第四十二話:古代と眼光
第四十二話です。
よろしくお願いします。
昨日はすいませんでしたm(_ _)m
本日は三回更新致します(`・ω・´)見てやって下さい
ダンジョンを下りて行くと階段の先に淡く青白い光が見える。
階段の出口から漏れ出した光の中に入ると、先程の空間とは比べ物にならない広い場所にバーン達は出た。
「うおっ……たっかいな……下が見えねぇ」
マリアが下を覗きながら声を漏らす。
彼女が言う通り底が見えない吹き抜けの空間がそこにはあり、何本もある柱のような岩がまるで暗闇の中で宙に浮かぶように存在していた。
また天井も遠くに青白い光が見えるのみで、満点の星空の下にいる感覚にさせられる。
もう一度よく下を見ると、ところどころ柱同士を繋ぐように岩の橋が掛かっている。
今いる場所が足場としては一番高く、ここからさらに下に下りていく、とライアーは歩を進めた。
岩肌は青白く光り、幻想的な雰囲気に目を奪われてしまう。
「きれいです……」
「すごいな……古代人はこれを全部掘ったのか」
「ああ、人為的なものだ。恐らくは通路みたいなもので、今は行かないが居住区も橋を渡れば行ける。落ちないように気をつけてくれ。それと、ここからは魔物が現れるかもしれないからそれにも注意だ」
岩の橋を渡り一本目の柱に辿り着くと、中は空洞になっていて螺旋階段がずっと続いていた。
下りながらエリザが言う。
「しかし、これ程のものを作り出せるとは……古代人は凄まじい力を持っていたのですね」
「ああ、古代人は時空を操っていたとされている。古代の壁画やなんと本まで当時のまま残っていることから、物質の〝時〟を止めているのではないかと言われてるんだ。なんせ数万年も前の話だからね。今の暦が始まってまだ三千八百年だし」
アリスがその言葉を聞いていつも持ち歩いている本を腰から出し、ライアーに見せてみた。
「これも古代の人が……」
「ちょっ! これどこで!?」
ライアーが異常な程驚く。
中を見せてもらいながらぶつぶつと独り言を言っている。
「そんな……これ……日記……いや伝記かな、古代の出来事が書いてある……こんなはっきりしたのは……いや、すごいぞこれ……」
「ライアー、古代文字が読めるのか?」
声を掛けないと帰ってきてくれなさそうだったので、ライアーに説明を求めた。
「あっああ、すまない。あまりに驚いて……ここには古代に何があったか書いてある。おとぎ話みたいなね。それによるとここにある単語が出てくる……〝魔帝〟ってね。それを倒す物語みたいだ」
〝魔帝〟……初めて聞くその言葉に嫌な感覚が拭えない。
得体の知れない存在の影を初めて見たような気がした。
(もしかするとこれが九人目の魔王……いや魔帝か……)
「まぁこれに書いてある事が真実とは限らないよ? 所謂小説みたいなものかもしれないしね」
楽観するライアーに、アリスが本についてあった事を伝えると、顔色が変わる。
「待ってくれ、そのページはどこだい? 炙り出しのページ……あ、これか……嘘だろ」
現れた炙り出しの文字を読み、戦慄する。
マリアが促す。
「なんて……書いてあんだよ」
「この本に古代魔法は三つあり……一つはもう渡したとここに書いてある。『魔帝を討ち亡ぼす一つ目の魔法は〝白銀の咆哮〟魔を穿つ聖なる槍』……だそうだ」
あのアリスに吸い込まれた光はそういう事だった訳だ。
古代人はアリスを適正者に選んだ。
魔帝は本当にいるのかもしれない。
本から授けられた現実に、言いようのない不安がバーン達を包み込んだ。
「私に……なんで……」
アリスは怯えていた。
魔帝を倒す力を急に与えられたと言われてもすぐには受け止められないだろう。
アリスは優しい娘だ。
そんな彼女をバーンは抱きしめる。
彼女は腕の中で震えていた。
「まだ続きがある……『聖なる力は聖なる者にしか扱えない。清き優しく慈愛に溢れた人間にしか。時代がこの力を必要とした時、この本はその者の前に現れるだろう』……以上だ」
それは魔帝の存在を肯定し、その復活が近い事を示していた。
あと時間はどれくらいあるのだろうか。
まだ腕の中で震えるアリスにバーンは優しく声を掛ける。
「アリス……お前は俺が守る。必ずな」
アリスは不安げに顔を上げ、バーンを見つめる。
「ずっと……一緒ですよね?」
いつかの誓いを彼女は再び問い掛ける。
「ずっと一緒だ」
安心したのか彼女は嬉しそうに微笑んだ。
マリアとエリザもアリスを抱きしめる。
「マリアさん……エリザさん……」
「アリス、あたしもあんたを守るよ」
「私もだ、アリス。案ずるな」
彼女はこくこく頷いて元気に声を出した。
「さぁっ! 行きますよ! ライアーさんのクエストを絶対成功させましょう!」
仲間達は頷き共に歩みだす。
そんな彼らを見てライアーは想う。
(そうだよな……これが……絆だよな。トゥルー……必ず君に会いに行く。何があっても)
ライアーは再び意思を強くし、彼らを追った。
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「残り二つの魔法は分からずじまいかー。また時が来たらってことなんかねぇ」
「だろうな。まぁまずはクエストに集中だ。もう魔物がいつ現れてもおかしくない」
辺りに気配を感じる。
螺旋階段を下りきり、また広い空間に出た。
柱のような岩が何本も突き出ているが、間隔はかなり開いている。
この空間を維持しているのも古代の魔法なのだろうか。
「前来た時はどんな奴がいたんだ?」
マリアの問い掛けにライアーが少し考えながら答える。
「えーっと、グールやゴースト、スライムに……ゴーレム、あとは……」
「いや、もう分かった」
先頭を行くバーンが手で歩みを制す。
既に片手は巨剣の柄を握っている。
暗闇に、一つ目の眼光が鋭く光っていた。
ご覧頂き感謝です(´∀`)




