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第八十六話:賢者と逆行

第八十六話です。


よろしくお願いします。


どっちも更新続けますよ(´∀`)

 

「私が……ですか?」


「さっきも言ったが正確にはアリスとバーン、お前達二人だな。バーンは闘い、アリスはそれを支える。まぁ今までもそうだったんだろ? それを続けていって、最後の最後……世界を守る役目をアリスに課したんだ。この世界の神様がな」


 リークは、この世の理に囚われていない俺だから分かると言う。

 彼から見ると俺達五人はこの世界で見た誰よりも強い光を放っているらしい。

 また、アルデバランの八英雄ディライトにも近いものを感じたとの事だった。

 そして、その中でもバーンとアリスは特別なのだとリークは続ける。


「俺はどちらかと言えば多分、神側の視点で世界を見てる。だから分かるんだろうよ。ま、それでも実験は止められてないんだから情けない話だよ」


 そう言って彼は悲しく笑った。

 バーンは自分がリークの立場ならどれだけ歯痒いだろうかと、想像するだけで切ない気持ちになる。


「おっと、話が逸れちまったな。まずは今一番片付けなきゃならない話に戻そう。時空融合がどんなもんか……リリン、アリア、見せてやってくれ」


 名を呼ばれた二人が立ち上がりフードを取る。

 リリンの頭には、犬の様な耳が生えていた。

 アリアは普通だったが、顔に表情がない。

 そして二人とも尻尾が生えていた。

 リリンは犬の様な尻尾、アリアは猫の様だった。


「彼女達は実験施設から逃げ出したんだ。時空転移でな。彼女達には実験施設での記憶もそれ以前の記憶もない。それが転移によるものか、実験によるものかは分からない」


 彼女達は人と何かを混ぜて作られたようだった。

 リリンは犬の様な嗅覚を持ち、アリアは凄まじい怪力を持っているという。

 そうやって特殊な力を持つ者を創り続け、いつしか勇者を創り出すつもりなのだろうか。

 クロアが怒りを滲ませながら口を開く。


「僕達はなんとしても実験を止めたい。勝手に人の人生を奪っている奴らを許せないんだ。だから力を貸してくれないか?」


 バーン達は勿論頷く。

 こんな非道を許す訳にはいかない。

 バーン達は更に、ウッドガルドでの人攫いの件も彼らに話した。


「アルデバランでの失踪者の増加が多い事は各国で噂になっているからな……出張ってまでとは……早く止めないと。暴走してやがる」


 この事件は最早一刻の猶予も無くなっていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 今後はクロア達と協力し、実験施設らしき施設を片っ端から調査して行く事になった。

 地図を見ながら怪しい場所を洗っていく。

 既に確認した箇所にはバツ印が付けられていた。


「あ、リリン、アリア。悪いんだけど何か飲み物を頼むよ。みんなの分もお願いね」


「しょうがないですのね……アリアいくですの」


「はい……」


 二人が部屋を離れてすぐにクロアはバーン達に小声で話し出した。


「あの二人にはまだ言えてないんだけど、僕もこの時代の人間じゃないんだ。僕の本当の名前はクロノ。リークと一緒に魔王ベルザーと闘ったパーティの一人だ」


「クロノ……まさか刻の賢者クロノか?」


「うん。そのクロノだ」


 刻の賢者クロノ。


 バーンの母、ルインの前に時空魔法を使用した大魔導師である。

 その知識量から賢者と呼ばれ、広く深い知識は様々な場面でパーティを助ける一助となった。

 また様々な薬の調合も得意で、様々な薬効を持った薬は病や怪我の痛みに苦しむ人々を多く救ったという。

 そしてその時空魔法は魔物を音もなく世界から消し去ったと言われ、その時代最強の魔導師として後世に名を残している。


「僕は時空魔法を使ってなんとか存在している。でも最近使い過ぎてしまってね。リークと同じ様に殆ど力が残っていないんだ。だから君達に頼らせて欲しい」


「時空魔法……バーンさんと同じですね」


「ほ、本当かい? バーン、君も時空魔法を?」


「ああ、俺は八代目勇者ディーバとルインの子だ。時空魔法を母親から受け継いだ」


「なるほど……そういう事か……だったらいけるかもしれない」


 クロア……クロノは一つのある可能性に賭けていた。

 それは時空の逆行。

 実験施設にあるであろう装置を使い、時空魔法の力で融合される前の状態に戻す。

 出来るかは分からないが、可能性はそれしかなかった。

 今のクロノがそれをすれば多分確実に力を使い果たし、存在が消えてしまうかもしれなかったが、自分の持てる力全てを使ってでも実験で人生を奪われた人達を救うつもりだったらしい。


「何故あんたがそこまでするんだ?」


「それはね、数百年前にもあったこの実験……僕も関わっていたんだ」


「えっ?」


 当時クロノは国お抱えの魔導師だった。

 彼は時空魔法という稀有な魔法の使い手であったし、薬学にも精通していた為、国に大変重宝されていたという。

 ある時国お抱えの他の魔導師に、魔石を渡されそれに魔力を込める様に命じられた。

 国の上層部も肝いりの実験に使用すると言われた彼は、迷い無く時空魔法の魔力を注いだ。

 その実験こそが時空融合という人道に反するものとも知らずに。


「だからこれは僕の罪。長年刻を渡ってきたのは世界の行く末を見守る為だ。まさかまた時空融合なんて馬鹿げた実験を行う奴もいるとも思わなかったし、不可能な筈だった。どうやって時空を制御してるのか見当もつかないよ」


 時空融合と聞いてから、バーン達には一つ思い当たるものがあった。

 ライアーが発見したあの装置。


「リーク、この国でここ数年で新たに発見されたダンジョンってあるか?」


「確かあった筈だ。確か二、三年前だったか……発見したのは冒険者だったが、国が主導して調査している。この国の通例でな、発見者にかなりの金額を払って国の物として扱うんだ」


 その中に時空転送装置があったなら、辻褄が合う。

 それを宰相バルバロッサの息のかかった者が調査したならば、王にまでは伝わらない。

 バーンが自分の推察をリーク達に話すと、彼らもそれに賛同した。


「恐らく間違いない。どうやって時空融合をしてるか分からなかったが、謎が解けた気がする」



 必ず暴き出す。

 アルデバランの闇に僅かだが光が差した。


お読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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