第三十四話:独白と勧誘
第三十四話です。
よろしくお願いします。
改稿してたらストックがピンチ(;゜Д゜)
彼女が目を覚ました時には辺りは薄暗くなっていた。
馬車の中で眠っていた彼女は少しづつ思考が回っていく。
(ここは……)
朧げだが記憶が蘇ってくる。
一つの単語が明確に頭に浮かんだ。
「バーン様っ!」
「ぎゃっ!?」
ガバッと身体を起こし、叫んだ彼女にアリスが驚き変な声を出す。
マリアも驚いていたが、声を出さずにアリスと抱き合っていた。
「大丈夫かよ……お前……」
マリアが恐る恐る声を掛ける。
いきなり飛び起きて〝バーン様〟と叫んだ彼女が何を考えているのかが分からなかったからだ。
「あ、ああ、すまない……ここは……?」
「馬車の中です。貴女がアーヴァインの人なのは紋章で分かったので……私達も丁度向かっている最中だったから一緒に連れて行こうってバーンさんが……」
〝バーン〟
その単語に彼女は敏感に反応した。
やはり夢ではなく、彼はここにいるのだと。
「バ、バーン様は何方にっ!?」
「ひゃいっ!? ま、前に居ますけど……」
彼女は身体を捻り、振り返る。
そこに、憧れた人物がいた。
バーンは後ろの騒ぎには気付いていたが、馬車の操縦に集中している。
「あ、あの……」
おずおずと声を掛けた。
心臓が高鳴り、顔が赤面する。
アリスとマリアは黙って見ていたが、マリアが気を利かせてバーンと操縦を代わろうとしていた。
彼女は何か並々ならぬ想いがあるのだろう。
バーンはそういう女性を引きつける一種の魅力があるのは自分の経験で分かっていた。
バーンにマリアは声を掛ける。
「バーン、代わるぜ。話を聞いてやんなよ」
「ん? 分かった」
操縦を代わり、バーンが後ろにやってくる。
彼女の前に座り優しい目で見つめていた。
心地よい声で彼は語りかける。
「バーンだ、よろしくな」
あ……と声が漏れる。
緊張してしまい、言葉が出ない。
何とか言葉を絞り出す。
「わ、私はエリザと申します。助けて頂きありがとうございます……」
何とか言い切ることができた。
まだ、心の整理がつかない。
そんな彼女の名前を聞いてマリアが驚く。
「エリザって……アーヴァインってことは八英雄の一人〝消失のエリザ〟か!?」
ああ、やはりそうなるのだ。
アーヴァインでエリザと言えばそうなる。
分かっていることだが嫌になる。
彼女は伏し目がちに肯定した。
「ああ……そのエリザだ……」
バーンは歯切れの悪いエリザの態度に何かを感じる。
哀しげな目がそれを物語っていた。
「そう呼ばれる事が……嫌なのか?」
ああ……この人は……。
エリザの目が涙で濡れる。
今まで抑えていた感情が嗚咽に変わる。
子供のように泣きじゃくってしまう。
「うっ……うぅぅぅ!」
バーンは少し驚いたが、そんな彼女の頭にそっと手を置く。
きっとそうさせる何かがあると思ったからだ。
バーンのそれは癖のようなもので、相手を安心させる時によくそうしていた。
彼女は少し驚くが、その手を愛しむように両手で包むと自分の頬に当てる。
涙がバーンの指先に触れた。
やはり、何かを抱えている。
その行動は誰かを頼りたい一心に見えた。
「話せば楽になるぞ? 聞くよ、時間はある」
「……はい」
エリザは今までの事、自分の想いを語る。
そんな中バーンの存在を知り、何故だかは分からないがバーンに心の中で助けを求めた。
そして、それは正しかったことを伝えた。
「貴方こそ、真の勇者だ。確信した」
エリザはそう言って凛とする。
普段の彼女はきっとこうなんだろう。
そうやって、本来の自分を隠してきた。
責任感の強さが逆に彼女の心を弱くしてしまったのだとバーンは感じた。
だからこそ、彼女の苦しみを取り去ってあげたかった。
「なら、一緒に行くか?」
「えっ……?」
あっさり言われたその一言を彼女は受け入れたい。
このままこの人について行きたい。
この人のために闘いたい。
しかし、やはりできない。
彼女を取り巻く状況はそれだけ彼女を締め付ける。
それを理解し過ぎていた。
「嬉しいですが……私は……」
「よし、アーヴァイン王と話をしないとな」
「えっ!? あ、あの私の話を聞いて頂いてましたよね?」
バーンは〝なんで?〟という顔をしている。
エリザは再び自分の現状を語る。
しかし、バーンは諦めない。
「だから、話すんだろ? 流石にいきなり連れ去ったらやばいからな」
「あー……エリザ、諦めろ」
「こうなったらバーンさんは何言っても聞く耳持ちません」
二人が呆れながら言うのを聞いて、バーンは照れながら微笑んだ。
「まぁ……そういうことだ。諦めて一緒に来いよ……エリザ」
名を呼ばれ、迷いが吹き飛ぶ。
「よろしくお願い致します……バーン様」
読んで頂き感謝です(´∀`)!
 




