あらすじ
サンクは男です。
魔王の年齢は10代前半、男です。
この世界は、今、大変な危機に晒されている。
どんな理由かは知らないが、大量の魔物が全国各地に送り込まれてきたのだ。
人々は噂に聴いたことがある魔王の仕業だと信じ、恐れながらも
「いつの日か勇者が現れ、世界を救ってくれますように」
そう、神に祈りを捧げることしか出来ないでいた。
そんな中、ある小さな村に一人の冒険者が来た。
その冒険者は頭から足先まで全身、鎧を身にまとっており、顔こそ見えなかったが腕の良い男の剣士であった。
だが、冒険者には故郷も親も居なかった。
それでも村人は真摯に優しく接した。
村に滞在して暫く経つと、村人の中の一人が彼を養子に迎えたいと言い出した。
こうして、その村はたったひとつの故郷となり、たった一人の親(父)が出来たのだ。
彼には名前が無かった為、サンクと名付けられた。
しかし、落ち着いてばかりも居られないのも、また事実。
冒険者だった為、魔物の脅威がすぐそこまで迫っていることを感じ取っていた。
彼は思った。
「このままでは俺を養子にしてくれて、本物の子の様に接してくれた父も、優しくしてくれた村の人も助けることは出来ない。これだけは命を投げ打ってでも守らなくてはいけない。」
その思いを伝えると、村人は、世界が、村が救われる!と喜んだが、父だけは喜んではくれなかった。
悲しそうな顔をする父が気がかりなまま、彼は冒険へと旅立った。
広大な平原を歩き、砂埃の立つ砂漠を越え、波打つ山脈を登り、沢山の苦難を乗り越えて、
遂に魔王の城に辿り着いたのだが、着いた頃には10年もの月日が流れてしまっていた。
父も村の人々も全て置き去りのまま。
「一刻も早く魔王を倒さなくては。」
そう呟いて、この世のものとは思えぬ異質な城へと一歩を踏み出した。
――ここで待つ真実はどのようなものなのか。彼はまだ何も知らない――
-----------魔王側では----
102代目魔王であるリアムが歴代一位の12歳という若さで就任するも、魔界に住む魔物たちはその魔王に忠誠を誓う事はなかった。
魔王家系の象徴とも言われる角が彼は片方折れていた。
魔王たるもの角は絶対に守らなくてはならないという暗黙のルールがある。
理由は簡単。一本の角も守れないものに自分の身を任せることなど到底適わないからだ。
そんな理由で彼は従者も雇わずたった独りで広い大きな城へと篭もる。
そして仕事を黙々とこなすのだ。
しかしその仕事は決して世界征服などではない。
魔界の政治についての書類整理などだ。
たまに世界征服とか『やってもいないこと』の逆恨みで来る冒険者の相手もしている。
どんなに沢山の人間が来ても誰ひとりとして気づいてはくれない。
魔王と呼ばれながらも冷たい眼差しを向けられる彼の孤独に、手を差し伸べてくれる人は____まだ現れていないのだ。
いつだって彼は助けを待って心の中で叫んでいる。
いつだって迎えに来てくれる誰かを待っている____
誰も寄り添ってはくれない。
誰も暖かく接してくれる者はいない。
そしていつの間にか暖かさを忘れてしまった。
両親は、彼が幼い頃に目の前で殺された。
両親の顔も、殺した犯人も覚えては居ない。
だが、父と母の最後の言葉だけは覚えている。
『幸せになれよ。』
『私達の分まで生きて。』
自分にとってこれは、忘れ去りたい記憶だ。
だが、その言葉だけが、ずっと頭から離れない。
「外の空気でも吸いに行くか。」
そう呟く。
こうして魔王『リアム』は城の出口へと一歩を踏み出す。
そして、剣士『サンク』も城の入り口へとまた一歩踏み出す。
扉が開いた時、彼らは出会うのだ。
この先の未来、勇者と呼ばれる剣士、サンクと、
新たな神と呼ばれる魔王、リアムは。




