第六十話:高所と鬱憤
第六十話です。
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世界樹ユグドラシル。
全長千メートルを超えるエルフ達の守り神である。
不思議な力を持つ事で知られており、決して燃えない樹としても有名で、何度雷が落ちても焦げることすらなかった。
中は半分以上が空洞となっているが、未だに成長を続けている。
内部は灯りがなくても明るく、一説では葉から吸収した光を幹が放つ事でそのようになっていると言われている。
精霊の指輪が保管されていたのは最上部であり、決して盗まれるはずはなかったのだが……。
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女王に引き連れられ、バーン一行はユグドラシルの内部へと入っていく。
その後一旦女王と別れ、内部にある厩に馬車を預けて周りを見渡した。
樹の中にいるとは思えないほどに広く、入り口から反対側は遥か遠くに見える。
「一階から二十階は役所や店、その上に宿があり、上層は居住施設になっている。エルフでもかなり地位の高い者しか住めんがな。その後は暫く上層へ上るための通路のみがあり、最上部が城のようになっている。守護隊の本部もそこにあるが、駐屯所は下層にある」
世界樹の力なのか内部は驚く程明るく、一階から見上げた天井の高さは三十メートルはあるだろうか。
一階は特別広いのだ、とウィードが説明してくれた。
多くのエルフ達が行き交い、買い物を楽しんでいるようだ。
エルフの仕事は主に林業や装飾品の加工、裁縫に狩猟などが挙げられる。
魔導師も多く存在する事から魔道書を書く者や文学においても著名な作家が多い。
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既に女王は最上部へ上がっており、ウィードに案内されて上部へと繋がる装置に乗る。
「これは……魔法か?」
人が十人程乗れる石板が宙に浮いている。
ウィードは先に乗り、バーン達も促されるまま飛び乗った。
「世界樹の力と魔石の力を合わせた移動装置だ。この魔石に触れながら念じる事で、望みの階層まで移動できる。許可がなければ使えないがな」
そう言って、石板から伸びている石柱の魔石に触れる。
すると石板が音もなく上昇し、どんどん地面が離れていった。
「ひぃぃぃ……」
エリザが目を瞑りバーンにしがみついている。
やはり高い所が余り好きではないらしい。
「窓とか壁とかあればいいんですがぁぁぁ……」
いつも凛としているエリザが慌てるのは面白い。
マリアとアリスが弄るかとバーンは思っていたが、どうやら二人もそれどころではないらしい。
「高い……落ちないですよねっ!?」
「まだ上がるのかよー壁くらいつくれよー!」
先程見事に跳んだマリアだったが、ゆっくり上がる上に狭い足場も相まってかなり怯えている。
結局三人ともバーンにしがみつき目を瞑っていた。
「はは、噂の勇者一行にも怖いものがあるようだ。良いものを見させて貰った」
「「「いいからはやくして!」」」
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漸く上部に着くと、三人は逃げるように石版から飛び降りた。
「私は歩いて下ります……もう乗りません!」
エリザは余程怖かったらしい。
他の二人もひぃひぃ言っているのが面白くてバーンが笑ってしまうと、アリスがいつか見た細い目で睨んでくる。
「何が……おかしいんですか?」
「……すいませんでした」
なんとか許して貰い、ウィードの後に続いて女王ヨミとの謁見の場に向かう。
世界樹の内部とは思えない程にしっかりした廊下や部屋があり、全て木で作られた装飾が荘厳な雰囲気を醸し出していた。
今まで訪れた城よりも広く、雄大で、太陽の光が緑色に変わり降り注ぐ空間にすっかり見入ってしまう。
廊下の屋根は光を通すように蔓が絡み合いトンネルの様になっていて、そこで漸く自分達が世界樹の内部にいる事を思い出す。
茶色と緑色の世界を暫く歩くと、巨大な扉の前に辿り着いた。
「第二守護隊のウィードだ。女王陛下の客人をお連れした。開けてくれ」
門番は頷くと、巨大な扉をゆっくりと開け中へと通す。
世界樹の最上部で中心にある謁見の場は、上を見ると世界樹の枝葉が何本も絡み合い、木漏れ日が降り注いでいる。
壁は全て樹の幹や蔓で、手を加えた様子は見られず、まるで最初からこのような空間があったように感じられた。
先程と同じく緑色の光が降り注ぎ、あのダンジョンの光景とはまた違う幻想的な世界がそこにあった。
扉から真っ直ぐ先に、木でできた大きな椅子に座る女王が足を組んで肩肘をついていた。
透き通るような白い肌に、長い薄緑色の髪。
金色の細いティアラを付け、鼻筋が高く、やはり美形であった。
手足も長く、白いドレスから覗く脚はスラリと伸びている。
エルフ族は人間に比べると成人期が長いため、女王はいくつか分からないがかなり若そうに見えた。
「はぁ全く……マズイ事になったものだなぁ!」
女王はバーン達がいる事など意に介さず、広い空間に響き渡る大声で鬱憤をぶちまけた。
かなりイライラしているようで組んだスラリとした脚をガタガタ揺らし、美しい顔は眉間に皺を寄せている。
(さっきと全然違うな……別人じゃないよな?)
先程見た印象とは全くかけ離れたその様子に唖然としていると、漸く女王から声を掛けられる。
「おい、いつまでそこにいるんだ? ちゃっちゃか来い!」
慌てて近付き跪こうとすると、そのまま立ってろと更に怒鳴られる。
「こんな時によく来たな! 女王のヨミだ。バーン、あんたの噂は聞いてるよ!」
(俺……怒られてる?)
バーンが戸惑いつつお辞儀すると、多少落ち着いたのかふぅ、と息を吐いて続けた。
「やれやれだ。今日までなんとか抑えてきたが、奴らもう収まりがつかん。このままでは暴動になりかねんよ。女王になってもう三十年……潮時かねぇ」
(三十年と言う事は二十歳で女王になったとしても……見えねぇ)
「見た目は若いけどもう歳なんだよ」
バーンの考えている事を見通す様に女王に言われてしまい、慌てて首を横に振る。
暫く睨みつけられたが、その後の一言で全ての感情は吹き飛んでしまった。
「まぁいい……ああ、そうだ。私はあんたの叔母だから。よろしくな甥よ」
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