はサンクだ。

村の周辺の一帯では、一番強い剣士だった。


そして、俺は、今、魔王と呼ばれる少年と鉢合わせている。


耳の下程まである白く透き通った髪に、片方だけ折れた角。

そして…何の感情も感じられない空虚な瞳__だが、その瞳に何処どこか寂しさを感じる。

服は、黒いタキシードを着ている。だが、外見はどう見ても子供だ。

少し間が空いてから魔王が口を開く。


「おい、何しに来た。冒険者。」


お前を倒しに来た!…とは、本人を目の前にして言えない。

これは、どう答えるべきか___



そんな事を考えていると、魔王は俺を睨みながら言う。


「ほう。なるほどな、僕を倒しに来たのか。

 言い訳なんてするだけ無駄だぞ。人の心なんて簡単に読める。」


「うっ…。」


そういえば、昔、誰かから教訓として聞かされたことがあった。


『あのね。魔王には2つの受け継がれる大きな力があるの。

 1つ目は、人の心を読むことが出来るということ。

 だから、魔王に対して嘘はダメよ。すぐにバレちゃう。

 そして、魔王だけでなく、他の人にも嘘はついちゃいけないわ。』


『もう1つは__魔王は魔法を使う。

 貴方が、悪いことをしたら、魔法で連れ去られちゃうかも。だから、嘘と悪いことは絶対に

 しちゃだめなの。』


誰だったか。この事を教えてくれたのは一体誰だったんだ?

思い出せない____



いや、これは後だ。今は記憶を辿っている場合ではない。

正直に_____言うしか無いか。


「ああ。そうだ。俺はお前を倒しに来た。」


すると、彼は薄気味悪い笑みを浮かべる。


「僕も丁度、気分転換したかったところだ。早く戦おうじゃあないか、冒険者。」


「え…あ、おう。」


これは、まずい。

勝てるだろうか。いや、ちょっと待てよ。



魔王は魔法を使う。通常、魔法は詠唱えいしょうをしなければ発動出来ない。

____詠唱している間に突っ込むか。


「準備は良いか?」


そう問うてくる。


「ああ。大丈夫だ。行くぞ。」


そう言うと同時に俺は剣を両手で持ち、走り込む。

だが、魔王は、1ミリたりとも動く様子がない。


後5歩、4歩___


その時、魔界の王と呼ばれる少年は、笑っていた。

まずい。今すぐ引き返さなくては。スピードを出しすぎていて、ストップをかけることができない。

自分の身につけている鎧の音が静かな空間に鳴り響く。


その時、魔王は一言呟いた。


「Collapse」


呟くと同時に自分の足元の地面が崩壊する。

咄嗟に壁にあった窪みに掴まるが、これも後数分も持たないだろう。



まだ、死にたくない。

このまま終わったら、ダメなんだ。

このままじゃ終われないんだ。


村に残してきた父親、そして沢山の大切な人達。

思い出すと涙が流れてきた。

視界がぼやける。だが、その涙に気づかれる事はない。鎧で見えないからだ。

誰も俺の闇に気づくことはない。ずっと…


そんな中、呆れた声で魔王は言う、


「そんな無様になってまで生き延びたいのか。

 助からないと分かっていて、自ら足掻いて余計に苦しむ。人間というのは愚かだな。」


「確かにそうかもしれない。だが、目の前に1秒でも長生きできるチャンスがあるならば、

 縦令苦しみを味わったとしても生きたいと思ってしまうのが人という生き物なんだ。

 欲深いからこそ、たった一秒、一分で誰かが自分を救ってくれるのではないかと考えてしまう。」


魔王は少し黙り込む。





「――つまらないな。だが、気に入った。

 冒険者。お前に一つ良い案がある。 ___僕の騎士にならないか?」


「騎士?  いや、騎士なんて要らないだろ…俺より魔王のほうが強いでしょうが。」


「騎士なんて名だけだ。僕の世話をすれば生き延びることが出来る。

 良い案だろう。もし、お前が相応の働きをしてくれれば、いつか必ず僕を倒すチャンスをあげよう。」


それは…かなり良い条件ではあるが__

だが、村には父を残してきている。

父は無事だろうか…会いに行くことは出来るのだろうか。


「村に家族を残してきているのだが、会いに行くことは出来るか?」


「別に構わない。その時はループ魔法で送ってやろう。」


「本当か!!じゃあ、後一つ一生の頼みを聞いてくれ。俺の村の周辺に送り込んだ魔物を消して欲しいんだ。」


「送り込んだ?僕はそんなことはしていない。」


…ん? え? どういうことだ。


魔王が送り込んだんじゃないのか?

じゃあ、一体、誰が??

呆然としている俺を見て、魔王は続ける。


「お前、もしかして、僕が魔物送り込んだ張本人だと勘違いして倒しに来たのか?」


「まぁ……その通りだ。」


「魔王の地位を奪いに来たんじゃないのか。

 だが、どちらにしろ無駄足では無かったな。僕は、その犯人を知っているんだから。」














「それをやったのは神だ。」





神?神だと?

神といえば、村の人々があれほど拝んでいたものではないか。

でも、それは一体…


「神…か。」


「神は神でも普通の神ではない。これをやったのは邪神だ。

 邪神と言うのは、真の神と敵対する悪神のことを指す。だが、今、この邪神は天界で

 神に紛れ込んで悪さをしているんだ。」


「何故、そんなことをする。」


「本物の神は、一定の信仰がある為、ずっと生きることが出来るが、邪神はそうではない。

 邪神に信仰を捧げる者は少ないからだ。だからこそ天界へ赴き自分で悪さをして、

 信仰を集めることで実態を保っている。」


醜い話だ。

だが、魔王が悪いと勝手に勘違いしていた人間はもっと醜い。


「知らなかったとは言え、勝手に魔王が悪いと勘違いをしていた。

 本当に申し訳ない。」


「別に構わない。それより早く騎士の儀式をするぞ。

 邪神は僕にとって天敵だ。だから、倒すのにも協力しよう。それに…村に行くんだろ。」


「お、おう。」


案外優しいんだな。

そう思った。


「で、儀式ってなんなんだ。」


「魔王家の紋章である鹿のマークを首元に刻んでもらう。

 そして、代々伝わる騎士ナイトの剣を僕がお前に渡せば儀式は終了だ。」


「じゃあ、俺じゃ何もしなくて良いんだな。」


「ああ。剣だけ受け取ればな。で、お前、名前は?」


「サンクだ。」


俺がそう言うと、魔王は目を閉じ詠唱し始める。


「我、リアムの名のもとに新たな騎士であるサンクへ紋章を授ける。」


魔王は名前をリアムというのか。

そんなことを考えていると、自分の首元が光っている事に気付き、目を見張る。

そして、一瞬で鹿の紋章が現れた。


「我が騎士よ 剣を受け取れ。

 そして、聖なる大地よ 彼へ祝福を。」


リアムが差し出してきた剣を跪いて受け取る。

その瞬間、周りに光が浮かび上がる。


これが__大地の祝福か。


こうして、儀式は無事終了した。

俺は、元々持っていた剣を置いて、リアムに貰った剣を鞘に収める。


「リアム、村に早く行きたいんだが。」


「勝手にリアムと呼ぶな。

 まぁ良い。じゃあ、行くか。」


すると、リアムは呟く


「転移、汝の生まれた村へ」


すると一瞬で村に着いてしまう。

村から魔王の城まで十年かかったのに、今、たった1秒で来てしまったのだ。

俺の苦労は___


そんな風に考えていると、一人の村人が、「サンクさんのお帰りだ!!」

と叫んだ。


すると、当たり前ながら何事だ。と人が沢山集まってきた。

だが、すぐに注目の的は俺ではなく、隣に居るリアムに移る。

折れた角と白い髪を見て「魔王?魔王じゃないか?」と人々はざわめき出す。


すると、リアムの機嫌がどんどん悪くなっていくのが顔でわかる。


「ふん。そうだ。僕がリアム、魔王だ。」


そう言うと、更に村人はざわざわし始めた。

この人達は、まだリアムが魔物を送り込んだと勘違いしているのだ。

そして俺は説明する。


「リアムは、魔王だが悪いやつではない。

 魔物を送り込んだのもリアムがやったわけじゃないんだ。皆勘違いしているんだよ。

 それをやったのは邪神と言って、悪い神だ。信じてくれ。」


騒ぎを聞きつけてきた村長が言う。


「誰もサンクさんを疑うことなんかしません。

 十年も私らの為に旅をしてくれた。戦ってくれた。その御恩は忘れてませんよ。」


「ありがとう。」


涙ながらに俺は言った。


そんな感動の最中誰かが魔物に襲われて怪我をし、運ばれてきたらしい。

ここに父は居ない。凄く嫌な予感がする___

俺とリアムは、怪我人のところへ向かった。


その人は、左手が無く、とても悲惨な状況だった。

血だらけのその男性の顔を見たくないと望んだ。きっと、無意識にその人に見当がついているからだろう。


いつかは受け入れなくてはいけない運命。

意を決して顔を見る。




その顔は父の顔そのものだった。






一番助けたかった人を助けることができなかった。







俺が、魔王討伐なんて調子に乗って行かなければ、きっと父を守ることが出来ただろう。

結局失っただけで何も手に入れてない。

  


                何で俺ばっかり。


俺が悪かったんだ。

父は初めから俺が冒険に出るのに口では言わなかったが反対していた。

それが分かっていたのに。



初めて味わった絶望は、涙の味がした。

膝から崩れ落ちる。





そんな時、惨状を目の前にしたリアムが口を開く。


「regeneration」


すると、父の腕が瞬く間に元に戻っていく。他の傷もどんどん消えていく。


「これは…」


村長が目を見開く。



10分位経った頃、父は目を覚ましたらしく、起き上がり呟く。



「あれ…?腕があるぞ。傷が癒えている。何故だ。」


そして俺を見るなり歓喜の声を上げ、苦笑いしながら言う。


「おー。息子よ!!

 よく帰ってきた。まぁ、俺も冒険に出てみたんだがダメだったみたいだ。」


「父さん……」


俺は全て話した。

養子にしてくれてありがとうという感謝の気持ち、

父の意見を聞かずに冒険に出てしまったことへの後悔。


父は頷きながら聞いてくれた。そして聞き終わった頃に言った。


「サンク、俺は、お前が養子になったこと、後悔してるかと思っていた。

 だが、それは違ったようだな。俺は仮にも父親だ。だから、息子の進路に口出ししたりはしないぞ。

 自分が選んだ道にならとことん進め。」


涙がどうしても止まらない。流れて流れ出てくる。

泣きながら横に居たリアムに言う。


「リアム…

 うっ。こんな年下に泣かされちゃったよ。ありがとう…な。」


「まぁ、騎士を管理するのも主の役目だからな。他意は無い。」


そして、父にリアムを紹介し、最後の役目を果たしに向かう。






リアムは言う。


「村の周辺の魔物だけ倒して、バリアでも張っておくか。」


「そんなことが出来るのか?」


「まぁな。魔王だから。」


村人が見守る中、村の周辺を彷徨く魔物に向かって詠唱し始めた。


「我が身に眠る魔力よ。剣と化し汝らに降り注げ」


すると、一気に剣が雨の様に降り注ぐ。

そして、すぐに呟く


「Magic wall」


リアムがそう発した瞬間、周りがピカッと光り、村民から歓声が上がる。

そんな中、俺は一つ疑問を投げかけた。


「なぁ、何で詠唱するやつと、無詠唱のがあるんだ?」


「ああ…範囲でやるか、やらないかだ。

 後は、魔力の消費が詠唱した方が抑えられる。」


全く知らなかった。

魔法というのは奥が深いらしい。


こうして、村を救った魔王とその騎士は、魔王の城へと帰還した。











新たな日々がここから始まる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ