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第百一話:戦友と不思議

第百一話です。


よろしくお願いします。


あと数話おつきあいくださいませ。

 

 グリードは奇妙な感覚に囚われていた。

 自分の身体が自分ではないかの様な嫌な感覚に。


「遅いっ!」


「ぬぅっ!?」


 マリアの拳が次々にグリードを捉える。

 勿論右足がない事がその理由なのだが、それにしても力が出ない。


「馬鹿な……この俺が……」


 キンッ


「ぐっ!」


 マリアが身を翻した瞬間に消失魔法がグリードの右手を消しとばした。


「馬鹿な馬鹿な馬鹿な……なんで……なんで!」


「喰らえぇぇぇ! 魔拳! 魔竜拳!」


 マリア渾身の一撃が、グリードの内臓ごと腹部を破壊した。

 衝撃で吹き飛ばされたグリードは、礼拝堂の十字架が貼り付けてある壁に叩きつけられる。

 まるでボロ雑巾の様になったグリードにかつての面影はなく、二人からすればただただ憐れでしかない。


「意味が……わからねぇ……げはぁっ! 何が……!」


 気が付けば周りの魔王達の気配がない。

 上にいるザディスと魔帝以外がいなくなっていた。


「バーディッグも……やられちまったのか? ドラグニスもべルザーもルリーナも? なんでだ……」


 おかしかった。

 先程まで魔帝の言葉に奮い立ち、新たに力を得た様な気さえしていた筈が、いつの間にか力を奪われている様なそんな感覚に襲われている。


「グリード……終わりにしよう」


 エリザがグリードを消さんと魔力を解き放つ。

 グリードにはもうそれを回避する力は残っていなかった。

 だから最後に、短い間で考え出した結論を口にした。


「あー……やっぱりそうなのかな……魔帝は……俺らを……アドヴェンドもゾブングルもきっと……ははは……」


「何を……」


「輪廻だよ輪廻。俺らはずっと世界に縛られた存在……魔帝はそれを解放して神になるつもりなんだ……なるほどなるほど……だからあえて俺らから……抜いたんだ」


「何を……何を言っている!」


「いやいや……分かったらすっきりしたぜぇ……また蘇らせてくれたらいいが……まぁそうでなくてもかまわねぇか。正直、もう疲れたしな」


 グリードの身体が崩れ出す。

 ボロボロと肉体は砂の様に朽ち果てていく。


「あばよメスども……俺は抜けるぜ。くだらねー世界だったぜ……まったくよぉ」


 そう言い残し、グリードは消えた。


「なんなんだ今の台詞は……」


「わからねぇ……だが、後味はよくねぇな。ただよ……バーン達のとこに行くしかねーだろ」


「だな……行こう!」


 グリードは力を出し切れなかったが、それでも二人にとっては強敵であった。

 かなり消耗はしていたが彼女達は足を止めなかった。

 バーンに任せれば大丈夫。

 その想いが彼女達を勇気付けているのである。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 城の城門にカーティスはいた。

 先程気付いたカラクリはやはり真実なのだろうかと思案していたのだ。

 他の魔王もそうなのかどうか確かめる為、仲間を待っていたカーティスの元に唯一の友が現れる。


「おうディライト。勝ったか」


「たりめーよ。ま、かなり消耗しちまったがな。つかお前無傷かよ?」


「なぁ……魔王はどうだった?」


「……お前も? 俺もだわ」


「余りにも……呆気なさすぎやしなかったか?」


「確かに相性もあったかもしれねぇ。過去の勇者より俺達の方が強いって可能性もあるよ。でもさ、おかしいよな」


「だろ? やっぱりそうなのかなぁ」


「何がだよ? お前一人だけ分かった様な……」


 その時ジークとスターク達、更に別方向からジャバ達が現れる。

 ジークとギリー、リリーは鉢合わせた瞬間思わず叫び出していた。


「おいお前らぁぁぁぁ!?」


「ジーク!? なんでここに!?」


「久しぶり……」


「お前らこそなんで……」


「僕たちは10年前に密かに潜入したんだよ。ジャバ達の作戦に紛れてね。ディーバとルインを助けたかったんだ」


「ジーク……あなたはバーンを育てていたから……ごめんね」


「そうだったのか……まぁ無事会えたから良かった」


 そう言って三人は抱き合った。

 久しぶりに勇者のパーティが集まったのだ。

 彼らを見た他のメンバーもなんだか胸にくるものがあった。

 仲間の為に何かをしようとそれぞれが努力し、そして今それが身を結ぼうとしている。


「なぁ、俺達もやるしかないよな?」


 スタークの声に、勇者達は頷く。


「すまないが君達は……アリスを知っているかい? 今どこにいるか分かる人は……」


「あんたアリスちゃんの……まさか探してる親父さん!?」


「ああ、そうだ。ずっと反撃の機会をうかがっていたんだ。このヴァンデミオンでな」


「まさに奇跡だな」


「とりあえず行こうぜ。早く追いつかないと」


 カーティスに促され、一行は門を開ける。

 激しい戦闘の跡がエントランスには広がっていた。

 それを先に進むと、階段をなんとか上ろうとしているシェリルを発見する。


「シェリルちゃん! 大丈夫かい?」


「あら……ディライト様……情けないですわ……少々相性が悪くて」


「いかん……リリー! 頼む」


「任せて……」


 僧侶であるリリーが回復魔法を唱えると、シェリルの身体はすぐに回復し、普通に歩ける様にまで回復した。

 リリーの使う回復魔法はかなり強力で、「死んでいなければ全てが元に戻る」とまで言われた程である。


「ありがとうございます。ルリーナはなんとか倒しましたわ。皆様がここにいるという事は……」


「ばっちりさ! しかし、一人で魔王を倒しちゃうなんてね。僕らは四人がかりだったのに」


 カーティスはそれに反応し、スタークに問いかける。


「よう、スターク。でもよ、魔王ってこんなもんか?」


「……ゾブングルの時もだけど、確かにね」


「なぁジークさん。ザディスはどうだったんだ? べルザーと比べてよ」


 カーティスに聞かれ、ジークは昔を思い出していた。

 しばらく思案した後口を開く。


「ザディスの方が遥かに強かった。俺の全盛期の一撃さえ受け止めやがったからな。確かにべルザーは弱すぎた。今考えるとな」


「だよな……」


「カーティス様、とりあえずわたくし達も上へ」


「わりぃな。行こう」



 弱すぎる魔王、グリードの言葉、世界の謎は間も無く……。


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