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第九十六話:親睦と険悪

第九十六話です。


よろしくお願いします。


痛いのは嫌ですねぇ……。

 

 夜が明け、世界に太陽の光が広がって行く。

 リンク石を通して、バーンから全世界に合図を出したのは夜が明ける少し前だ。


 各小国はそれぞれ七大国家の軍に編入され、ヴァンデミオンに向けて進軍を開始したが、夜が明けたことである異変に気付く。


 ヴァンデミオンを囲んでいた巨岩が消えていた。


 見えたのはかつて世界の中心であった、あのヴァンデミオン。

 綺麗な街並みだったヴァンデミオンは、今や黒い闇に飲まれ、中央に座するヴァンデミオン城はまさに魔城と化していたが、その面影はそのままであった。


 巨岩が消えた理由は分からない。

 来るなら来いという〝魔帝ゼノ〟の意思表示なのかもしれない。

 この戦いに人類が敗れれば、この世界は闇に飲み込まれるのだから。


「あれがヴァンデミオン……」


 バーンは初めて見る故郷に想いを馳せる。

 あそこに父と母がいるのだと思うと、勝手に拳は握られていた。

 そんな拳をアリスが包む。


「アリス……」


「バーンさん……いよいよですね」


 あの時の誓いを果たす時が来たのだ。

 かつてウーナディア大陸に向かって二人で交わしたあの誓いを。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ヴァンデミオンは殆ど全てが市街地、大国だが面積はそこまで広くない。生きている人がいたらすぐに救出してくれ」


『ウィンダム了解。ヴァンデミオン北西から突入する』


『メルギド了解。西から突入』


『ギンダークも了解だ。南から上陸』


『アルデバラン了解。北東から進入』


『ウッドガルド了解よ。バーン! 任せたぞ! あーっと東から突入』


「女王陛下……あー、こちら本隊は南東から上陸後、ヴァンデミオン城を目指す。周りは任せた」


『了解。勇者よ……健闘を祈る』


『世界を任せた』


『ご武運を勇者様』


「ああ、任せろ」


 各国は各自ヴァンデミオンに向けて進軍し、タイミングを合わせて突入する。

 メルギドの高速戦艦は早すぎる為、現在ヴァンデミオン近海で待機していた。

 魔物の姿が見えないのが逆に不気味に感じられる。


「静かだな……嵐の前の静けさってやつか……」


「バーンさん……もういるんですかね……魔帝は」


「多分な……行ってみりゃ分かるさ」


「バーンさんは相変わらず軽いですね……」


「だよなぁ。緊張感もてよバーン」


「マリアに言われたくないなぁ」


「バーン様は闘志を秘めるお方なのだよ。ですよね?」


「う、うん。エリザの言う通りだ」


「バーン様……締まりませんわね……でも素敵です!」


「だー! こんなとこでくっつくな!」


「なーにやってんだあいつらは……」


 カーティスの呟きも笑い声に掻き消えた。

 これから始まる戦いを前に、勇者達は束の間の親睦を深めていた。


「バーン、ちょっといいか?」


「ああ、どうした?」


 ディライトに呼ばれて甲板に出る。

 そこにはスタークとバカラ、カーティスがいた。


「どうしたんだお前らこんなとこで」


「世界最強の男達と話しておきたくてな!」


「まぁ一応俺達は世界の男五本指って訳だ。カーティスもスタークもお前と話したいっていうからさ、来てもらったの」


「なるほどな。俺も聞いておきたかったんだみんなの力を」


「それじゃ改めて、スタークだ太陽魔法を使う。簡単に言えばもの凄い炎魔法だな」


 ゾブングルを焼き払った太陽魔法。

 発動に時間が掛かるものもあるが、威力は落ちるが使いやすいものも存在する。


「太陽魔法はすごいよな。魔王を焼いちまうとは」


「1人では勝てなかったな。上手くこちらの策にはまってくれたし、バカラのおかげだ」


「バカラの魔法って……」


「俺は魔法使えないよ。ただ頑丈なだけだぜ」


 ゾブングルの攻撃を受け切った肉体。

 常人離れした回復力とスタミナが彼の武器だった。


「それはそれですごいよな……」


「んじゃ俺な。創造魔法は大体のもんを出せるぜ。こんな風にな」


 ディライトの手に一瞬で剣が現れる。

 おおっ、とカーティス以外から声が漏れた。

 しかし、次の瞬間剣がフッと消えてしまった。


「あ、カーティスやりやがったな!」


「いーじゃん別に。それに俺の力が分かったろ?」


「わかりづれーよ!」


「んだよー。俺の力は……スターク、俺を殴れ。大丈夫だから」


 スタークが戸惑いながらもカーティスに拳を放つ。

 が、その拳はカーティスの前で止まってしまう。


「あ、あれ? 止めたつもりは……」


「俺の力は無力化魔法。なんでも無にしちまうのさ。今のは俺への攻撃を無にしたの。後はこんな風に」


 フッとカーティスが消える。

 気配までない。

 そして、次の瞬間には再び同じ場所に現れた。


「ってな。気配を無力化した」


「成る程……世界最強な訳だ」


「魔王に通じるかは分からんが……ま、やってやんよ」


「頼りにしてるぜお前ら」


「バーカ、そりゃこっちのセリフだよ」


 僅かな時間で打ち解けた勇者達。

 果たしてヴァンデミオンで一体何が待ち構えているのだろうか。

 その答えはもう間も無く明かされる。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「いよいよか……」


 ドラグニスの声が響いたのはヴァンデミオン城会議室。

 六人の魔王達は静かに椅子に座っている。

 ゾブングルとアドヴェンド、二人がやられた事は少なからず残った魔王達に影響を与えていた。


「なぁドラグニス、まだなのか魔帝様はよ」


 グリードのその声には、少なからず焦りの色が窺えた。

 かつて自分が戦った勇者はもういない。

 同等の力を持つ筈のアドヴェンドはバーンにあっさり敗れ去った。

 自分がそうならないとも限らない。

 しかもゾブングルに至っては、はめられたとは言えバーン以外の勇者候補に敗れている。

 それだけの力を持つものが他にもいたのが驚きだった。


「びびってんのかぁ? グリードォ?」


「バーディッグ……喧嘩売ってんのか?」


「二人ともよせ。そんな場合では無いだろう」


 いがみ合いをザディスが止める。

 しかし、その後も魔王達の険悪な空気が続いた。


「はぁ……魔帝様って本当にいるのかしら?」


「ルリーナ……!」


「何よベルザー? あんたも怖いんでしょ勇者が」


「貴様ッ!」


 見かねたドラグニスが声を上げようとしたその時だった。

 自身の背後から感じた事のない気配を感じ、動けなくなってしまう。


「フフフ……やれやれ。仮にも魔王と呼ばれる者が……なんと矮小な」


 その場にいた全員がその声の主を見て固まった。

 ドラグニスだけはゆっくりと立ち上がり、振り返った。

 なんとか言葉を絞り出す。


「あ、あなた様が……」



「そう、余が魔の化神……魔帝ゼノである」


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