第八十話:謝意と全て
第八十話です。
よろしくお願いします。
キリがいいので短めm(_ _)m
出立の朝。
準備を終えた一行は、それぞれ世話になった部屋に別れを告げる。
ひと時の間であったが、住みやすく居心地のいい素晴らしい部屋だった。
願わくばまたゆっくりと泊まりたいと思いながら、五人は部屋を去る。
謁見の間に向かおうとする一行の前に、ウィードが姿を現した。
「あ、ウィード紙の……」
「む、聞いたのか……まぁそういう事だ。親父殿がアホでな……そんな事より皆待っておるぞ」
「ん? 待ってる?」
「皆勇者一行を見送りたいのだ。女王陛下も下に居られる。ついて参れ」
ウィードに連れられ、初めて来た時のように移動装置に乗りこむ。
嫌がるエリザ達をなんとか押し込み装置はゆっくりと下に下りて行った。
シェリルは慣れていたが、他の三人はやはりバーンにしがみつき震えるのだった。
「「「早くしてー!」」」
「皆様一体どうしたのですか……?」
「気にするなシェリル。なんかもう懐かしいな」
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下に着くと、既にそこにはウッドガルド中のエルフ達が集まっているようだった。
エルフ達が道を作り、バーン達に万雷の拍手を送っていた。
そのエルフ達に作られた道の真ん中に、女王ヨミが立っている。
女王もまた、バーン達に拍手を送っていた。
「まいったなこりゃ……」
余りの多さに恥ずかしがりながらも、その道を五人は歩いていく。
アリスは周りをチラチラ見ながら、マリアは頭の後ろに両手を置いて、エリザは真っ直ぐ前を向いて、シェリルは頭を下げながら、そしてバーンは拍手を身体で受け止めて胸を張り、それぞれの想いで彼らは歩く。
女王の元に着くと拍手は一旦止み、女王は微笑みながら口を開く。
「旅立つのだな勇者よ……其方らには感謝しかないわ」
「女王陛下、我々はただその場に居たに過ぎません。ただそれだけですよ」
微笑んで答えるバーンに、女王もニヤッと笑う。
「ふふ……言いよるわ。其方からしたらそうなのであろうな……ならば勝手に礼を言うまでよ。ウッドガルドの民を代表して礼を言わせて貰う。ありがとう」
「はは……こちらこそラグナロクをありがとうございます。必ず魔王達を倒してみせますよ」
女王が手を差し出し、バーンがそれに応えると、ユグドラシルは再び歓声と拍手で満たされた。
「アリス、マリア、エリザ、そしてシェリルよ。勇者は決して一人では勇者と成り得ない。共に闘う仲間がいてこそ勇者なのだ。世界は其方らの力を必要としている。頼んだぞ」
四人は笑顔で頷く。
シェリルが女王に何かを言いたそうにしているのを察し、バーンが背中を押してやる。
「女王……陛下……」
「シェリル。其方なら必ずバーンの力になれる。エルフを代表して勇者の力になる誉れ、決して忘れるな」
「……はいっ! 全てを忘れず、前を向きます!」
「よいよい。まったく……全てを救われたわ」
女王の言葉が全てを物語っていた。
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既に準備された馬車に荷物を積み込む。
エルフ達が礼だと言って次々に食料や雑貨を持ってくるので有り難く頂戴したが、しまい込むのが大変だった。
グランは相変わらずご機嫌斜めだったが、アリスの一声ですぐに機嫌が良くなるのだから問題ない。
「相変わらず主人に似やがって……」
「ほっとけ」
「グラン様初めまして。シェリルと申します。よしなに」
「ブルルッ!」
「グラン貴様……やはり胸か! 胸を見ているのであろう!」
「エリザさん落ち着いて!」
「もうやだこの馬……」
エルフ達にも笑われながら、五人は馬車に乗り込み女王と最後の別れを告げ、エルフ達が作る道を進む。
「ありがとなー! あんたらがいる限り希望を持てるよ!」
「また来てね勇者様!」
「無事を祈ります。精霊の加護があらん事を!」
「シェリルー! 気を付けてなー!」
「ウッドガルドを救ってくれてありがとう!」
一つひとつの声を力に変えて馬車は次なる目的地イグル大陸アルデバランを目指す。
次なる国で待っている冒険の日々に胸を躍らせながら、森羅国家を後にするのだった。
彼らの旅はまだまだ終わらない。
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