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第六十三話:作戦と襲撃

第六十三話です。


よろしくお願いします。


十二月から始めましたが、見てくださった皆様。

本当にありがとうございました。

来年もよろしくお願い申し上げます。

 

 翌早朝、謁見の間に集合した捜索隊の面々は女王の前に整列していた。

 女王はいつものドレス姿では無く、一般的なエルフの装束を身にまとっているが、やはりオーラが違う。

 腰に手を当て、満足そうな笑顔を浮かべる女王を見る一同の心が一つになっていた。


(確実に……バレる!)


 茶色をベースに緑色を少し取り入れたその装束は正に森の民そのものなのだが、溢れ出る女王としての自負が衣服などものともしない。

 誰も口を開けないようなので端的にバーンは言う。


「女王陛下、バレます」


「なんでだ!」


 まず態度から直すように伝え、フードをしっかり被り髪を結って中に隠す。

 少々怪しいが、多少はオーラを隠せたようだ。

 若干不満そうな女王をなだめ、昨日の推察を全員で共有する。

 メンバーはバーン達四人と女王、宰相ガナスと第一守護隊の隊長ギラウ、第二守護隊の隊長ウィードと決まった。

 他、親衛隊の精鋭達はかなり離れそれに続く。


 まずは女王とアリス、マリア、エリザが顔を隠して先行し、ギラウ、ウィードはそれぞれ部下を連れて全く違う場所を捜索し、陽動隊として目立つように動く。

 バーンは女王達から少し離れて後を追い、ガナス率いる親衛隊は更に離れて近寄って行く。

 発見後、周囲を警戒しながらバーンと親衛隊合流後、本部に突入する事に決まった。


「よいか、この作戦にはエルフ族の、人間の未来がかかっておる。ひいては世界の未来に繋がる重要な作戦である。必ず指輪を取り戻し今再びエルフ族に世界の在るべき姿を伝え、結束しなければならない事を再認識して貰うのだ。失敗は許されん。魂を捧げよ!」


「「「「はっ!」」」」


 女王の檄に全員が改めてこの作戦の重要さを認識し、気合いが入ったようだ。

 互いに検討を祈り握手を交わす。


「行くぞっ!」


 女王の背中に悲壮な決意を感じ、バーンは人知れず拳に力を込めるのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ウィード」


 ギラウに不意に呼び止められたウィードは振り返る。

 守護隊のツートップである二人は旧知の中であった。

 子供の頃からの知り合いで、二人は互いを尊敬し、親友だと思っている。


「どうしたのだギラウ。まさか怖気付いたのではあるまいな?」


 ギラウはウィードの冗談に笑いで返す。

 ギラウ自身もまた、この任務の重要性は理解していた。

 ギラウは胸に手を当てて誓いを立てる。


「我らエルフ族の誇りにかけて、なんとしても使命を全うしよう。まぁ、お前には今更言うまでもない事だがな」


「当然だ。我らは陽動。派手に動いてやろうではないか」


 女王が大まかな位置を精霊から聞き出した後、女王達が向かった先とは離れた場所で、決別派の本部を見つけたフリをするのが彼らの役目であった。

 女王が動き出したのを合図に、互いに部下を大勢引き連れて移動を開始する。


「武運を祈る。ギラウ、また後で会おう」


「さらばだウィード。精霊の導きがあらん事を」


 二人は剣を交わし、それぞれの持ち場に向かう。

 エルフの戦士は誇り高く大地を駆け出した。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ギラウとウィードが派手に動いた事で、民衆の目はそちらに向けられた様だった。

 決別派が国民の半分といってもそれは思想の問題であり、実際に行動に移している実働部隊の数はそこまで多くない。

 今女王が動かしている二百余の部隊で十分殲滅出来るだろう。

 問題はやはり〝天識のシェリル〟である。

 彼女をなんとかしない限り、この騒動は収まらない。


 誰にも悟られず、女王達はユグドラシルを出て精霊の導きに従った。

 精霊の指輪との会話は最小限に、怪しまれないように行動する。

 エリザとマリアが前衛になり女王とアリスを隠しながら目立たないように移動していた。

 民衆はやはりギラウとウィードの行動に注視しているようで街中が騒ついている。


(いい感じに守護隊に興味を持ったな。このまま行けそうだ)


 ここまでは作戦通り、バーンも少し離れて四人を追う。

 バーンの姿に気付き握手を求める者や話しかけてくる者もいたが、断らずに全て対応する事で注目を集め、女王を含む四人は更に街に溶け込み進むことが出来た。

 フードを被ったガナス率いる親衛隊も、軍服ではなく市井の一人に身を隠し静かに歩みを進める。


「皆聞け、かなり近付いてきている。気を引き締めよ」


 小声で女王が決戦の場が近い事を伝える。

 ユグドラシルからそう遠くなく、まだ二十分程しか歩いていない。

 やはりかなり近いところに本部はあるようだ。

 それだけ見つからないという自信があるのだろう。

 大通りから脇道へと入り、段々と怪しい雰囲気が漂い出した。


「むぅ……近いのだがはっきりせんな……この辺りの筈なのだが」


「女王陛下……我らの後ろにおさがり下さい」


 エリザは既に剣を抜いていた。

 マリアも抜拳し、周囲を睨みつけている。

 女王とアリスは二人のただならぬ雰囲気を感じ、壁を背に二人の後ろについた。

 周囲には多数の気配が感じられ、少なく見積もっても二十人程いるようだった。


「結構いやがるな……エリザ、手を抜くなよ?」


「ぬかせマリア。覚悟はある」


 二人の会話が終わったのと同時に、武器を持ったエルフ達が周囲の建物から飛び出してきた。

 マリアとエリザにそれぞれエルフ達が剣で斬りつけてくるが、マリアは剣を叩き折り、エリザは剣を消す。

 次の瞬間には襲いかかったエルフ二人が地面に倒れていた。


「なんだぁ……大した事ねぇなぁ……どんどん来やがれ!」


 マリアの声に呼応するようにナイフや剣を持ったエルフ達が次々と襲いかかるも、マリアの拳の前に全く歯が立たない。

 エリザも足や手を斬り、殺さぬようにエルフ達を無力化している。

 消失魔法を使わずとも魔力で強化された肉体のみで十分な相手であった。

 二階の窓から弓で狙うエルフにはマリアの魔弾が炸裂し、危なげなくエルフ達を殲滅していく。


 しかし数が多く、マリアとエリザの隙をついて一人のエルフがナイフで女王に襲いかかった。


「女王様っ!」


 アリスが咄嗟に女王を庇って、抱きつきながらエルフの攻撃を避け壁にぶつかるが、その瞬間二人は壁をすり抜けて姿を消した。


「なんだと!? 二人が消えたぞ!」


「壁をすり抜けた……?」


 突然の事に二人は困惑しながらも残ったエルフ達を倒し、辺りには二十を越えるエルフが横たわっていた。

 最後のエルフの鳩尾みぞおちに魔拳を叩き込むと、マリアは急いで二人が消えた壁に触れてみる。

 しかし触ってもすり抜けられず、何の変哲もないただの壁がそこにあった。


「この壁……駄目だ通れねぇ。さっきのはなんだったんだ?」


「どいてろマリア」


 エリザは壁に向かって消失魔法を繰り出す。


 キンッ!



 消失魔法の高い音が響くと共に、消えた壁の中に地下へと続く階段が現れたのだった。


良いお年をお迎え下さいm(_ _)mありがとうございました。

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