第三十九話:未練と想い人
第三十九話です。
よろしくお願いします。
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ギルドでキマイラのクエスト完了を報告した後に、ライアー教授について詳しく受付嬢から話を聞く事にした。
「そうねぇ……嘘つきねぇ……」
彼女……トゥルーは何か知っているようだ。
「あの人はね、遺跡の発掘でかなり有名だったのよ。あの人が発掘するといつも必ず凄い物がでるってね。例えばあなたがぶっ壊してくれたタイカ石あるわよね? あれもあの人が見つけたの」
トゥルーはなんだか嬉しそうに語る。
その様子からかなり親しいように感じた。
「あの……ライアーさんとはお知り合いなんですか?」
アリスが気になって聞いていた。
トゥルーはなんだか寂しい顔をしている。
「昔……ね、付き合ってたのよ」
(そういうことか……)
通りで親しげに話す訳だ。
もしかすると彼の発掘したタイカ石を壊したバーンに少し怒っているのかもしれない。
タイカ石は壊れても元に戻るのだが彼女は知らないようだ。
タイカ石に限らず特殊な力をもった魔石は破壊されても元に戻る。
物によって再生の時間にばらつきはあるが、長くて一年程度である。
原理は未だに分かっておらず、学者達を悩ませている。
トゥルーの見た目から歳は大体三十歳前後だろうか、となるとライアーも若い可能性が高い。
「ちなみにそれっていつ頃のことなんだ? ああ、付き合ってた時期じゃなくて、その……彼が偽装したのは?」
「んー、もう十年前になるわね」
十年、という言葉にバーン達は反応した。
ちなみにエリザにも昨日の夜、この旅での出来事や、魔王が八人いる事、アリスやマリアの過去の事などを話してある。
それにしてもまた十年前という時がバーン達の前に現れた。
もしかすると何かヒントになるかもしれない。
「十年前に彼は何を見つけたんだ?」
バーンの問い掛けに、トゥルーはなんだか照れくさそうに答える。
「言っても信じないでしょうけど……ああ、まぁ既に偽物だって言われちゃってるけどね。〝時空転送装置〟らしいわよ? 彼曰くね」
(時空転送装置……だと……?)
なんだか嫌な予感がする。
邪悪な、それでいて純粋な。
これは悪だ。
真っ黒な悪の気配をバーンは感じていた。
「……それってまだあるのか?」
「没収っていうか……破棄されたらしいわ。彼が作ったらしいから、お偉いさん曰くね。勿論彼は本物だったってずっと言ってたわ。それで私達もケンカが増えてね、なんだかギクシャクしちゃって……」
真偽はまだ分からない。
仮にそれが本物だったとして、取り上げてどうする気なのかも分からない。
彼に会って話を聞かなければならないだろう。
それが本物だったかどうか。
「彼は今どこに?」
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地図を描いてもらい、ギルドを後にする。
トゥルーはライアーによろしくと言っていたがかなり長い間会っていないようだった。
だが印象からまだ未練があるようにも思える。
「まだ、好きなんですかね……」
綺麗に整備されたアーヴァインの街を歩きながら、同じことを考えていたアリスが呟く。
マリアも同じ印象を受けていたようだ。
「かもな、ライアーがどう思ってるかはわかんねーけど」
確かにそうだ。
それに彼はこの十年間かなり厳しい立場にいた筈だ。
彼女の事を考える暇があったか分からない。
「このクエスト……出されたのは三ヶ月前ですね。一応受理されたという事はクエスト内容に偽りがないという事ですので大丈夫かとは思いますが……」
疑問はまだある。
何故依頼を受けた冒険者を断るのか、この国で三ヶ月前にダンジョンが発見されたならば、その時まだ騎士団団長だったエリザが知らないのはおかしい。
ダンジョンは所謂宝の山だ。
国が管理し国益のために使われるケースがほとんどである。
新たなダンジョンでないとすればそれはつまり……。
「もう一度時空転送装置があったとされるダンジョンに入ろうとしてる可能性が高いな。確か再調査にはかなり面倒な申請が必要な筈だ。それに加え資金集めや協力者探しに時間が掛かったのかもしれない」
エリザが頷く。
その時空転送装置が発見されたとされるダンジョンはエリザが団長になる前の話であり、エリザは関知していない。
「再調査自体禁止している国もあります。勿論個人的な再調査に限定されますが……アーヴァインでは一応認められてはいるものの、個人での再調査にはかなりの費用とそれを保証する人物が必要です。それに付随して申請に時間が掛かります」
ましてやライアーは詐欺師呼ばわりされている。
通常より申請に時間が掛かったとしても当然の話だ。
だからこそ失敗は許されない。
ライアーが冒険者を選別するのも仕方がないだろう。
十年という月日はあまりにも重すぎる。
「お金目当ての冒険者で、弱い人じゃ務まらないって事なんですかねぇ?」
「多分そうだな」
残りの話はライアー自身に聞くことにして、四人は先を急いだ。
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地図に記された場所はお世辞にも綺麗とは言えない古びた屋敷だった。
かなり広そうだが、手入れがなされていない庭が今の彼を表しているようだ。
敷地に入るとより不気味に感じ、アリスがバーンの腕にしがみついていた。
玄関の扉をノックし、反応を待つ。
「……誰だ」
その声は低くく、まるで〝誰も信じない〟というような意思が込められているように感じる。
「依頼を受けたバーンってもんだが、とりあえず開けてくれないか」
その言葉に反応して扉の鍵が開けられる。
ガチャッ……ガチャッ……ガコッ……ガンッ……
かなり厳重に鍵を掛けているらしい。
やはり用心深い人物のようだ。
ギィッ……
「入れってくれ……」
ライアーは、まるで世界に絶望しているような顔をしていた。
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