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第四話:思惑と月明かり

四話目です。


よろしくお願いします。


問題解決しましたっ!

「じゃあ、やっぱりクルズさんが噂の黒い騎士さんなんですか!?」


 現在クルズ一行は馬車に乗り、リック村を目指していた。

 ショークシャからリック村までは馬車で三時間程かかるが、新たな仲間と進む道はその時間を感じさせない。


「はは、そんなに驚かないでくれよ。別にあれくらい普通の事だからね。他の国ならそれなりにいるさ」


 謙遜するクルズにアリスは首を横にブンブン振りながら声を弾ませる。


「そんな事ないですよ! 一人でオーガを倒すなんて、なかなかできる人いませんよ!」


 アリスに褒められ満更でも無さそうにクルズが照れていた。

 その時ふと思った疑問をアリスは口に出す。


「あれ、でもその時他の皆さんはどうされてたんですか?」


「ああ、他の三人は他のクエストに行ってもらってたんだ。オーガなら一人でなんとでもなるしね」


「そーゆーこった。俺ら三人は近くの別の場所でクエストをしてたんだよ。その方が効率がいいだろ?」


「はぁーなるほどぉ」


 あの後、パーティメンバーを紹介され、馬車を借りてリック村へと出発した。

 戦士のバリカ、魔法使いのゴルドミ、僧侶のアデンホの三人もアリスを歓迎してくれている。


「いやー、男ばっかりで寂しかったんだ。アリスちゃんはかわいいし、やる気でるなぁ!」


「おい、バリカ! アリスちゃんが怖がるからやめろよな!」


 アデンホが鼻の下を伸ばすバリカに釘を刺すと、バリカは恥ずかしそうに謝っていた。


「ごめんな、アリス。あと一人くらい仲間にしようと思ってるからさ。なるべく女性にするよ」


 クルズがアリスを気にしてフォローしてくれたが、アリスは気にしてないと手を振りながら笑顔で応えた。

 それよりもアリスが気にしているのは別のことであった。


(アデンホさん……僧侶だったんだ。ほんとに私いるのかなぁ。あ、弱気禁止!)


 アリスはシスターとして、自分が今やれることを精一杯やると決意を新たにする。


 平原を馬車が駆ける。

 この辺りは魔物も少なく安全で、途中いくつか村も見える。

 天気も良く、馬車から見る風景はいつもより輝いて見えた。


(これもシスターとしてしっかりやっていこうと決めたからかな? 昨日とはまるで違う……私はやっと冒険者になれたのかもしれないなぁ……)


 馬車は馬の蹄と車輪の音を鳴らしながら進んでいく。

 日が傾いてきており、着く頃には暗くなっているかもしれないとアリスは思った。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「アリス、着いたよ」

「ふぇっ!?」


 アリスが目を覚ますと辺りはすっかり日が落ち、暗闇が広がっていた。

 どうやら暖かい日差しと、小気味好く揺れる馬車のリズムに負けてしまったようだ。


「ごめんなさい! 寝ちゃいました……」


「大丈夫だよ。魔物にも山賊にも出会わなかったから気にしないで。誰か一人でも起きてれば大丈夫だから。アデンホも寝てたしね」


 アデンホも頭をかいて照れている。

 その様子が可笑しくてアリスはクスッと笑った。

 ふと、周りを見渡すと山の麓にいるようで、とても村のようには見えなかった。


「ここがリック村ですか? なんだか真っ暗ですけど……」


「いや、ここはリック村から少し離れた山小屋だよ。ゴブリンがここいらから出るらしいんでね。今日はここで様子見をしようと思う」


 山の麓にポツンと小屋がある。

 周りを見渡してもアリス達以外誰もいないようだ。


「村はここから南の方角……あそこだね。見えるかい?」


 クルズが指をさした方向を見ると、確かに明かりが見える。

 ここからだと森を挟んで数キロはありそうだ。


「この山からゴブリンは降りてくるらしい。今夜は徹夜になるかもしれないから頑張って」


「はい! いっぱい寝たので大丈夫です!」


 アリス達が山小屋に入りランプに火を灯すと、温かな光が屋内に広がっていく。

 古びた机や戸棚、ベッドは誇りを被っており、あまり使われていない事が分かる。

 

 一息ついた後、馬車を借りる前に買っておいた食材で夕食を作ることにした。

 魔法使いのゴルドミが火の魔法で薪に火をつける。


「ファレン!」


 唱えると同時に薪から火が上がる。


「わー! ゴルドミさんは火の魔法使いなんですね!」


「ああ、薪に火をつけるのが一番緊張するよ。かなり魔力を抑えないといけないからね」


 魔法使いは通常、火、水、風、地、雷のどれか一つの魔法を最初に得る。それ以外は習得できないが、稀に二つの属性を使う者や、全く違う属性を使う者も存在する。どちらもかなりレアなケースであるため、国家に雇われることも多い。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 夕食を食べ終わり少し身体を休めながら雑談をしていた。

 その間もバリカは外を警戒するように窓から顔を出し、キョロキョロと辺りを見回していた。

 開いた窓からは風が木々を揺らす音だけが聞こえ、月が雲に隠れると辺りがより一層暗くなっていく。


 その時突然灯りが消え、部屋は暗闇に包まれた。


「えっ!? ど、どうしたんで……きゃあっ!」


「騒ぐな」


 段々と目が慣れてくる。

 ナイフを持ったクルズがそこにいた。


「えっあの、えっ!?」


「悪いなアリス。最初からこのつもりだったんだ」


 訳が分からず混乱していると、強く手を引っ張られ、古びたベッドまで連れていかれた。

 ボスンッとベッドに寝かされると、腕を強引に上に上げられる。

 カビくさい匂いが気持ち悪かった。


「い、痛いっ!」


「大人しくしてな!」


 バリカがアリスの手をベットの柵にロープで縛り付ける。

 両手を組まされ、まとめて縛り上げられると、アリスの豊満な胸が強調される。

 それを見た彼らは舌舐めずりした。


「いやっなんで! やめて下さい!」


「騒ぐなって言ったよな?」


 クルズがナイフを頬につける。

 ヒタヒタと優しく叩かれているが、冷たい感触がいつまでも頬に残った。

 それだけで、アリスは呼吸が荒くなる。


「はやくやっちまおーぜ! もう我慢できねぇよ! やっぱり、俺の言った通りの巨乳ちゃんだぜ! ローブの上からでも分かったからなぁ!」


「落ち着けアデンホ。こう言うのは最初が肝心なんだよ。しっかり教えてやらなきゃ駄目なんだ。現実ってやつをよ?」


 そう言うとクルズはアリスのローブを脱がそうとする。

 下から捲し上げられ、アリスの綺麗な脚が露わになっていく。


「や、やだっ! やだぁぁあ!」


 目に涙を浮かべ悲痛な面持ちでアリスは助けを求めるかのように泣き叫んだ。


「黙れっ!」


 それを煩わしく思ったクルズは彼女の頬を強く叩く。

 あまりに突然の出来事だったために、この先待ち構えているであろう惨事に彼女はただただ恐怖し、声を失い、涙が赤くなった頬を伝う。


(なんで……なんで……!)


 やがて力なく呆けているアリスのローブを再び捲し上げる。

 もう抵抗はない。

 やがて小ぶりな尻が露わになり、ローブ越しにでも分かるアリスの豊かな乳房が現れる。

 呼吸する度にふるふると揺れるそれは、男たちの興奮を高めていく。

 鷲掴みにすれば、その柔らかさが分かるだろう。

 やがて、縛られた腕までローブが上げられアリスの柔肌が晒される。

 白く透き通るかのようなその肌に、豊かな乳房からその下まで全てが見えている。


「なぁ、アリス。分かったか? これが現実だ。前々からお前のことをこうしたくて仕方なかったんだ。苦労したぜ。ギルドの信頼を得るために色々やってよぉ。黒い騎士の噂も利用したしな。あとはパーティをクビにしてもらったりな」


「……え?」


 無言で泣いていたアリスからか細い声が出る。

 今にも消えてしまいそうなその声には、これから先に待つ恐ろしい現実を理解していた。


「どういう……こと」


「ん? 簡単だよ。パーティリーダーに金渡して、すぐクビにして貰うんだ。ま、頭悪そうな奴を探すのが大変だったかな?」


「なんで……そんな……」


「決まってるだろ? どこにも行く当てなくなって俺らみたいな実績のあるパーティが来たら喜んでついて来るだろ? ……なんの警戒もなくな」


「……うっうっ……ひどい……」


「まぁ俺らがなんもしなくてもすぐクビになってたパーティもあったな! ありゃ笑えたよ! よっぽど使えなかったんだな、お前」


 悔しくて悔しくてアリスは唇を噛みしめる。

 自分が情けなくて消えてしまいたかった。

 何故警戒しなかったんだろうと。

 自分はなんて馬鹿なんだろうと。


「安心しろ。俺達はお前を見捨てない。大事に大事に……飼ってやるからよ」


 四人の笑い声が部屋に響く。

 アリスはもう力なく肌を晒し続ける。

 穢されるのだ。

 あらゆる陵辱が彼女を待ち構えている。

 現実から目を背けることが、彼女にできる唯一の防御だった。


「それじゃ、始めるとするか……ん?」


 縛られたアリスの手から光が溢れる。


「な、なんだ!?」


「……え?」


 アリスも驚いて上を見上げる。

 宝石と同じ緑色の光がどんどん強くなっている。

 その光のあまりの眩しさに、クルズ達は手で顔を覆う。


「く、くそっ! なんだそれはっ!」


「精霊の指輪が!?」


「せ、精霊の指輪だと!? んなもんお前が持ってる訳ねーだろ! エルフ族の秘宝だぞそれは!」


「え、えぇぇぇぇ!?」


 恐らくこれを売りつけた露天商も知らなかったのだろう。

 〝精霊の指輪〟とはエルフ族の秘宝の一つ。

 全部で十二個あるその指輪はエルフ族の繁栄を影から支えていた。

 そんなものが盗品として流れて来るはずがない。

 露天商もそれが本物とは思ってもみなかったのだろう。


「く、くそ! バリカ! 指輪を取り上げるんだ!」


「わ、わかった!」


 精霊の指輪は尚も凄まじい光を放っている。

 が、それがフッと消えた。


「な、なんなんだ一体……」


「まぁ、いいさ。消えたんならそれで……」



 ギィッ……と、四人の後ろのドアが開く音がした。


 ガチャッ……ガチャッ……と鎧の金属が擦れる音。


 雲から顔を出した月明かりが黒い騎士を照らしていた。


「誰だてめぇは!」



「通りすがりの冒険者だバカヤロウ」



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