第八十四話:洋服と路地裏
第八十四話です。
よろしくお願いします。
新作が日間ファンタジーランクインしてました(;゜Д゜)ありがとうございます!
「おーここがアルデバランか」
船旅を無事に終え、バーン一行はアルデバランに降り立っていた。
やはりウッドガルドに比べると少し肌寒い。
風が強く、アリスはローブがめくれない様に手で押さえていた。
「うー寒いです……」
「ローブ組の私とアリスには辛い風ですわね……風が下から入ってきますわ……」
「じゃあ……あたしはどうなるんだよ……」
ノースリーブのブラウスで、胸を大胆に露出させているマリアは見ているこっちが寒くなりそうだった。
全身を鎧で覆っているバーンやエリザはともかくとして、他三人には服を買う必要がある。
あの謎の男から渡された紙に書かれた場所は、どうやらアルデバランの首都にあるようだった。
首都ならば服屋は当然あるだろう。
暫く待っていると、漸く船からグランと馬車が降りて来る。
大きな船にしたのは旅の仲間を置いてけぼりにしない為でもあった。
長い間船に揺られたグランは若干ご機嫌斜めだったが、マリアが温まろうとグランに身体を引っ付けた途端に機嫌が直った様だ。
頭を振って大層ご機嫌である。
「本当にコイツは主人に似て……」
「しつこいぞマリア……服なし!」
「えぇー! おっぱいが寒さで縮んじまうよぉ!」
「多少縮むがよいわ!」
騒ぐ仲間達を尻目に、一人馬車の中で毛布にくるまるアリス。
余りの速さに誰も気付かなかった。
「早く行きますよ……ぬくいぬくい……」
その後毛布の奪い合いになった事は言うまでもない。
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首都アルデバランは大陸の中心にあり、港町からは馬車で急いでも数日は掛かる。
街道は整備されている様だったが、港町での聞き込みではやはり魔物は活発化しているとの事だった。
また急激な寒波により雪こそ降らないものの、厳しい寒さが予想されており、マリアは使い物になりそうになかった。
馬車の中はシェリルが火魔法を空中に維持し、温度を上げてくれたおかげで非常に暖かいが、馬車の操縦席は風が直撃する為凄まじく寒い。
勿論毛布などで身体を覆うのだがそれでも多少軽減されるだけであった。
そもそも馬車を操縦出来るのがバーンとエリザとマリアしかいない。
マリアが寒さで死にかけている以上、バーンとエリザは寒さに凍えながら二人でなんとかアルデバランまで操縦したのだった。
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四日後の夜、漸く首都アルデバランに到着したバーン一行は厩に馬車とグランを預けてすぐに宿屋に直行したのだった。
理由は一つしかない。
「風呂だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「俺とエリザが先だぁぁぁぁぁ!」
「寒いのはみんな同じですぅぅぅぅ!」
速攻で身体を洗い、五人は湯船に浸かる。
貯まっていたゴールドに物を言わせ、最上級の風呂がでかい部屋を借りた。
おかげで全員で入っても問題ない。
「マジでこの四日間……地獄だったな」
「ええ……バーン様と私は特に……」
「わりぃな! 袖ないからさ!」
「明日服買ったら例の場所に直行な」
港町で買った地図によると、謎の男が指定した場所は中心部から離れた場所にあるようだ。
今いる宿屋はアルデバラン城が間近にあり、まさに首都アルデバランの中心部にあった。
宿屋に来るまでにかなり店屋もあったので、明日はまず買い物を済ませ、それから謎の男と合流する。
「チラッとしか見ませんでしたけど、雰囲気ある街並みでしたね。レンガで統一されてたせいですかね」
「ああ。古い街並みが、アーヴァインとはまた違った印象だったな」
久しぶりの風呂に会話が弾む。
やはり風呂はいろんな意味でいい場所だった。
今回もそれなりに長い旅だったせいもあり、久々に気が抜けたバーンは右隣にいたシェリルの肩を抱き、ついついそのまま胸を揉んでいた。
「あっ……バーン様……どうされたのですか?」
「はっ!? ついっ! すまん……」
「そんな……謝らないで下さいませ……どうぞ好きなだけ……」
「バーンさん……えっち」
「あたしのも……するか?」
「バーン様……私のでは満足できないかもしれませんが……どうぞ」
目の前に至福の光景が広がり、理性は最初から無かったかのように消え去った。
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午前中に買い物を済ませ、新しい服を手に入れたマリア、シェリル、アリスは大層ご満悦だった。
マリアは黒い皮の上着を購入し、さすがに胸を出さずに前を隠していたが、ピチピチの上着が逆にそれを強調していた。
(見えないのに……エロい。新しいな)
シェリルはピチッとした青いローブの上に、濃い茶色の毛皮のコートを羽織っている。
より妖艶さが増し、黒い肌に白い髪がそれをさらに引き立たせていた。
(エルフって何着ても似合うなぁ……)
アリスはいつも着ているローブの上に、白い毛皮のコートを纏う。
ふわふわしたコートはアリスの波打った髪とよく合っており、より可愛らしい印象を受ける。
(単純に可愛い)
エリザは自分はいらないと言っていたが、バーンに白い毛皮の襟巻きを買って貰うと瞳をキラキラさせながら喜んでいた。
バーンはボロボロになっていたマントを新調し、首回りに黒い毛皮の襟巻きを付けると、威圧感がかなり増したようだ。
「バーンさん……王様みたいですっ!」
「貫禄あるなぁ」
「さすがはバーン様……勇ましいお姿です」
「ああ……まさに黒き勇者様……」
「褒めすぎ褒めすぎ……行くぞ……」
既に周りにはバーンの事が気付かれており、騒めきが起こっていた。
道を歩くだけで道行く人に見られてしまう。
あまり気にしないようにしながら中心部から離れ、件の場所に少しずつ向かう。
途中裏路地に入りながら人混みを避け移動した。
何人かにつけられているようだが、ただ物珍しさからなのか別の意味があるのかまでは意図が掴めない。
「やっぱりすぐバレますね……」
「ハーフエルフってのもあるかな……耳でバレる」
「エリザさん、そろそろ目的地ですわ」
「了解だ」
エリザの消失魔法〝気配消失〟は非常に便利で、三十秒程だが一切の気配を遮断し、周りからは全く感知されなくなる。
脇道に入った瞬間発動し、ついて来る人々を振り切る事に成功した。
消えている間に街を駆け抜け、目的の路地裏に辿り着いた。
「ここだな。間違いないぜ」
「よし、入ろう……油断するなよ」
バーンの言葉に四人は頷き、後に続いて地下へと続く階段を下りていった。
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