第十九話:拳と魔力
第十九話です。
よろしくお願いします。
|д゜)チラッ ちょっと短いですが、キリが良いので
お互いに拳を固める。
マリアの体からは紫色のオーラが漂い、まるで陽炎のように揺れていた。
二人の視線は恋人同士の様に見つめ合い離れない。
この試合で初めてバーンから仕掛けた。
バーンの豪腕が空を切るが、紙一重で躱していくマリアに焦りが見える。
(こいつ……剣だけじゃないってのは本当みたいだなぁ!)
攻撃に転じたいが、バーンの動きがそれをさせない。
バーンはカウンターを入れらないように鋭く、疾い攻撃を繰り返す。
(だったら!)
マリアは魔力を全身に纏い、バーンの拳を受けながら右の拳をバーンの腹部にねじ込む。
「ぐっ!?」
「おらぁ!」
一転攻勢となったマリアが懐に入る。
「くらいなぁっ! 魔天掌!」
左の拳に魔力を集中し、バーンの顎に下から掌底を見舞った。
「がはっ!」
バーンが後方に吹き飛ぶ。
鋭く疾い突きはマリアの力を物語る。
「バーンさんっ!」
アリスの声が聞こえた。
バーンは瞬時に空中で体を捻り、地面に着地する。
「はぁっ……はぁっ……」
「まだだっ!」
マリアが拳の魔力を放つーーーー
「魔放撃!」
まだダメージの残る体で、何とか横に跳んで躱す。
しかし、跳んだ方向には既にマリアがいた。
「もらったぁぁぁぁ!」
マリアの魔力を帯びた蹴撃が、バーンの顔面に迫る。
が、その時確実に当たると確信したマリアの攻撃が、バーンをすり抜けた。
(なっ!?)
「わりぃな」
「げっ……はぁっ……」
バーンの拳が右脇腹に突き刺さる。
骨が折れる音を鳴らしながら、マリアは数メートル吹き飛び左肩から地面に叩きつけられた。
「っ! ……あっ……くぅ……」
マリアは脇腹を抑えながら起き上がろうとする。
口からは血が流れ一撃で凄まじいダメージを受けたことが分かる。
「やめとけ、折れてる」
蹴撃に魔力を集中していたため、バーンの拳をモロに受けていた。
マリアは声を絞り出しながら笑う。
「い、嫌だね……こんな……楽しいのは……そうないよ……」
「マリア……」
「ははっ……同情か? 舐めんな! あたしは……闘うことでしか、自分を表現できない。それ以外のやり方を知らない。ただ! 強いヤツと闘いたいっ!」
口から血を流しながらマリアは叫ぶ。
「闘っている時だけが! 生きていることを実感できる! まだ、あたしは生きている!」
マリアが力の限り叫ぶ。
その目は言う通りまだ死んでいない。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
残ったありったけの魔力を滾らせる。
「いっ……くぜぇっ!」
「バカヤロウが……」
バーンの全身から魔力が溢れる。
できれば使いたくなかった。
しかし、この魔拳使いは本気を出さなければ止まらない。
「はっ……だよな、感じてたぜ。ずっと、あんたの中から漂う……すげぇ魔力をな」
「すまねぇ、理由があってな……」
「いいさ……さぁ……ヤろ?」
瞬間二人は全力で殴り合う。
拳と拳がぶつかり合い、血が飛び散る。
観客達は、もはや言葉を失っていた。
血飛沫を上げながら、それでもマリアは止まらない。
そして、マリアの拳がバーンの顔面を捉えた。
ぺちっ
「はっ……ちきしょう」
マリアの体が崩れ落ちる。
バーンはそれを抱きかかえた。
マリアの魔力は既に尽きていた。
「はぁっ……はぁっ……あたしの負けだ……」
「勝者っ!バァァァァァァァァァァァァァァン!」
観客達は忘れていた声を取り戻した。




