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第四十八話:復活と飛来

第四十八話です。


よろしくお願いします。


悩みも出てきました(´¬`)


活動報告に色々書いております(´∀`)

 

 突如ヴァンデミオンの上空に光の輪が現れ、それを突き抜けるように黒い影が登って行く。

 それはヴァンデミオンの空に漂う黒雲に阻まれ誰の目にも映らなかった。

 突き抜けた影は嬉しそうに飛び回り、誰にも聞こえない世界で歓喜の声を上げる。


「ああ……外はいいなぁ……んー! 気持ちがいい! おっといかんいかん、勇者は……あっちかな」


 飛行能力は魔力によるものである。

 飛行にはかなりの力を使うため、強者との戦闘では使えず、あくまで移動にのみ使用していた。

 黒い影はヴァンデミオンから数分でアーヴァインに辿り着く。

 強い魔力を持った者を感じていた。


「おー感じる感じる。何処かにいるな。ふーむ、街を軽く吹き飛ばせば出て来るやもしれんな。待てよ……いきなり吹き飛ばすのも芸がないし、誤って勇者が死んでしまっては元も子もないか」


 そう言うと黒い影は全身から瘴気を出し、それを街の周りに放った。

 黒い靄がまだ暗いアーヴァイン周辺に広がって行く。

 瘴気伝いに魔物の影を捉える。


「中々魔物どもがいるではないか。さぁ始めよう……魔王復活のファンファーレだ!」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 黒い影がヴァンデミオン上空に現れる少し前、バーンは夜中にふと目が覚めた。

 胸の奥が騒つく、嫌な魔力を漠然と感じたのだ。


「まさか……」


 バーンは飛び起き、三人を起こす。

 まだ寝ぼけ眼だった三人だったが、バーンの只ならぬ様子に気付き目を覚ました。

 武具を身につけながらバーンは言う。


「魔王が来る、間違いない」


 何故だか確信があった。

 三人も飛び起き、すぐさま支度を開始した。

 バーンは宿の従業員からリンク石を借り、王城へ連絡を入れる。


「魔王が来る、住民の避難を最優先にしてくれ! 騎士団を街の防衛に当たらせろ! ……ここは戦場になる」


 話しはすぐに王へ伝えられ、騎士団は防衛任務及び住民をアーヴァイン城へ誘導するよう命が下る。

 街の周囲は壁に囲まれ、魔物の侵入を防いでいるものの、東西南北にある大門を破壊されると魔物が流れ込んでしまう。

 騎士団約三千人は各部隊に別れ任務に当たる。

 バーン達もすぐに宿から出て住民の誘導に当たりつつ、アーヴァイン広場に向かった。


「闘うならあそこだ。周りに民家がない」


 仲間達も後に続いた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ほー、俺の存在にもう気づいているのか。中々やるではないか勇者よ。そうでなくては楽しめない……」


 黒い影……魔王は口を歪ませわらう。

 アーヴァインの街中が騒がしく動いていた。

 明らかに魔王が来ることが分かっている。

 ここに魔王が来るまでに動いていなければこれ程迅速にはいかないだろう。


 魔王は黒い髪を目にかかる程度に切り揃え。見た目はまるで二十代の好青年のようだ。

 青白い素肌に黒いロングコートのような上着を羽織り、ズボンまで黒い。

 首からは金でできたネックレスをしていて、中央には赤黒い宝石が禍々しい光りを放ち、大きく主張している。

 第四魔王グリードは久々の戦さ場の空気を愉しんでいた。


「んー、では余り待たせても悪いしな……始めろ魔物ども」


 冷たく言い放った言葉を合図に、魔物達は咆哮を上げる。

 地鳴りのように鳴り響いたその声が、魔物の多さを物語る。


「ああ、いいファンファーレだ……まずは街が焼かれる様を見させて貰おう。いやぁ……愉しいなぁぁぁ!」


 心の底から湧き上がるこの衝動。

 魔王は一人、空でわらう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 グオオオォォォォォォ……ォォォォオオ!!


 身体に魔物の咆哮が響いてくる。

 既に街は取り囲まれ、魔物がアーヴァインに侵入せんと攻撃を開始していた。

 彼方此方で叫び声や、破壊音が聞こえる。


「バ、バーンさんっ!」

「大丈夫だアリス。俺について来い」


 アリスはその言葉に怯えるのをやめて、バーンに強く頷いた。


「マリア、エリザ、魔物が多過ぎる。俺はここ、南門から来る奴らを叩く。二人はそれぞれ北と東に行け。着いたら騎士団に、西にある程度勢力を分けろと伝えろ。二人はそれぞれの要となり、魔物を駆逐しろ」


 二人は無言で頷く。


「ここに滞在している冒険者の手も借りるんだ。二つ名持ちの奴も居るだろう……任せたぞ」


 二人は瞬時に別れて走り出す。

 語る時間はない、互いに二人は目で合図を送る。


((また会おう!))


 二人は微笑み合うと、道を別れ持ち場に向かった。

 二人を見送った後、バーンはアリスを連れて南門に向かう。


「アリス、常に後ろにいろ」


「はいっ!」


 バーンにとってもこの様な大規模戦闘は初めてであったが、ジークに学んだ事を最大限活用し、思考を尖らせていた。

 既に二本の巨剣は抜き、肩に置いて走っている。

 その時、目の前で南門が激しい音を立てて粉砕された。

 門の破壊と共に魔物の群れがなだれ込む。


(魔王め……そこら中の魔物を集めたな)


 騎士団員達が応戦するも、余りの多さに忽ち劣勢になっていく。

 指揮系統がまだ上手くいっておらず、戦局はかなり劣勢だ。


「どけぇぇぇぇッ!」


 バーンの咆哮に騎士団員達が身を引いた。

 それに反応した魔物が数匹、バーンに向けて飛びかかる。


「おぉぉぉらぁぁあッ!」


 二本の巨剣が轟音と共に魔物達を引き裂き吹き飛ばす。

 続いて向かって来るオーガの頭に右の巨剣を穿つ。

 更に門に近づき魔物を押し返していく。

 と、押し返した魔物達の後方から巨大な牛型の魔物、ビッグホーンが突っ込んできた。


「ちぃっ!」


 巨剣で受け止めるも止まらない。

 地面を削りながら後方へ押し戻されるが、巨剣を身体ごと捻りビッグホーンの三メートルはある巨躯をひっくり返した。


「グモォォォォオオ!」


 ビッグホーンの咆哮も虚しく、起き上がりざまに首を狩り、周りを見渡した。

 騎士団員達が惚けているのを見て士気を上げるべく一喝する。


「お前らは何のためにここにいるッ! 国のためか!? 自分のためか!? 違うッ! 愛する者を守るためにいるんだろッ!! 闘え騎士達よッ! 勇気は剣を取った者にこそ宿るのだッ!!」


 バーンの闘い振り、そしてその言葉に騎士団員達が奮い立つ。

 拳を固め、剣を取り、魔物を睨みつけてときの声を上げた。


「「「「ウオオォォォォォォォッ!!」」」」


 魔物にも引けを取らない雄叫びが、騎士団員達に広がっていく。

 元々優秀な人材が多い騎士団は魂が宿り直したかのように復活し、次々に魔物を駆逐していく。

 バーンも巨剣を上下左右に振り回し、戦場を駆け抜ける。


(よし、行けるな!)


 形成は完全に逆転し、魔物の数が目に見えて減り、逃走するものまで現れ出した。

 周囲にあまり強い魔物が多くなかった事も幸いし、街への被害は最低限に抑えられた。

 一方でアリスは怪我を負った騎士団員を次々に癒していた。


「どんどんどうぞっ!」


 あっと言う間に回復する事で、騎士団員達は数を減らすことなく戦線を維持できていた。

 おかげで南門はもう殆ど沈静化している。


「ある程度の数を残して残りの三門に迎えッ! 門が破られた時の対処法通りに門を塞ぐんだ! 急げッ!」


 バーンの声に騎士団員達が一斉に動く。

 本来ならば統率体制がしっかりしている筈だが、今回はあまりに突然であり、また就寝していた事もあってかスムーズに対応ができていなかったが、バーンの活躍により南門を死守する事ができた。

 バーンが後方で回復に当たっていたアリスに近付き頭を撫でる。


「アリス、よくやった。偉いぞ」


「はいっ!」


 バーンに褒められ嬉しがるアリスだったが、バーン越しにある者を見て一瞬で表情が変わる。

 バーンもそれに気付いていた。

 既に目線はそれに移る。



 広場の中央に魔王が舞い降りた。


お読み頂きありがとうございます(´∀`)感想などお待ちしておりやす。

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