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第百話:怠惰と万象

第百話です。


よろしくお願いします。


遂に百話……ありがとうございますm(_ _)m

 

「でっかいなオイ……」


 カーティスは上を見上げる。

 初代魔王ドラグニスに対し、その無力化魔法を用いた戦い方で殆ど圧倒していた。

 ドラグニスはカーティスに対し全力を出す事を決めた。

 ドラグニスが城の外にいた理由はその力にある。


 かつて世界を飛び回ったというドラゴン。

 今では姿は見えず、ワイバーンの様な亜種が見られるのみである。

 そのドラゴンの力を持っている魔王。

 それがドラグニスなのである。


 力を解放したドラグニスは巨大な黒いドラゴンに姿を変え、カーティスを見下ろしていた。

 ドラグニスは飛翔し、真下にいるカーティスに向けて黒い炎を吐き出す。


「おいおい……逃げ場がねーじゃん。ま、関係ねーけどな」


 カーティスは手を空にかざす。


「無力化魔法〝堕落の瞬間(ルーズルーザー)〟」


 カーティス以外には見えない障壁が張られる。

 そこに黒炎が降り注ぐも、その障壁に触れた部分だけがまるで何事もなかったかのようであった。


「グォォォオオオオオオ!」


「なんだよ話せなくなるのか? ま、その方がやりやすいか」


 カーティスが手をドラグニスにかざす。

 その瞬間に飛ぶ力を失ったかのようにドラグニスが地面に落下していく。


「こっちにはくんなよっと!」


 カーティスが手をぐんっと押し出すと、ドラグニスは見えない力に押されるようにカーティスから離れた市街地に叩きつけられた。


「グォォォ……!?」


 ドラグニスは何をされたのか全くわからなかった。

 気が付けば飛べなくなり地面に落下していた。

 落下自体に大したダメージはない。

 それよりも精神的なダメージの方が遥かに大きくドラグニスを蝕んでいた。

 ドラグニスが「この男には何も通用しないのではないかと」いう思いを抱いた時、この戦いは終わっていたのかもしれない。


「ドラグニスよぉ。どうやらここまでのようだな。終わらそうぜ……虚しい戦いをよ?」


 いつの間にかドラグニスの目の前にいたカーティスは、ポンッとその身体に触れた。

 その瞬間ドラグニスに悪寒が走るがもう遅い。


「無力化魔法〝魂の棄却(ライフエンド)〟」


 唱えられた魔法は魂の無力化。

 弱った心を持ってしまった者を永遠の怠惰に誘う恐ろしき魔法。

 カーティス最強の魔法の前に、ドラグニスは巨体を微動だにしないままその命を断たれようとしていた。


「魔帝様……我が命を御受け取り下さい……」


 消える刹那呟くように語ったドラグニスの言葉からカーティスは察した。


「ちっ……魔帝ってのはマジでやべぇな。面倒くせーが行ってやるかぁ」


 カーティスが気付いた魔王と魔帝のカラクリ。

 バーンが恐らく気付いていないであろうそれを伝える為に、無気力な勇者はヴァンデミオン城に向かうのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ねぇあなた……シェリルって言ったかしら? 私のペットにならない?」


 城のエントランスは激しい戦闘により瓦礫が散乱し、かつての美しい面影は微塵も感じられなくなっていた。


「はぁ……はぁ……冗談を言うのですね……魔王も」


 シェリルは疲弊していた。

 ルリーナとの戦闘は互角に渡り合えていたが、やはり身体能力には歴然とした差がある。


「冗談なんかじゃないわよ? あなた綺麗だし……強気なを屈服させるのが私の趣味なのよ。気付いてるでしょ? 他の魔王達がどんどんやられてる……もう潮時よ。というより最初から私達魔王は……まぁいいわ。で、どう? 二人で楽しく暮らさない?」


「お断りいたしますわ。この身も心も全てはバーン様のもの……あなたに差し上げるのはわたくしの魔法のみ」


「残念。じゃ、やりましょっか」


 瞬間ルリーナは魔力で強化した肉体に力を込め、凄まじい速さでシェリルに向かって来る。

 この速さにシェリルはなかなか付いていけない。

 シェリル自身も魔力で肉体を強化しているのだが、ルリーナとは元々の身体能力に差があり過ぎる。


「ぐぅっ!」


「あはぁ、捕まえたっ!」


 詠唱が間に合わず、シェリルは髪を掴まれて地面に叩きつけられた。


「あぐっ!」


「抱き締めてあげる」


 叩きつけられた反動で浮き上がったシェリルの身体をルリーナは両手で抱き締める。

 万力のような力でシェリルの身体が押し潰され、ギシギシと嫌な音を立てて軋んでいた。


「うぁぁぁぁ!」


「あーいい声……たまらないわぁ」


 押し寄せる激痛の中、シェリルはバーンの事ばかり考えていた。

 本当ならバーンと一緒に最後まで戦いたかった。

 けど、それはアリスの役目。

 自分の役目は二人を先に行かせる事。


「バーン……様……」


「あらあら? あなた泣いてるの?」


わたくしは……あなた様を……」


「ちょっと……何よこの魔力は……」


「生涯愛し続けます!」


「この……死……」


「天識魔法〝神の雷炎(エーテルオリオン)〟!」


 シェリルの全身が炎と雷に包まれる。

 触れていたルリーナの身体はその威力に耐えきれず一瞬で焼けていた。

 シェリルを離し、身体中をさすりながら踠き出す。


「がぁぁぁぁあ!?」


「天識魔法〝神の風水(エーテルベガ)〟!」


 ルリーナの目の前で風と水が爆発した。


「ぐばっ!?」


 凄まじい爆発でルリーナは一瞬で城の内壁に埋もれる程叩きつけられた。

 シェリルが普段使う魔法は二つの属性を合わせて放つ複合魔法。

 しかし、真に彼女がその力を解放した天識魔法は、二つの属性を一つにまとめるのではなく、二つの属性を互いに掛け合わせる。

 風と水だけでは無く、右手に風と水、左手に水と風、それを合わせてルリーナに叩き込んだのだ。


「天識魔法〝神の炎土(エーテルペテルギウス)〟!」


 壁に埋もれたルリーナを燃え盛る土の手が掴み、空中で拘束した。

 顔だけ出した状態で捕らえられたルリーナにはもう叫ぶ事しか出来ない。


「お前ぇぇぇぇ!」


「さようなら魔王ルリーナ……天識魔法〝神の万象(エーテルアーク)〟!」


 全ての属性を合わせて放つ最強の魔法。

 その力はこの世の全てを吹き飛ばす、まさに神の一撃。


「いやぁぁだぁぁぁぁあ!」


 激しい爆音にルリーナの絶叫は掻き消され、静かになったエントランスは戦いの終わりを告げていた。



「バーン様……今、参ります!」


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