第二十六話:感謝と別れ
第二十六話です。
よろしくお願いします。
キリがいいので短め(´¬`)
イリグを旅立つ朝が来た。
三人は昨日とは全く違う気持ちを抱いている。
昨日まで表面上は全くみえないが、僅かなズレがあった。
しかし、今日は違う。
「おはよう……」
「おはようございます……」
「おはよ……」
三人は顔を合わす。
少し照れくさい気もしたが、それより嬉しかった。
顔を合わせ笑う。
準備を整え、部屋を後にする。
ハンクがロビーで待っていた。
「ハンクさんっ! お世話になりましたっ!」
「ありがとよ、いい宿だったぜ」
「なら良かった、美人二人に囲まれると照れるなぁ」
「ハンクさん、助かったよ。礼を言う」
「あんたなら……魔王、倒せるよ」
ハンクが差し出した右手をバーンががっちり掴む。
目線を合わせ、頷いた。
「達者でな!」
ハンクと別れ、ダッフィの店へ向かう。
ダッフィは昨日のように外にいた。
よく見ると親方と闘技大会の実況をしてたシギョーもいる。
「おーう! チャンピオン! 会いたかったぜぇ!」
「なんでここに……」
「俺とダッフィはダチなのよ! 旅立つっていうから一言いいたくてよっ! いいもん見せてもらったぜ、ありがとな」
「そっか、こっちこそ感謝だ。おかげでマリアに会えた」
「おー! マジ驚いたぜ! でもよかった!」
親方は馬車の最終調整をしている。
最後まで余念がない。
黙々と作業し、やっと満足いったようだ。
「これならしばらく大丈夫だな。おう! 待たせたなっ! できたぜ!」
「ありがとう親方。昨日会ったばかりなのに」
「いーや、俺はお前さんこそが勇者だと思ってる。だから生半可な仕事はできねぇっ!」
「親方、あんがとな」
「親方さん、ありがとうございましたっ!」
「いいって、いいって! がははっ!」
荷物を馬車に積み込む。
かなりの量だが、すんなり入った。
本当にいい馬車だ。
グランは既に繋がれており、黒い巨体が朝日を浴びて輝いて見える。
「いよいよ行っちまうんだな」
「ダッフィさん! 本当にありがとうございましたっ!」
「大切に殴るぜ」
「グラン、大事にするよ。ありがとな」
「役に立ててよかった。寂しくなるな……あんたら存在がでか過ぎるぜ」
みんな笑い出す。
一人ひとりと握手を交わし、馬車に乗り込み三人は振り返る。
「また! 絶対来ますからっ!」
「またな〜!」
「じゃあな、必ずまた来るよ」
数日の間だったが、思い出深い町になった。
闘技大会で、アリスの因縁を断ち切り、マリアとの死闘を超えて仲間になった。
様々な町の人達との出会いもあった。
そして、心を一つにできた。
必ずまた来ると、三人は心に決めた。




