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第七十六話:因果と日暮れ

第七十七話です。


よろしくお願いします。


風邪治りました(´¬`)

 

「これが……エルフ族の……」


「聖剣ラグナロクですわっ!」


「消え失せろッ! 〝閃熱爆散焦(ヒートアンドヒート)〟!」


 ベルザーから放たれた大魔法は大通りを覆い尽くし、バーンごとエルフ達を飲み込もうとしていた。

 まさに閃光のような一撃に、バーンは目の前に突き刺さったラグナロクを咄嗟に抜いて構える。


(構えたところで能力ちからが分からねぇッ!)


(案ずるな。貴公ならば我を扱える)


 砂埃すら灼き尽くす閃熱がすぐ眼前に迫る中、バーンは声を聞いた。

 若い女の声でまるで騎士の様な話し方だった。


(あんたは……剣の!?)


(今は悠長にしている暇はない。我が名を呼べ……我が真名まなを!)


 頭の中に大量の情報が頭の中に流れ混んで来る。

 それはこの剣の記憶。

 共にこの剣と闘った勇者達の記憶をバーンは受け取ったのだった。

 既にバーンは〝刻の神速(クロックアクセレート)〟を発動している。

 ベルザーの放った閃熱がゆっくりと近付いて来る中、バーンは聖剣を上段に構え真の名を叫んだ。


「俺に力を貸してくれ! 〝因果断ち切る聖なる剣(ラグナロク)〟!!」


 上段に構えた聖剣を振り下ろす。

 閃熱は剣に触れた瞬間、この世との因果を断たれ霧散していく。

 さらに聖なる刃から放たれた閃光が斬撃となってベルザーにまで到達した。


「がぁぁぁ!? 何だこのっ……光は!?」


 ベルザーが放った閃熱は既に消え去り、聖なる斬撃を両手で必死に受け止めていた。

 パラパラとベルザーを覆う溶岩でできた鎧が剥がれていく。

 さらに追撃を加えんとバーンが駆け出した瞬間、今度はベルザー本体が光りだした。


「これは……グリードの時と同じ……」


「ぐっ!? 馬鹿な……まだ早過ぎっ……」


 その言葉を残し、ベルザーは光りとなって消えていった。

 バーンは力を使い果たし、地面に崩れる様に座り込む。


「ふぅ……とりあえずなんとかなったか……」


「バーン様……よかった……」


「シェリル、ありがとな。おかげで助かったぞ……」


 駆け寄るシェリルの頭に手を置くと、シェリルはバーンに抱きついて来る。

 そんなシェリルをバーンは優しく撫でるのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ラグナロクを背負い、ユグドラシルに向けて歩く黒き勇者にエルフ達から惜しみない賛辞が送られていた。

 逃げ遅れていたエルフ達が道の両脇に並び、拍手をしながらバーンとシェリルを見送っていた。


「恥ずかしいからやめてくれ……」


「バーン様、せっかくですから楽しまないと損ですわよ?」


「お前……慣れてるなぁ……」


 その道はずっと先、ユグドラシルにまで続き、そこには女王やガナス、そしてアリス、マリア、エリザの姿もあった。

 姿を見つけると、三人の仲間がバーンに駆け寄る。


「バーン、怪我ないか?」


「バーン様、ご無事でなによりです!」


「バーンさんっ! 信じてましたっ!」


「おう……なんとかなったよ」


 バーンは三人の頭もくしゃくしゃに撫でる。

 猫の様に目を閉じて笑っている三人を見て、危機をまた一つ乗り越えた事を実感する。

 女王ヨミもバーンに近寄り握手を交わす。


「バーンよ、よくやってくれた。ラグナロクはもはやお前のものだ。異論はないなウッドガルドのエルフ達よ!」


 ワァァァァァァァァァーー……ァァァァァッ!


「女王陛下、ありがとうございます」


「礼を言うのはこちらの方よ。二、三日滞在して身体を休めるがよい。どうせまた旅立つのだろう?」


「ええ、お言葉に甘え二日程休んだ後、イグルに向かう予定です。剣が結局また一本になってしまいましたから」


「やはり剣か……イグル大陸にある七第国家の一つ、魔導国家アルデバラン……七代目勇者リークの出身地ならば、あるやもしれんな」


 第七魔王を討った七代目勇者リーク。

 ベルザーも言っていたように、彼も巨剣使いだった。

 氷魔法で動きを止め、巨剣の一撃で相手を粉砕する。

 単純な攻撃方法だったが、極めればそれが必殺となる。

 彼の剣がアルデバランにあるという話は聞いていた。


「はい、リークが使っていた剣を探してみます。後は八英雄ですね」


「確か……国に仕えている訳ではなかったな? アルデバランの八英雄は」


「ええ、一冒険者としてクエストを消化し続けていると、ウィード紙に載ってましたね。あ、そう言えば気になっていたんですが……ウィードって第二守護隊の隊長と同じ名前ですよね? 何か関係あるんですか?」


「なんだお前、知らなかったのか? ウィードの親父さんがウィード紙を作ったんだよ。ウッドガルドは文学の国でもあるからな。本社はユグドラシルにあって、編集長であるウィードの親父さんは今取材で世界を回ってるからここには居ないが、そのうち会えるかもな」


「ひょっとして名前の由来ってそのまま息子の名前を付けたんですか……?」


「親バカなんだ……」


 思わぬところでウィード紙の真実を知る事になった。

かなり世話になっているので、後でウィードには礼を言わなければならない。


 なんとか魔王を退け、新たな剣を手に入れた。

 巨剣はまた一本になってしまったが、頼りになる仲間も増え、バーン達は一歩前進するのだった。

 辺りが薄暗くなり、ウッドガルドに街灯がポツポツと灯り出す。



 日が沈み、激闘の終わりをウッドガルドの夜が告げていた。


お読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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