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第九十七話:被害者と分断

休み休みですが、こっちも更新。

完結に向け頑張りますよ(´∀`)

 

「おや? 六人しかおらんではないか。人間共め……して、奴らは来ているのか?」


「え、えぇ。今まさにここに向かっております……」


「重畳、重畳。それに関しては余の理想通りの展開ではないか」


 突如現れた魔帝は、魔王達の混乱など我関せずとばかりに話しを進める。


 その姿は銀髪に魔族らしからぬ白い肌、見た目は若く、まるで人間の青年のようだった。

 身長は百八十センチ程で、黒と白を基調とした魔族の服を身に纏っている。

 その肉体は服の上からでも分かる程に鍛え上げられており、溢れ出す魔力は魔王達より遥かに強大であった。


 魔帝は今までドラグニスが座っていた椅子に腰掛け、魔王達に座るように促した。

 魔王達がそれに従うと、再び口を開く。


「さて、魔王達よ。今再び世界を滅ぼそうではないか。お前達は被害者なのだ。この人間世界のな」


 そう、彼らは被害者。

 光り輝く人間世界の闇を背負わされた哀れな存在が魔王。

 魔帝は更に語る。


「まずはここに迫る人間を滅殺し、世界を絶望させてやろう。人間が如何に残酷で、卑劣で、陰湿で、矮小な存在であるかを教えてやらねばなるまい」


 魔王達は思い出していた。

 自分達がどういう存在であるのか。

 それと同時に人間への憎悪が湧き上がる。

 あれ程険悪だった空気は魔帝の一言一言で消えていく。

 次の一言で魔王達は結束というものを感じるのだった。


「さぁ、我らの時代を始めよう」


 そう言って魔帝はわらった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 各国は既に上陸態勢に入っていた。

 全ての国が足並みを揃えて結束している。

 今日、この日に全てが掛かっている事を皆理解していた。


「バーン様、準備は整いましたわ。皆にお言葉をお掛け下さいませ」


 バーンは巨大なリンク石の前に立つ。

 各国の精鋭達に向け、バーンは静かに語り出した。


「バーンだ。よろしくな」


 リンク石を通して全ての者がその声に耳を傾ける。

 誰よりも尊い勇者の声に。


「今日、全てが終わる。世界が今日に懸かっている。魔王と世界の連鎖を今日、断ち切ろう。色々言い方があって迷っちまうな」


「バ、バーンさんっ!」


 聞いていた者達は一斉に笑い出す。

 固くなっているであろう彼らに対し、バーンが緊張をほぐそうとしたのかは分からない。

 あるいは本気で言っているかもしれなかったが、結果的に空気を和ませていた。


「悪い悪い。でもよ、あんまり緊張してもなぁ、力が出せないだろう。結果オーライだったな。さて……あんたは何の為に戦う? 世界か? 家族か? 友か? なんだっていいさ。あんたが信じるもんに魂かけて戦えよ。それだけで十分じゃないか?」


 彼の言葉に各国、というよりも一人ひとりが決意を新たにする。

 船はヴァンデミオン間近に迫っていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 次々と各国の船がヴァンデミオンに上陸していた。

 全方向から囲むように上陸した船から大量の兵士や冒険者達が飛び出していく。

 当然大量の魔物がそれに立ちはだかり、ヴァンデミオンは一瞬で戦場と化した。


 バーン達も魔物を駆逐しながら、中央にあるヴァンデミオン城に向かって進んでいく。

 さすがにこれだけの手練れが集まると魔物が束になっても関係ない様だった。


「バーンさんっ! ど、どんどん魔物が!」


「ま、関係ねーなぁ」


 次々に現われる魔物だったが、現われた瞬間に魔法が、剣が、拳が魔物に襲い掛かる。

 魔物を倒し、街を駆け抜け、どんどんと城に近付いていく。


 バーンは何かを察知する。

 どうやら残る6人の魔王が動いたようだ。

 今まで現われていた魔物は雑魚ばかりだったが、どうやら強力な魔物も控えているようだった。


「バーン、アリス、オメーラはなんも考えずに城にいけ。周りは俺達が片付ける」


 カーティスがいうや否や、上空から溶岩の雨が降り注ぐ。


「……無駄なのに」


 ミリアが魔法を打ち消し、べルザーの姿を捉える。


「俺達がやろうかなべルザーは」


「スターク……任せた」


「ああ、また会おう! 行くよ、ミリア、バカラ!」


「おうよ!」


「……うん」


 べルザーを3人に任せて一行が進むと再び魔王が現われる。


「よぉ、勇者ご一行。んで、お前がバーンかぁ……」


「てめぇは……」


「第三魔王バーディッグだぁ。よろしくなぁ。さぁ……誰からやる?」


 その時バーディッグに向けて刃の雨が降り注ぐが、バーディッグは全身から武器を出し、刃の雨を弾いていた。


「おいおい……おいたが過ぎるなぁ」


「行けよバーン。こいつは俺がやる」


 ディライトは既に無数の武器を展開し、バーディッグと睨み合う。

 対するバーディッグも体内から武器が飛び出していた。


「ディライト、死ぬなよ?」


「カーティス……不吉なんだよおめーは」


「またなディライト。ここは任せた」


「こーいうのだよこーいうの! 学べカーティス」


「うるせー……またな」


 バーン一行が去るのを待ってか、バーディッグはディライトに話しかける。


「一人で……勝てるかなぁ?」


「勝つさ……俺も一応勇者なんでな!」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ヴァンデミオン城の前に初代魔王の姿があった。

 その表情は希望に満ちている。

 もはや誰にも魔帝は止められない。


「あんたがここかい?」


「貴公は……カーティスと言ったな」


「あんたとは俺がやる気がしてたんだ。いいかな?」


「無論。我らの使命は戦力の分断、望むところよ」


「つー訳だ。いけよバーン」


「分かった。任せたぜカーティス」


 ドラグニスの横を通り過ぎるバーンに、ドラグニスは動けなかった。

 一切の隙なく手が出せない。


「成る程これが勇者か……」


「そうさ、あれが勇者だ。俺はニセモンよ。だが、あんたを倒す事は出来る」


「……やってみよ」


 二人の魔力がぶつかり合う。

 城門が閉まった時、幕は開いたのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 城の中に入ったのはバーン、アリス、マリア、エリザ、シェリルであった。


「結局この五人だな」


「仲良しですねっ!」


「長いようで短い付き合いだがな。あたしにとっちゃ家族さ」


「おい、マリア。戦う前に泣かしにくるなよ」


「ふふ、バーン様参りましょう」


 ヴァンデミオン城のエントランス。

 広い空間に第六魔王ルリーナの姿があった。


「御機嫌よう勇者バーン。じゃやりましょっか」


「あなたはわたくしが。バーン様は先に」


「シェリル……一人でか?」


わたくし八英雄序列第二位ですよ? お任せ下さいな。マリア、エリザ……バーン様を必ず……」


「分かってらぁ……任せておけ」


「シェリル、武運を」


「あなた方もね……アリス、バーン様の事、お任せ致しますわ」


「はい……シェリルさん、信じてます!」


「シェリル……任せたぜ」


 バーン達が去ったのを見届け、シェリルはルリーナと向かい合う。


「お待たせ致しました」


「いいわよ別に。さ、やりましょ」



 シェリルは構える。

 命を賭けたそれぞれの戦いが始まろうとしていた。


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