第二十四話:馬車と戦慄
第二十四話です。
宜しくお願いします。
今日も三回更新(´∀`)
昼上げるのはちょっと長いです(´¬`)
「マ、マリアさん! 私の後ろに立たないで下さい!」
「いーじゃねーかよー、なんなら揉むか?」
「揉みませんっ!」
自分で胸を持ち上げて見せつけてくるマリアに、アリスが一喝する。
あの後も料理屋を見つける度に立ち止まるアリスの胸を、何度もマリアが揉みしだいていた。
自業自得だと言えなくはないが、マリアも少しやり過ぎたようだ。
ちなみにバーンはそれに関しては何も言わず止めなかったが、さすがに衆目に晒されるのでマリアを窘める。
「マリア、その辺にしとけ」
「はいはい、わかったよ。アリスの胸はあんたのだもんな」
「ちがっ!?」
「マ、マ、マリアさんっ!」
「ちなみにあたしのもあんたのだぜ……?」
「行くぞっ!」
「行きましょうっ!」
「なんだよー連れねーなー」
寄せなくてもすごい胸を寄せ、迫るマリアに堪らず逃げ出した。
そんなことをしていたせいか、かなり時間がかかってしまい、もう昼時のイリグは混み合っていた。
しばらく歩くと、ダッフィから紹介された馬車屋をやっと見つける。
大小様々な馬車が所狭しと並べられていた。
「いらっしゃーい! 見てってくんなー」
「あ、こんにちはっ! あの、馬車が欲しいんですけど、どんなのがありますか?」
こういう交渉や、誰かに話を聞く時などは全てアリスに任している。
いつも元気で明るい挨拶と、見た目の良さ、その性格で、初老の男性のハートを撃ち抜いてくれるからだ。
「おー! 下見じゃなく即日かい? ありがてぇなぁ! にしても嬢ちゃんかわいいねぇ……すぐ案内するよ、ついてきなっ」
「あ、ありがとうございますっ!」
今回も無事撃ち抜いたようだ。
マリアはニヤァ……と笑っている。
既に値切った未来が彼女には見えたようだ。
「お嬢ちゃん達は冒険者かい……って、あ、あんたら! 優勝と準優勝が二人でっ!?」
アリスに夢中で二人の事は眼中に無かったようだ。
パーティメンバーは一人しかでれないルールがあったので、経緯を説明する。
運営側にも一応了承は得ているので問題はなかった。
「な、なるほど……しかし、驚いたぜ。あんなすげー試合は何十年振りよ」
「楽しんでもらえたなら何よりだ」
「勿論だ! 昨日は興奮して寝れなかったぜ」
マリアがニヤァ……と、再び笑っている。
未来を確信したようだ。
馬車にも様々な種類がある。
二人乗りから集団で乗るものや、屋根の有る無し、荷物を運ぶか人を運ぶかなど多種多様だ。
バーン達が求めているのは集団で、且つ屋根があるものだ。
グランならば数人乗りの馬車でもスイスイ進むだろう。
アリスはそれを親方に伝える。
「だったら、えーっと……コイツだ! カバードワゴンタイプ。大体六人乗り位かな、荷物入れて」
「おー、かっけぇじゃねーか」
「わぁー……よく寝れそう……」
「悪くないな」
若干一名感想が違う気がするが、いい馬車だった。
茶色い土台に四つの大きな車輪。
木でできているが部分的に鉄で補強してある。
白い皮でできた屋根が半円を描いていており、馬車の操縦席の上にも屋根があって、雨の日でも濡れないように配慮されていた。
中を見る。
座席には毛皮が貼られ、十分寝られる広さがあった。
横幅は四メートルはあり、確かに六人乗っても問題ない。
屋根の内側にはヒモに吊るされた皮袋がいくつかあり、収納もできる。
さらに、座席を開けるとそこにも収納スペースがあった。
床には毛皮が貼れないので無いものの、隙間なく打たれた板が、職人の技術を物語る。
「これだけでも凄いのに今回はおまけをつけちゃう! この大きな鍋! さらに! ナイフに今回は特別! 丈夫で頑丈な紐まで付けて、いいですか? …………二百十万五千ゴールド!」
途中から口調と声が変わっている。
それにしても良いものはやはり高い。
いずれ仲間を増やすのだから大きい方がいいのだが、バーンのへそくりを出しても足りない。
「みなさーん! まだ、話は終わっていませんよー! 今回はさらに特別! 闘技会の優勝を記念してなんと! …………百万ゴールドでのご提供です!」
「「「うおおおおおっ!!!」」」
思わず拍手してしまう。
マリアもさすがにこれ以上は値切らなかった。
「い、いいんですかっ! 親方っ!」
「当たり前よ! あんないいもん見せられたらタダでくれてやりたいが……バレたらかーちゃんに殺されちゃうから。百万ゴールドありゃなんとか誤魔化せる」
「ありがとう、親方。助かるよ」
「何度も言わせんなぃ! さ、かーちゃんにバレねぇうちにやっちまおう。いつまでこの町に?」
明日の朝出ることと、馬はダッフィの所にいることなどを伝える。
親方が今日ダッフィの所に運んで、明日出れるように調節してくれる事になった。
親方に礼を言い、料金を払って馬車屋を後にした。
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イリグの大衆食堂。
港町だけあり、海鮮料理がオススメだ。
とれたて新鮮な海の幸が人々の胃袋を満たす。
しかし、満たすにも限度がある。
はふっ……むしゃむしゃ……んむっ!……ごくごく……ぷはぁっ……もぐもぐもぐ……はむはむ……
「マジかよ……」
「マジだ」
アリスの食べっぷりがマリアを戦慄させる。
宿では普通なのだ。
料理屋がヤバい。
リミッターが外れるのだろう、彼女の手は止まらない。
二人はアリスの食べっぷりを、やはり眺めることしかできなかった。
「お腹……いっぱいですっ!」
「マジかよ…………」
「よかったな、アリス」
「はいっ! 満足ですっ!」
料金が万単位だったのは言うまでも無い。




