第八十七話:病と右腕
第八十七話です。
よろしくお願いします。
まだ話は半分もいってないすねぇ(´¬`)
夜再び集まる事とし、バーン達は一旦街へと出る事にした。
恐らく勇者一行が入国した事は、既にアルデバラン政府の耳にも入っているだろう。
王に謁見もせず、宿にも街にも姿がないとなると不審に思われる可能性があった。
今はどんな小さな疑念も持たれたくない状況なので、まずはアルデバラン王に謁見した後、街を歩いて剣を探す事にする。
リークに剣について訊いたものの、本人もどこにあるかは分からないと言われてしまった。
地下室からバーン達が出る直前、リークはバーンに声を掛ける。
「あーっと、そういやベルザーとやったんだって?」
「ああ、なかなかにバケモンだったよ。あんなのどうやって倒したんだ?」
「んー長くなるが……まぁ、簡単に言えば氷にしてドンッだ」
「成る程、よく分かった」
お互いクスッと笑い、バーンはまた話を聞かせてくれと言いながら、部屋を後にした。
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アルデバラン城。
首都アルデバランの中心に位置するこの城に、魔導国家の叡智が集約していた。
青を基調とした美しい外見に、内部は魔法と魔石を使った装置で溢れ、他国では見られない様な不思議なギミックが随所にあるという。
お抱えの魔導師達は日夜研究に明け暮れ、如何に国を発展させるかを互いに競い合わせる環境を国が作っている。
城も当然調べようとはしているが、強固な魔法結界は許可を得ていない者の進入を阻み、リーク達も進入には手を焼いていた。
城に到着したバーン達は衛兵に謁見を申し出ると、すぐに中に通された。
内部に入ると煌びやかな装飾が施されたエントランスがり、しかも城内部は吹き抜けになっており奥まで見通すことができる。
あまりに広い空間にバーン達の感嘆の声が響く。
「すげーな……もう城内部が一つの空間になってる」
「なんか浮いてますね……床が」
「壁やあの床にも魔力を感じる。魔石がついてるみてーだな。それで浮いてんのか」
「壁の魔石がこの空間を維持している様ですわね。空間全体から凄まじい魔力を感じます」
「バーン様……私は嫌な予感がしています……」
視界を遮る壁や柱が殆ど無く、階段すらない。
移動手段はどうやらウッドガルドで乗ったあの動く床に近いみたいだった。
エリザは早くも顔色が悪い。
バーン達が辺りを見渡していると、大きめの石板に乗った女性が目の前に現れた。
ウッドガルドの石板の三倍はある。
「勇者様、よくお越し下さいました。この国の魔導師で、ディアと申します。どうぞこれにお乗り下さい。後は謁見の間までお送り致します」
「バーンだ。よろしく頼む」
次々と石板に乗り込むが、やはりエリザがかなり拒否反応を示している。
バーンはエリザの腰に手を回し、一緒に乗り込んだ。
「バーン様……すいません」
「誰にだって苦手なもんはあるよ。気にすんな。捕まってな」
「はい……」
「じゃあ私も……」
「え、ずるいです。私も怖いです!」
「あたしもー」
「落ち着け。暴れんな。じっとしてなさい」
「よ、よろしいですか? 動いても」
「構わねぇ、行ってくれ」
ふわりと浮いた石板にぎゃーぎゃー言いながらバーン達は城の中を飛んで行く。
浮いた床の上で事務作業をしている人や、魔法の研究だろうか、透明のドームの中で魔力を練り込んでいる姿などが見える。
バーン達の乗った石板は段々と上昇し、最上部にある扉の前に到着した。
ディアが扉の前の衛兵に声を掛け、扉が開かれる。
魔力で動くその扉が開かれると、広い謁見の間が現れ、奥の壁には巨大な魔石が埋め込まれていた。
恐らくあれがこの城を支えている大元であると推察出来る。
衛兵に促され、中に入り王が座るであろう椅子の前に跪く。
その椅子の近くにいる男が宰相バルバロッサだろう。
歳は五十歳くらいだろうか、長い黒髪を後ろに流し、鋭い目つきでバーン達を見ていた。
紫を基調とした服は、貴族が着る様なもので、襟元や手首の周りは白いウェーブしたブラウスが覗いている。
意外と体格がよく、鍛えているのがバーンには分かった。
バルバロッサは謁見の間の扉が閉まると口を開いた。
「顔を上げてくれ。よく参られた勇者バーンよ。この時代の勇者殿に会えて嬉しく思う。わざわざ顔を出して貰って申し訳ないのだが、残念ながら王は病にに伏せており今日はお会いする事が叶わぬ。代わりに私が其方らと謁見する事に相成った」
「そうでしたか……お会い出来なかったのは残念ですが、謁見して頂きありがたく思います」
「うむ。して、アルデバランには何用で参ったのかな? 何か理由がお有りかと思うのだが」
「私は剣を探しに参りました。七代目勇者リークが振るったという伝説の剣を」
「うぅむ……実は我々も探していたのだが何処にあるか皆目見当もつかぬのだ。そうか……勇者殿もお探しであったか」
「はい。私は二刀を使うのですが、今はウッドガルドで譲り受けたこのラグナロクしか無いのです。出来ればお譲り頂きたかったのですが……分かりました。少し国を探して回るお許しを頂きたい」
「無論構わぬよ。剣も見つかったならば勇者殿にお譲りしよう。飾っているだけでは剣が嘆く」
「ありがとうございます。後もう一つ、八英雄ディライトに一度会いたいのですが、所在はご存知ですか?」
バルバロッサの眉がピクッと動いた。
どうやらバルバロッサはディライトをよく思っていないようだ。
表情が一瞬険しくなった。
「ディライトか……奔放で怠け者の面倒くさがりの彼奴に何故あの様な力が宿ったのか不思議でならない。あ、いや失敬。私の感情などどうでもよい事であった。申し訳ないが今行った様に奔放な性格故、国に使える気もなく、何処ぞでふらふらとしておる。奴の家はこの首都にあるので運が良ければ会えるやもしれぬ」
「分かりました。ありがとうございます。あ、最後に城の中を見学したいのですが」
「ああ、構わぬよ。ディアに案内させよう。優秀な魔導師でね。私の右腕として働いて貰っている」
バルバロッサの右腕の優秀な魔導師。
ディアにバーンが興味を持った瞬間だった。
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