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第十二話:予選と歓声

第十二話です。


よろしくお願いします。


スマホいじり過ぎて、家族に白い目で見られております。

 

「さぁー! 今月も始まりましたァ! 冒険者闘技大会! 皆さんもぉーりあがってますかぁ〜〜〜!?」


 ワアァァァァァァァ……!


「オッケェーイ! 司会進行実況はこのわたくし! 毎度お馴染みシギョーがお伝えしまぁす! どうぞよろしくぅ!」


 ワアァァァァァァァ……!


「さてぇ! 今回集まった猛者は八十六名! ちょっと多いな! 多いよねぇ!? さっさと始めるぜぇ! 予選会の始まりだぁ!」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「大っきな声ですねぇ……すごいなぁ」


 アリスが感嘆の声を上げる。

 バーンはアリスに意地悪な顔で教える。


「あ〜アリスさんアリスさん、あれはね地声じゃないんですよ?」


「!? モ、モチロンシッテマスヨ!」


 明らかに動揺していた。

 目がキョロキョロ動き、変な声を出すアリスが可愛らしい。


「そうでしたか、あの人の前にある魔石見えますか? あれはリンク石の応用品でデッカ石っていうのは勿論御存知ですよね?」


「え、ええ! デッカ石を知らないなんて世間知らずも甚だしいですね! そんな人いるなら見てみたいですよ!」


「嘘だよ、本当は〝ハイボ石〟だよ」


「……」


 この世界には様々な魔石がある。

 その殆どは地中に埋まっており、世界各国に魔石専用の鉱山がある。

 質の良い魔石は高値で売れるため、専門の業者も多い。

 人類はそれをエネルギー源として活用し、生活の利便性を高めている。

 魔石の中には手を加えずとも不思議な力が宿っているものもあり、それらはより高値で取り引きされる。


「リンク石は情報を他のリンク石に伝える、ハイボ石は情報を増幅して空気を震わせ、大きな音を出すことが出来るんだ」


「へぇ……」


 もう諦めたアリスは素直だ。

 意地悪な顔のバーンはアリスの頭を撫でながらお利口になったなぁとニヤニヤしている。

 頬を膨らまし、バーンに反撃を試みる。


「うー! バーンさんだって兄弟国家のこととか知らなかったくせに!」


「必要な情報しか興味ないんだよ」


 あっさりと反撃を防がれたアリスにはもう打つ手が無く、ただ鳴くだけだった。


「ぶー! ぶー!」


「おや、豚がいる?」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 円形の観客席の中心には正方形の石で作られた闘技場があり、縦、横百メートル程の大きさのその中央に、何かが置かれている。

 布で覆われたそれは二メートル程はあるだろうか。その隣には露出の多い服を着た美女が立っている。


「予選会は単純明解! こいつを使うぜぇ!」


 シギョーの声と共に美女が布を外す。

 それは、鋼鉄の台座にはめ込まれた大きな透明の魔石だった。


「冒険者闘技大会名物ッ! 〝攻撃力測るんです〟の登場だぁぁぁぁ!」


 ワアァァァァァァァ……!


「そのまんま!」

 

 既に一人観客席に座ったアリスの口から思わず声が出る。

 周りの観客がじろっとアリスを見た。


「ちっ、よそ者が……このネーミングセンスの良さがわからねぇとは……」


「分かりやすい表現の大切さがわかっちゃいねぇ……」


 周りからそんな声が聞こえ、焦るアリスは一芝居するのだった。


「わ、わぁ〜分かりやすくて素敵な名前だなぁー!」


 我ながら白々しいにも程があると思ったが、隣にいた男が話し掛けてくれた。


「おっ! 嬢ちゃん話がわかるねぇ! 色々と教えてやんよ!」


「あ、ありがとうございます!」


 なんとか村八分状態を回避し安堵する。

 男はダッフィと名乗り、色々と教えてくれた。

 地元の人間らしく、闘技大会の事をよく知っていたのでアリスにはありがたい存在だ。


「あれは〝タイカ石〟っつってな、叩かれた衝撃で光を放つんだ。その光の強さでそいつの強さが分かるんだよ。ある一定の光を放つ事ができた奴が、決勝トーナメントに進めるってわけだ」


「ほうほう、成る程です」


 アリスが納得したタイミングを図るようにシギョーの声が会場に響いた。


「さぁー! ちゃっちゃか始めよう! 決勝トーナメントに進出できるのは上位八名だけだ! 最初の挑戦者は……エントリーナンバーワァァァン! 南の大陸オキニアからやってきた戦士! カマスー!」


 既に魔石の前に立った戦士が、観客に手を振って挨拶をする。

 大槌を担いだ大柄な男だった。


「それじゃあ始めよう! レリィィィゴォォォ!」


 シギョーの声と共に、戦士カマスが大鎚を振り上げ雄叫びとともに魔石を殴りつける。


「おぉぉぉらぁぁあ!」


 ガンッと大きな音と共に、魔石が青く光る。

 その光はカマスを少し照らして消えていった。

 観客の反応はいまいちだ。

 どうやらあの程度の光では駄目らしい。


「ありゃだめだ、色も悪いし光も弱い」


 光り方や色がその力によって様々に変わるのだ、とダッフィは語る。


「いい奴はもっと派手にビカビカーって光るし、色は金色に光るよ。まぁそんなんは滅多にいないけどな」


「金色に……楽しみです!」


 その後も次々と参加者が魔石を叩く。

 赤色や、緑色など様々な色に変化する魔石は見ていて飽きなかった。

 話している時に一度金色に光った時は会場がどよめいていた。

 しかも女性だったのがかなり珍しいようで、ダッフィも興奮気味だった。

 その後も暫く見ていたアリスにふと疑問がよぎる。


「でも、これって力が強い人が有利ですよね? 魔法使いの人とか不利なんじゃないんですか?」


 ダッフィがやれやれ、と手を広げる。

 その仕草に若干イラッとしてしまった。 


「甘いな嬢ちゃん……力が強いだけじゃ綺麗に光らねぇ、そいつ本来の力をあの魔石は測れるんだ」


 魔石に様々な力があるのは知っていたが、改めて人智を超えたものと知り素直に驚いた。


「すごいんですね……壊れたりはしないんですか?」


「一度だけあるぜ……なんつったってあれは……」


 ダッフィが嬉しそうに語ろうとしたが、シギョーの声に遮られてしまった。


「さぁー! いよいよ最後の挑戦者ぁ! アトリオンから登場だ! その巨剣は飾りか本物かぁ! 黒い鎧を纏ったハーフエルフの騎士! バァァァァァァァァン!」


「あっ! バーーーンさぁぁぁぁん! がんばれぇー!」


 相棒の登場に、身体を全力で使い大声で声援を送る。

 バーンに届いたらしく、こっちに手を振っているのを見てアリスも嬉しくなり手を大きく振った。

 ダッフィが眉間に皺を寄せバーンに見入っていた。

 思う事があるらしく、首を傾げながら考え込んでいる。


「……なんかどっかでみたような」


 呟くダッフィの声をシギョーの声が再び掻き消してしまう。


「それでは最後の一撃! いってみよぉぉ! レリィィィゴォォォ!」


 バーンが二本の巨剣を抜く。

 あの剣を本当に振るのか、と観客が騒めき驚いている。

 しかも、それが二本ある事が尚更観客の興味を引いたが、そんな事は気にも止めずバーンは二本の巨剣を平行に持ち、体を右に捻った。

 魔石に背中を見せるほど巨剣を引き絞る。


 そして、二本の巨剣を振り抜いたーーーー


 魔石がけたたましい音を立てる。

 瞬間、魔石は金色に輝き闘技場全てを光に包み込んでいた。

 あまりの眩しさに、観客の誰もが手で顔を覆う。

 アリス達も目を開いていられなかった。


「ま、まぶしぃ!」


「う……うおおぉぉ……」


 バーンの耳に、ガタガタと魔石がはめ込まれた鋼鉄の台座が激しく揺れている音と、魔石にヒビが入る音が交互に聞こえてくる。

 

「ん、なんかやばそうだな」


 何かが起こると察知したバーンは、咄嗟に近くにいた美女を連れて魔石から離れる。


 魔石が、凄まじい破裂音と共に粉々に砕け散った。

 あまりの音に皆が一斉に耳を塞ぎ、呆然とする観客は誰もが声を忘れ会場は静寂に包まれた。

 バーンの呟きが、静寂を切り裂いた。


「すまん、加減はしたんだが」



 その瞬間闘技場は大歓声に包まれた。


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