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第二十八話:商業と壊滅

第二十八話です。


よろしくお願いします。


楽しく書かせて頂いております(´∀`)ノ

 

 商業の町ワーク。


 その名が示す通り、ここはアーヴァインの経済の中心である。

 アーヴァインの持つ領土の中心にも位置し、物流はワークを通り各地へ流れていく。

 だが、富裕層が多い反面貧困層も増えており、二面性を持った町と言える。


 ワークを小高い丘から見下ろす。

 建物の窓が光を反射し、キラキラ輝いていた。

 これから待つあの町での一瞬に、心を躍らせたアリスは大声を上げる。


「わーっ! きれいな町ですね!」


 僅かしか滞在しないであろうその町は、自分の故郷、アトリオンにはない魅力に溢れていた。


「ま、アーヴァインの中心だからな。その分治安も悪いぜ」


 マリアはアリスを現実に引き戻す。

 もーっと言ってアリスは馬車の中でころんっと横になった。

 マリアの笑い声が馬車の中で弾ける。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 一行は馬車とグランを厩に預け、町に入る。

 綺麗な店が所狭しと並んでいた。

 アリスが目を奪われる店も。


「……じゅるっ」


「揉むぞ」


「マリアさんは前歩いて下さい!」


 アリスは最後尾に移動する。

 以前の事もあってか、かなり警戒していた。


 町の風景を眺めながら冒険者ギルドに向かう。

 青を基調とした建物が多い。

 屋根はオレンジ色で、明るい印象を受ける。

 そんな中、マリアは町をスイスイ進んでいく。


「マリア、ひょっとしてきたことあるのか?」


「ああ、というよりここを拠点にした時期もあった」


「そうなんですね。マリアさんはずっとこの大陸にいたんですか?」


「いや、あたしは北のイグル出身だよ。多分な」


 多分、というのは両親がわからないためだ。

 実際育った教会がイグルにあるというだけで、実際は分からない。


「バーンさんはヴァンデミオン、私はアトリオン、マリアさんはイグル、バラバラなのに出会いってすごいです」


「本当だな。二人に会えて良かった」


「バーン……こっぱずかしい台詞言うくせになぁ」


「う、うるさいよ」


 ばつが悪そうにバーンは腕を組む。

 マリアはバーンの顔を指でつつき、からかっていた。

 アリスもニヤニヤ笑っているのを見て、まぁいいかと思うバーンであった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 しばらく歩くと冒険者ギルドに着いた。

 それなりの町なら必ずあるその建物は、やはり大体同じ作りではあるが、町の雰囲気に合わせた色をしている。

 中に入り、受けたクエスト『アベイル盗賊団の壊滅』についての詳しい話を聞く事にした。


「助かるわー! 噂の勇者候補様じゃない! はい、これ情報。ちょちょいのちょいね!」


「……ああ」


(軽いなこの人……若くないのに)


 アベイル盗賊団が根城にしているのは、ワーク城。

 町の郊外にある、以前に使われていた城だ。

 廃墟と化した現在は誰も近寄らないという。

 大体四十名程とのことだ。


「夜……いっぱいいるわよ?」


「なんであんた嬉しそうなんだ……」


 ニヤニヤしながら話す受付嬢に文句を言いつつ、ギルドを後にした。

 宿を借り、荷物の整理や食事をし、夜になるのを待ち古城へ向かった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「いっぱいいますね……」


「だな」


「余裕だろ」


 少し離れた場所から、様子を伺う。

 情報通り彼らはそこにいた。

 しかし、人数が違う。


「倍はいるなぁ、突っ込むかぁ」


「いいねぇ……こいつを使うか」


 マリアがニヤァ……と笑い腰から仕込み棍をだす。

 名前を付けたらしい。


「あたしの〝戦慄会心丸〟が疼くぜ」


 絶望的ネーミングセンスだった。

 アリスも負けずに杖を出す。


「ふふふ、回復は任せて下さい。私の〝ラブリー☆ステッキ〟が火を噴きます」


 火を噴かれても困る。

 そしてやはり、絶望的ネーミングセンスだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お頭ァ! 酒がそろそろ無くなりますぜ!」


「なにぃっ! 馬鹿野郎! 誰か盗ってこいや!」


 アベイルは盗賊団のリーダーとして君臨していた。

 腕っ節が強く、並みの冒険者では歯が立たない。

 そんなアベイルを団員は尊敬していた。

 しかし、それも今夜までだった。


 いきなり現れたその男に、団員は三、四名程で近寄って行った。

 近寄った全員が一瞬で倒れる。

 見ていた団員は一斉に武器を取った。

 すると、今度は後方から叫び声と女の雄叫びが聞こえる。


「戦慄会心丸がぁぁぁぁ! 血を求めるんだよぉぉぉぉ!」


 次々と吹き飛んでいく団員達。

 鉄の棒がしなりを上げ、襲い掛かる。

 アベイルは何が起きたのか分からない。

 前からくる男も次々と団員を殴りつけ、一撃で数人が吹き飛んでいく。

 たまに男の体が光っている。

 恐らくどこからか、補助魔法をかけているのだろう。

 遠くから「うふふふふ!」と笑い声も聞こえる。

 それが怖い。

 気付いた時には自分を含め、数人しか残っていなかった。


「な、なんなんだお前らはぁぁぁぁあ!?」



 それが、彼がアベイル盗賊団団長として残した最後の言葉になったのだった。


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