表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/108

第四十一話:無残と悪意

第四十一話です。


よろしくお願いします。


暖かい日ですね〜(´∀`)物語は暖かくない……

 

「そんな……ひどい……」


 燃え尽きたライアーの家は無残な姿となり、悪意が形となって現れたその現実に、アリスは悲痛な声を上げた。


「くそっ……やっぱり残りゃよかった……」


 バーンは自分の甘さに腹が立つ。

 ライアーの家が燃えていると聞いたのは朝になってからだった。

 着いた時には火は消され、黒い炭の山がただ虚しくそこにあった。


「バーンさんっ……!」


 アリスが耐えられなくなり、バーンの胸に縋り付いている。

 昨日話していた人が今日はいない。

 アリスのような心の優しい娘に、現実は厳しすぎる。

 マリアとエリザもその惨状にただただ絶句し、悔しくて拳を握り、ぶつける場所を探すかのように空を見ていた。


 トゥルーは知らせを聞いて倒れたらしい。

 彼女に掛ける言葉が見つからない。

 恐らくバーン達に危害は加えられないと判断し、ライアーの口を封じたのだろう。

 クエスト依頼が出された時から目をつけられていた可能性が高い。

 あわよくばクエストが失敗すればいいと思っていのだろうが、バーン達が現れ焦って凶行に及んだ可能性もある。

 できれば直接手は出したくなかった筈だ。

 何故ならこれで、はっきりした。

 時空転送装置は本物だ。

 だが、それを一番望んだ彼はもういない。


「……いくぞ」


 バーンは怒りをどこにぶつけていいのか分からなかった。

 いっその事審査会とやらに乗り込んでやろうかとも考えたが、そんな事をしても無駄だろう。

 彼らはきっと傀儡だ。

 仲間達もどうしていいか分からず、無言でバーンについていく。


 ガラッ……


 バーン達は振り返る。

 燃え残った柱が折れただけみたいだ。

 音すらが悲しげに聞こえる。

 まるで彼の家が彼のために鎮魂歌レクイエムを奏でているようだった。

 ただ虚しさだけがバーン達の心を締め付けていた。


 ガラッ……ガラガラッ……


「おい、様子がおかしいぜ!?」


 そう言ってマリアが駆け出す。

 微かな希望に縋る様に全員で瓦礫を掻き分ける。


「バーン様っ! ここです!」


 エリザが瓦礫をどけながら叫んでいる。


「どいてろ……」


 巨剣を既に抜き、バーンは怒りを瓦礫にぶつける。

 巨剣は凄まじい風切り音を上げて瓦礫を粉砕した。

 さらに細かい燃えカスを払うと鉄の板が見える。

 どうやら扉の様なそれが不意に開いたと思えば、中からライアーがゼェゼェ言いながら現れた。

 アリスが喜びの声をあげる。


「ライアーさん! 良かった! 大丈夫ですかっ!?」


「ああ……なんとかな……はぁ……はぁ……熱かった……死ぬかと思った」


 ライアーは狙われている事を感じ、地下室を一人で作っていたらしい。

 一人分のそれは、木で枠が作られ意外と立派だった。

 中には水や食料まである。

 放火された事に気付き逃げ出そうとしたが、あまりに火の回りが早く逃げ切れなかったらしい。

 中にはパイプが通り、空気が入るようにまでしていたことから、放火すら頭にあった彼の用心深さが役に立った。

 バーンは安心したが、やはり後悔は残る。


「ライアー……よかった。やっぱり泊まれば良かったな……すまん」


 ライアーは手を振りながら答える。


「いや、あなた方が怪我してたかもしれないから……はぁ……はぁ……さぁ、行こう」


 ライアーはそんな体で行こうとしている。

 待てと言うが聞く耳を持たない。

 幸い怪我はしていないようだが、体力の消耗が激しい。


「アリス、頼む」


 アリスが頷きライフリーアを唱えると、温かな光がライアーを癒していく。

 光に包まれたライアーの身体が見た目からも分かるほど回復していた。


「す、凄いな……疲れが取れていく……」


 すっかり元気になったライアーはアリスに何度もお礼を言う。


「良かった……あ、あの……それよりもトゥルーさんが……」


 トゥルーが倒れた事を聞いたライアーは動揺した様子だったが、それでも意思は変わらないようだ。


「なんとしても、無実を証明するんだ。話はそれからなんだ!」


「分かった、行こう」


「バーンさん……」


 悲しい目をするアリスの頭を撫でる。


「アリス……男にはな、守らなきゃいけない意地があんだよ。分かってやってくれ」


「……分かりました」


 アリスには悪いが確かにあまり時間はない。

 急ぐライアーに続き、一行はダンジョンに向かった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 到着したダンジョンには騎士団員達が警備のために立っていた。

 突如現れたエリザの顔を見てひどく驚く。


「だ、団長!? じゃない、エリザ様! 何故ここに?」


 エリザがライアーの代わりにクエスト依頼証とダンジョン調査許可証を提示する。


「ライアー氏のダンジョン調査許可証だ。我々はその護衛として同行する。通してくれ」


 騎士団員達はまだ驚いていたがバーンの顔を見て大体察した様だ。

 調査許可証を確認し、中へ通す。


「確かに確認致しました。どうぞお通り下さい」


 そう言ってバーン達を見送るが、明らかにバーンを睨みつける者もいた。


(だよな……すまん……)


 心の中で謝りながら軽く頭を下げつつ、バーン達はダンジョン内部へと入っていく。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「わぁ……すごいですね……」


 ダンジョンの内部は石で出来ており、びっしりと模様が刻まれていた。

 その模様がエメラルド色に光り、薄暗いダンジョンを幻想的にさせている。

 ライアーに続き石で出来た階段を下りると、広い空間にでた。


「ここは恐らく市場があった場所だ。吹き抜けになっていて、その階段から上に上がれる。二階はバルコニーみたいになっていて、そこにも店があったんじゃないかな。かなりの量の古い貨幣みたいなものが発見されてるんだ」


 その市場の中心を進むがかなり広い。

 天井も高く、崩れないのが不思議なくらいだ。

 壁にはいくつか人が何人か入れる窪みがある。

 古代人達はそこで商いをしていたのだろうか。

 バーン達はライアーに連れられ、さらに下に下りて行った。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「が、がはっ……貴様ら……いった……い」


 ダンジョンの外には五人の騎士団員達が警護に当たっていた。

 突然現れた二人組は騎士団員達が抵抗する間も無く、彼らを深い眠りへといざなった。


「どうするよー兄貴」


 茶髪のアサシンは相棒に問い掛ける。


「行くしかないだろう。やれやれ……」


 そう言って髪のない頭を掻くのは武道家のようだ。



 バーンの感じた悪意は、現実に存在した。


お読み頂きありがとうございます(´∀`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ