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第十八話:激昂と勧誘

第十八話です。


よろしくお願いします。


やっぱり反応を頂けるとやる気でますね(´∀`)

頑張りますヾ(*´∀`*)ノ

 

 ワァァァァァァァァァ……!


「さぁ……! 今! 伝説が始まる! その目に焼き付けろ! 決して忘れんなよぉぉ! 冒険者闘技大会……けっしょぉぉぉせぇぇぇぇぇん! 開幕だぁぁぁぁぁぁあ!」



 ワァァァァァァァァァァァァァァァアアア……!



「東の門より、魔拳使い! その体に男どもは釘付けだぁぁぁぁぁ! 金色を出した女! マァァァァァァリィィィィアァァァァァァァァァ!」


 マリアが現れる。

 その表情は目が笑っておらず、口角は限界まで引き上がり、そして体は前のめりに傾いていた。

 両手をダラリと垂らし、歩いてくる姿に観客がどよめいている。


「やっと……やっと……ヤれる……あはははは!」


 マリアはそんな観客の様子など意に介さず、激しく美しい声で鳴いた。

 シギョーも戸惑うが、自分の仕事を思い出す。


「そ、それでは西の門より! 伝説の再来か!? いや、もう超えている!? タイカ石と闘技場をぶっ壊した男! その双刀の巨剣は本物だった!! 騎士、バァァァァァァァァァァァァァァァァン!」


「バーンさん……がんばって!」


 アリスが観客席から祈りを捧げるように両手を組む。

 バーンがゆっくり歩いていく。

 マリアはそれをニタァ……と笑いながらじぃっと見ていた。

 両雄が闘技場で向かい合う。


「よう、またせたな」


「まった……まったまったまったまった! もうまてないぃ!」


 マリアの興奮が最高潮に達する。

 その様子を見て、バーンはやっぱりなと呟く。


「マリア……お前、戦闘中毒者バトルジャンキーだな」


「……ああ、そうさ」


 マリアは顔を伏せたまま答える。

 身体が小刻みに震え、抑えられない感情が溢れた。


「気付いた時にはこうだった! まぁどうでもいいよ、早くヤらせろぉぉぉ!」


 マリアの雄叫びが闘技場にこだまする。

 バーンは実況席のシャギーに目配せする。

 ーーーー早く始めろ、と。


「っ! それじゃあ始めるぜ! 決勝戦!」


 バーンは巨剣を抜く。

 マリアは魔拳を構える。


「レリィィィィィィィ……ゴオォォォォォォォオッ!」


 開始の合図と同時に、金属と金属が激しく衝突するけたたましい音が響く。

 それと同時に衝撃波が観客席を襲った。


「きゃっ!?」


 アリスは思わず腕で顔を覆う。

 目を開けると闘技場の中央で二人が拳と剣をぶつけ合っている。

 ギリギリと鋼が鋼を削りながら、互いに力を込める。


「あっ……はっはっ! たまんないねぇぇ!」


「……」


 不意にアリスが言っていたことを思い出した。


『あの人きっと寂しがり屋です』


 バーンが呆けていると思ったマリアが仕掛ける。


「何をぼさっとしてんだよぉ!」


「ちっ!」


 マリアは殆ど密着した状態から垂直に蹴りを放つ。

 ギリギリ躱したバーンの鼻先をカスって、蹴りは空を切った。


「そらそらぁ!」


 マリアの猛攻が続く。

 魔力を帯びた拳や蹴りをバーンは躱し、いなし、巨剣で防ぐ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「防戦一方だな……あの女、疾すぎる!」

「うーん、相性が悪いな」

「間合いが近すぎる!もっと離れろー!」


 観客から様々な声が飛んでいる。

 アリスは不安げな表情で闘いを見守っていた。


(バーンさん、本気になれてない。本気で切ったら死んじゃう。でも、本気にならないと勝てる相手じゃない!)


 アリスはぎゅっと拳を握る。


(でも……でも……きっとバーンさんなら!)


 アリスはバーンを信じ、目を逸らさず見つめていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 バーンが攻撃を防ぎ切ったところで、マリアが話しかける。


「なぁあんた……こんなもんじゃないだろ? その剣は飾りかい」


「……」


「おい、なんとか言えよ! 本気でやれよ!」


 マリアが激昂する。


「なぁマリア」


「あぁ!? なんだよ!」



「俺たちと、パーティを組まないか?」



「……はぁ?」



 マリアが呆然とする。

 その顔は口を開いたまま固まっていた。

 が、その体が震えだす。


「てめぇ……舐めてんじゃ……ねぇ」


 マリアの体から魔力が溢れる。

 紫色のオーラが彼女を包み、長い黒髪が靡いていた。


「俺は本気だぜ?」


 バーンは静かに言うが、マリアの怒りは最高潮に達する。


「死ね」


 地獄の底から出てきた様な声が、バーンを拒絶した。

 マリアが体を前に傾ける。

 そのまま倒れる寸前、地を這うような姿勢でマリアが駆け出した。

 そしてーーーー


 魔拳がバーンの顔面を捉えた。


 ドゴォォッ!


「ぐうっ!」


 バーンの身体が吹き飛び、立ったままの体勢で、床に叩きつけられた。


「バーンさんっ!」


 観客席のアリスは叫ぶ。

 しかし、アリスの叫びは観客の大歓声にかき消されてしまう。

 祈ることしかできない。

 無事でありますように。

 勝てますように。

 アリスは、目は逸らさずに神に祈る。


 バーンはゆっくりと立ち上がった。

 膝が折れ、よろけていることからかなりのダメージが伺えた。


「効いたぜ……」


「……よく立ち上がれたな」


 マリアは渾身の一撃を放った。

 そのつもりだった。


「お前が全力なら立てなかったかもな……お前がタイカ石を殴った時はこんなもんじゃなかった」


「ふざけんな、あたしは全力で殴った!」


「マリア、一つ賭けをしないか? 俺が勝ったら話を聞いてくれ。負けたらもうお前には関わらない」


「……いいだろう。てめぇがそれで全力を出せるんならな」


「ああ、出すよ」


 バーンは左右の巨剣を逆手に持ち替える。

 そして、そのまま床に突き刺した。


「なんの真似だ?」


「こいつを持ってたら本気が出せねぇ。お前相手にはな」


 バーンは手を大きく広げた、

 そのまま拳を握り、胸の前で両拳を激しく叩きつける。

 ガキンッ、と激しい金属音と衝撃波が闘技場に広がった。


「魔拳使いとそれでヤる気かい……」


「舐めてるかどうか……試してみな」


 マリアはバーンの目を見る。

 金色に輝く瞳は先刻と違い、確かな光が宿っていた。

 マリアがニヤァ……と笑う。


「あんた面白いね! 面白いよ! あはははは! ……さぁ、ヤろう!」



 決勝戦が今、本当に始まった。



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