第二十三話:馬と胸
第二十三話です。
よろしくお願いします。
感想貰えたら十話くらい一気に書けそうです(´¬`)
宿を出て、まずは武器屋に向かう。
昨日の約束通り、ダッフィに会いに行くためだ。
武器屋が見えてくると、既にダッフィが外にいる。
どうやらバーン達が来るまで外で待っているつもりだったみたいなので、早めに来て正解だった。
ダッフィがこちらに気付く。
「あ、おはよう! わざわざありがとな!」
「おはようございますっ! ダッフィさんずっと外にいたんですか?」
「なんか、そわそわしちまってよ! 気にしないでくれ、勝手にやってただけだ! さぁ、中に入ってくんなよ」
中に入り、早速バーンはダッフィに話をする。
自分が勇者の息子であることと、この話は誰にも言わないで欲しいことを。
ダッフィはそれを静かに聞いていた。
「そうか……やっぱり……」
満足した様子の初老の男は立ち上がり、綺麗な杖を持ってきた。
黒い持ち手に白い木で作られ、持ち手の先端には赤い宝石が銀の爪によって固定されている。
かなり高級そうに見えたそれを、アリスに差し出す。
「うちで扱ってる中でも最高の杖だ。これを使えば触れずに回復や補助魔法をかけられる、言わば増幅装置だな。使ってくれアリスちゃん、あんたのおかげで俺は恩を返せる」
「そ、そんなっ! 受け取れないですよっ!」
アリスは両手を振って断るが、ダッフィの意思は固いようだ。
貰ってくれと頼み込んでいる。
「頼む、感謝の気持ちだ! これから旅に行くなら絶対役に立つ。少しでも力になりてぇんだ」
「アリス、受け取ってやんな。おっさんは損得抜きで話してる。受け取るのが筋だ」
マリアに言われアリスは納得したのか、丁寧に頭を下げ杖を受け取った。
「わかりました……大事に使いますっ! ありがとうございますダッフィさん!」
「ありがとな、アリスちゃん。あんたも、マリアちゃん」
「けっ! よしてくれ〝ちゃん〟なんてよ。あたしはもう二十歳だよ」
半笑いで手をヒラヒラさせるマリアにダッフィは感謝し、必要な物があれば何でも持って言って構わないと言う。
「マジかぁ? じゃ、見ちゃおっかねぇー」
マリアが店を物色し始めているのを笑顔で見つめるダッフィは、本当に嬉しそうだ。
アリスも貰った杖を嬉しそうに眺めている。
口が開いて涎が出ている気がするが、気のせいだろう。
余程嬉しかったようだ……。
その様子を嬉しそうに見ていたダッフィが、これからどうするのかを尋ねてきた。
「まずは首都アーヴァインを目指すよ。まだまだ仲間が必要だし、八英雄の一人に会っておきたい」
「なるほどな……じゃあやはり馬車がいるな。持ってないだろ?」
「持ってないが……」
「来てくれ、見せたいもんがある」
涎を垂らすアリスと笑いながら物色するマリアを置いて裏口から外にでる。
そこには厩があり、二頭の馬がいた。
古いが、大きい馬車も見える。
「俺が普段大事にしてる馬だ。自慢じゃないがどっちもタフでいい馬だぜ。どっちか貰ってくれ」
「ダッフィさん……しかし……」
「念のため二頭飼ってるんだ。怪我とかした時に備えてな、足は重要だからよ。俺はまた馬を買えばいい、
バーンさん達は先を急ぐんだろ? 貰ってやってくれ。頼む」
そう言ってダッフィは頭を下げる。
彼は、今日のために二頭の馬を飼ってきたような気がすると言って笑った。
バーンは頷き、黒い雄馬を選んだ。
力強い目つきに、頑丈そうな体が頼もしいグリージアン種の馬だった。
馬にもいくつか種類がある。
一般的に馬車に使われるのはハルニー種と呼ばれる中型の馬で、穏やかで従順。
また、非常にタフであることも魅力の一つである。
バーンが選んだグリージアン種は大型の馬で、大きい馬車でもなんなく引くことができる力がある。
見た目が大変美しく、筋肉の盛り上がりがその力強さを一層引き上げる。
たてがみも特徴で、若干ウェーブし、長く伸びたそれが風に靡く姿は非常に美しい。
他にも足の速さに特化したガラブレッド種や、貴族に人気のベリシュロン種などが存在する。
「バーンさんにぴったりの馬だ。名前はグラン、昔の言葉で王って意味だ」
「グランか、こいつに相応しい名前だな」
バーンはグランの首を撫でる。
グランはブルルッと鳴いたあと、バーンの腕にすり寄っている。
「ははっ! もうバーンさんになついちまった! 流石だぜ」
「よろしくな、グラン。お前に俺達の旅を任せるよ」
グランは頭を上下に振り、まるで頷いているようだ。
実際は遊んで欲しかったのかもしれないが。
「出発はいつだい?」
「明日にするよ。馬を貰えたから助かった。今日馬車を買うことにする」
「すまねぇな、馬車もやれたらいいんだが、あんなオンボロしかなくてよ」
「大丈夫だ。賞金があるから買えるよ。そんなことよりダッフィさんのおかげで早く出れそうだ。ありがとう」
「そりゃこっちの台詞なんだよ! ははっ!」
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やっと恩を返す事が少しはできたかな、とダッフィは幸せそうだった。
そんな彼と一旦別れ、三人は馬車を見に行く。
その道中、バーンがマリアの腰にある物に気付く。
「マリア、なんだそれ?」
「ああ、あのおっさんに貰った……」
マリアがそれを抜き、軽く振ると一瞬で棒になる。
仕込み棍だ。
中には鎖が入っており、マリアは慣れた手つきで解体すると腰に戻した。
「結構慣れてるな? 使ってたのか」
「まぁな、複数相手ならこっちもアリだ」
「確かにな、それにしても……」
アリスは杖に頬ずりしている。
恍惚の表情を浮かべ、あちらの世界から帰ってこない。
おもしろいから放っておいたが、そろそろ引き戻さないとまずいかもしれない。
バーンがマリアに目配せすると、マリアはニヤァ……と笑い、アリスの背後につく。
そして……
もにゅんもにゅんと盛大にアリスの胸を揉みしだいた。
「きゃああああああっ!?」
「帰ってこーい!」
「や、やめてくださぁい! 戻ります! 戻りますからぁっ!」
そうじゃないんだけどな、普通でよかったんだけどな……と、バーンは思ったが、良いものが見れたので黙っていた。
「おっぱい揉まないでくださ〜〜い!」




