第二十一話:酒と話
第二十一話です。
よろしくお願いします。
ただただ感謝です(´∀`)ありがとうございます。
表彰式が終わり、大歓声の中闘技大会は終幕した。
賞金百万ゴールドを受け取ったが、それ以上に大切なものをバーン達は手に入れていた。
「んで、これからどうするんだ?」
すっかり元気になったマリアが二人に問いかける。
「そうだな、とりあえず疲れたから今日は宿で休む。明日までタダで泊まれるから、明日は町を探索して情報集めだな。今後、どのルートで首都アーヴァインに行くか決めないといけないってのもあるな」
「そうですね、あと馬車も借りないとですし」
「馬車かー、あたしの賞金と合わせても百五十万だからなぁ……買えねぇな」
この世界の主な移動手段は馬車である。
馬車は安いもので数十万ゴールドで買うことができるが、問題は馬そのものの値段である。
馬は安くても三百万ゴールドはするため、バーン達の所持金では買うことができなかった。
自分の馬車を持つことは冒険者にとって一種のステータスである。
それ以外にも、町から町までの家として重宝される。
勿論、貸し出しの馬車を借りても良いのだが、貸し出されている馬車は非常に質素で屋根もない上に、馬の能力も低く速度も遅い。
何よりこれからウーナディア大陸を縦断し、世界を周るとするのなら、やはりいずれは自分達の馬車を持たなければならないだろう。
「な、なぁ! あんた!」
バーン達が宿に向かいながら思案していると、突然声を掛けられる。
声を掛けてきたのは武器屋を営むダッフィであった。
ダッフィは神妙な面持ちでそこに立っていた。
「や、やっぱり……あんた……」
「その話はもうちょっと待ってくれないか? 大事な話だからよ。明日、あんたの店にいくよ」
「わ、わかった!待ってるよ! あ、あと優勝おめでとう! 強いな……本当に強い……! あの時の勇者、そのままだ!」
ダッフィは興奮が抑えられない。
やっと、やっと勇者に恩返しできるということに。
「ありがとな、また明日」
「ダッフィさん、ありがとうございました!また!」
三人はダッフィと別れ、宿へと戻って行った。
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部屋で三人は買い込んだ酒を飲む。
新たな仲間の歓迎会だ。
上質なぶどう酒や、この地方の蒸留酒などで祝杯をあげる。
「「「かんぱーい!」」」
マリアやアリスが昔話を互いに話し、お互いに励まし合う。
そんな姿をバーンは笑顔で見ていた。
「さて……」
「それじゃ……」
二人が口を揃える。
「あんたの話を聞かせな」
「バーンさんの話が聞きたいです」
酒が入っているせいで頬は赤らんでいるが、二人は真剣な顔でバーンを見る。
バーンは、ふぅ……と息を吐き、話し始めた。
「俺は、八代目勇者ディーバの息子だ」
二人に驚きはない。
これまでの経緯や、その強さで分かっていた。
騎士でありながら魔力を体に宿し、その力はもはや人のくくりでは測れない領域に達している。
人はこれを〝勇者〟と呼ぶ。
「アリス、話すのが遅れてすまなかった。本当はすぐにでも言うつもりだったんだが……」
申し訳なさそうに言うバーンに、アリスは首を横に振る。
「いいんです、大事なことですから。それに、まだバーンさんとパーティを組んでからまだ数日しか経ってないです。早いくらいですよ?」
その言葉に安心し、バーンは続けた。
「ありがとな……俺は親父……ディーバの相方、戦士ジークに育てられたんだ」
「マジか」
初耳のマリアは少し驚いている。
それはそうだろう。
ジークはもはや冒険者達の中では伝説になりつつある。
世界もあの日、ヴァンデミオンが消えた時にはジークや、勇者のパーティの狩人ギリーや僧侶リリーを探した。
しかし、その足取りが全く掴めなかったことから三人ともヴァンデミオンに居たのではないかという結論に至ったのである。
実際は三人ともまだ存命であるが、実際どこにいるかは分からない。
「ギリーやリリーが生きてるのは確かなのか?」
「ああ、ジークは手紙でやり取りしてたらしい。偽名でな。二人は結婚したが、子宝には恵まれなかったそうだ」
二人は驚きを隠せない。
また、今いる場所は分かっておらず、ある時を境に手紙のやり取りもできなくなったらしい。
「ああ、手紙が途絶えたのは今から十年前だ」
「えっ……それって……」
「アリスの親父さんが行方不明になった時期と重なるんだよな。おかしな付合だ」
バーンは話を戻す。
ジークには闘い方や、魔物に対する知識、世界情勢などを教わったという。
自分が勇者の息子であることも。
そしてもう一つ、バーンには隠していた事があった。
「後は、俺の魔法についてだな」
「あの時……謝った訳が聞ける訳だな」
騎士では通常魔力を持たない。
そのバーンが魔法を使えるということは既に職業の枠を超えている。
それを軽々と晒すわけにはいかなかった。
自分が特別な存在だと周りに言うようなものだ。
さらにバーンの魔法は珍しく、使えばそれがどういう事なのかすぐに分かってしまう。
決勝戦でマリアの蹴撃は確実に当たるはずだった。
しかし〝すり抜けた〟のだ。
直後バーンの「わりぃな」という台詞から察するに、何かをしたことはマリアにも分かっていた。
「あの時俺は時空を捻じ曲げた」




