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第四十七話:ひと時と危機

第四十七話です。


よろしくお願いします。


ぬるぬる回(´¬`)

 

「申し訳ございません。やはりお一人ずつが限界……しかもある程度の時間に限られるようです」


 男は誰かと話をしている。

 暗く、低い声は心苦しい胸の内を曝け出しながら、相手に向かって申し訳なさげに現状を語る。


『構わん。寧ろ良くやってくれたと思っている』


 相手は時空間越しに男を称賛した。

 身に余る光栄に男の声が上擦る。

 先程の暗く、低い声から一転して明るい声が出ていた。


「有り難き御言葉……! まだ存在する筈です。何としても掻き集め、必ずや貴方様方々を……!」


 相手は静かに、そしてほんの僅かにわらっているようだ。

 漸く忌々しい結界から解放されるのだから。


『貴公はそのまま身を隠し、来たるべき刻に備えよ。今後にも期待させて貰おう。貴公に混沌の加護があらんことを』


 相手はそう言い残し、会話は終わった。


(なんという僥倖……! 長年人間社会に身をやつしてきたが、やっと報われるのだ……あぁ、魔界の神よ……)


 男は未だ恍惚から抜け出せない。

 一魔族に過ぎなかった彼は今、魔界の神の近くにいる。

 その事に愉悦し、ほくそ笑み、歓びを噛み締めた。


(あの兄弟は逃げたか……逃がされたか……まぁいい……何としてもアレを再び手に入れなければ……二つでは限界がある)


 男は再び誓いを立てる。

 必ずや魔王を、魔界の神を復活させ、この世界を魔族の物にするために。


(しかしアーヴァインか……力が及ばない場所だ。前回は審査会の連中を金で動かしたが今回は無理だろう。世界に発表されてしまったし、王が認めている。奴らでは太刀打ちできまい)


 アーヴァインは一旦諦め、別のルートを模索する。


(必ずある。必ずな……ククク……)


 男はわらう。

 魔王の恐怖を世界が再び認識するのはもう間も無くであった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 二人の再開を見届けたバーン一行は、何度も感謝する二人を残し、宿へと戻ってきた。

 辺りは暗くなり、アーヴァインの街に灯りがともる。


「ふいー! 疲れたぁ!」


 マリアが服を脱ぎ散らかしベッドに飛び込むと、エリザがすかさず小言を言う。


「こらマリア! はしたないでしょう、服は畳んでお風呂に入ってからにしなさい!」


 エリザはマリアの保護者になりつつあった。

 マリアはへいへい、と寝たまま服を畳むがそれに再びエリザが怒る。


「マリア! 座ってやりなさい! それとその格好! 丸見えですよ!」


 マリアは堪らずアリスに抱きつく。

 アリスの胸に顔を埋め幸せそうにしている。

 けしからん、とバーンは思うが黙って見ていた。


「アリス……エリザがイジメるんだよー」


 そんなマリアをアリスはいつも甘やかす。

 よしよしと頭を撫でるアリスに、マリアを甘やかすなと言うが聞く耳を持たない。

 そんな様子を見ながら武具を外し終わったバーンにエリザが抱きついてきた。


「おふっ!?」


 かなりの勢いでタックルされた。

 エリザも既に武具を外してあったので助かった。


「バーン様……奴らはグルなのです! 二人はできてます! 我々も……」


 と、言って強く抱きしめてくる。

 今度はそれを見た二人が押し寄せてきた。


「ず、ずるいですっ! ひきょーもの!」


「汚ねぇぞエリザっ! それでもおっぱいついてんのか!」


 おっぱいはついている。

 それは間違いない。

 これは収まらないと判断したため、ギャーギャー喚く三人にバーンは言い放った。


「風呂に入ろう!」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 バーンは風呂に浸かりふぅ、と息を吐く。

 今日もまた、濃い一日であった。

 洗い場では三人が仲良く洗いっこしている。

 先程バーンが現れたのは言うまでもない。


「マリアさんはずるいですねぇ……このくびれでこの胸は反則ですね……」


 アリスがため息混じりに呟いた。


「そうかぁ? アリスくらいの方が興奮すると思うけどなぁ……そうだろ?」


 バーンは不意に話を振られるが無言を貫く。


「そうだってよ?」


(否定はできん……)


「エリザさんは本当に肌がきれいです……すべすべです……」


 アリスはエリザの腕に頬擦りしている。


「わっ!? ア、アリスくすぐったいよ……」


 どれどれ、とマリアはエリザの胸を揉んでいた。


「き、貴様っ! すぐ揉むな! ど、どれ貴様のも出してみろっ!」


 今度はエリザがマリアの胸を揉みだす。


「あっ……!」


「変な声を出すなっ!」


 アリスは今の内にとバーンの横に入り、気持ち良さそうな顔をしている。


「あはぁ〜気持ちいいですぅ〜」


 緩み切った顔から涎が出ている。

 バーンに注意されて危ない危ないと微笑んでいた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 四人で湯船に入るのは二回目だが、昨日より遥かに打ち解け、会話も弾んでいた。

 バーン自身、まだ長くはない付き合いの中で、これほど早く仲良くなれるとは思っていなかった。

 きっとこれも運命なのだろうと納得するしかない程に。


「バーン様、次はやはり森羅国家に向かうのですか?」


「ああ、そうだな。アーヴァインでやるべき事はやったし、明日旅立とう。エリザが仲間になってくれて良かったよ」


 そう言われエリザは照れ臭そうに笑う。

 彼女からしてみればそれは自分が言いたい言葉であったが、何度も言う事は無粋だったので有り難く言葉を飲み込んだ。


「マリアもありがとな。まだ言ってなかったけど、ついてきてくれてさ」


「…………ああ、あたしがそうしたいからいいの」


 不意に言われ照れてしまう。

 湯船に鼻まで浸かり隠れてしまった。

 アリスとエリザがクスクス笑う。


「アリスは……」


「バーンさん、皆んなそうですけど……私たちが感謝してるんです。バーンさんのおかげで今とっても楽しいですからっ!」


 バーンの言葉を遮り、アリスは二人の気持ちを代弁した。


「そっか、なら……良かったよ」


 バーンは思う。

 このひと時が永遠に続けばいいと。



 しかし、黒い影と共にアーヴァインに危機が迫っていた。


お読み頂きありがとうございます(´∀`)感想お待ちしとります!

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