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第九十九話:爆砕と無限の刃

第九十九話です。


よろしくお願いします。


諸行無常。でもカラクリがあったり。

 

「ちぃっ!」


「オラァァァア!」


 べルザーに向かって巨大な瓦礫が次々に飛んでいた。

 ジークが斧で撃ち抜いた家の残骸である。


「ヴァンデミオンの民よ! 奴らを打ちのめした後にいい家を建ててやるから許せぇい!」


「老いぼれがぁ! 図に乗るな!」


 べルザーがジークに迫るも、すかさずバカラが飛び込んでくる。


「ぐぬっ!」


「俺と遊べぇぇぇぇ!」


 溶岩魔法は使えず、身体から染み出したマグマを使いバカラをなぎ払おうとするがそれはスタークに阻まれる。

 スタークの太陽魔法を纏った魔法剣はマグマと相殺するだけの力があり、バカラは上手くマグマの無い部分を攻撃していく。

 二人掛かりで斬り付けられたべルザーは徐々に交代し、追い込まれて行った。

 さらに、一番先にべルザーが片付けたいミリアはジークに守られている。


 既にべルザーは力を解放していたが、勇者達の気迫に押されていた。

 元より戦いに対する意識に差がついており、べルザーは完全に後手に回ってしまう。

 自身最大の攻撃である溶岩魔法が封じられ、元々抱いていた「マズイかもしれない」という思いが増幅する結果となってしまったのだ。


 べルザーの両手刀が二人に繰り出される。

 無論軽い一撃ではない。

 スタークとバカラはそれを剣で受け止め、べルザーの身体の動きが止まった瞬間二人は左右に身体を開く。


「なんっ!?」


「優秀な勇者が多くて助かるぜ」


 二人の身体に隠れいつの間にか近付いていた爆砕の一撃が、べルザーの脳天に炸裂した。


「がばっ!」


 べルザーの頭から激しい出血が見られ、フラフラとおぼつかない足取りでなんとか踏ん張るが、そこに勇者達の一撃が左右の胸に突き刺さる。


「終わりだべルザー!」


「太陽魔法……〝天空の炎城(コロナブレイク)〟!」


 べルザーに突き刺さったスタークの剣が内部からべルザーを焼き尽くす。


「ぐがぁぁぁぁあ! このっ……べルザーが! 炎を司る魔王が! 焼かれて死ぬものかよ!」


 べルザーは身体に刺さった剣を掴み、溶岩魔法を繰り出そうとするも、ミリアに止められる。


「ギザマラァァァァァア!」


「魔王べルザー! 今度こそ永遠に眠れ!」


 ジークの本気の一撃が、べルザーの顔面を粉砕した。

 頭部を失ったべルザーの身体はゆっくりと倒れ、灰とも砂とも分からない物質になり風の中に消えて行った。


「勝った……か」


 スタークはそう言うとその場に崩れ落ちる。

 バカラもまた限界が近かった。


「お前らよくやった。しんどい相手だ全く……この嬢ちゃん凄いな」


「割と限界……魔力がもうない」


しばらく休もう。何……俺達より強いよ。他の勇者は」


 第三魔王バーディッグと創造のディライト。

 初代魔王ドラグニスと無力のカーティス。

 第六魔王ルリーナと天識のシェリル。

 第四魔王グリードと魔拳のマリア、消失のエリザ


 四つの戦いの余波がジーク達にまで伝わって来ていた。

 激しい戦いになっている事は間違いない。


「お前らは休め。俺は行かなきゃなんねぇ」


「ジークさんあんた……」


「バカヤロウ死ぬ気はねぇ! だがな行かなきゃなんねぇんだ。ディーバとルインを助けないと」


「だったら歩きながら回復しよう。へばってる場合じゃ無かったし」


 スタークとバカラは立ち上がり、ジークにニッと笑ってみせた。

 ジークも笑顔で応えると四人はゆっくりとヴァンデミオン城を目指し歩き出した。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 辺り一面が民家の瓦礫と突き刺さったおびただしい数の武器に覆われていた。

 バーディッグの肉体からは次々に禍々しい形状をした武器が飛び出し、ディライトの手からは美しい形状の剣や槍などが次々に生まれ出て行く。

 双方が互いに武器をぶつけ合い、体力と魔力を削りながら相手の隙を窺っていた。


 近すぎず遠からずに二人は距離を取り、牽制しながら攻撃を繰り返す。

 金属同士がぶつかる金切り音が周囲には響き渡り、互いの言葉に代わって叫んでいるようだった。

 バーディッグは初めて相対する創造魔法に、ディライトは無限に身体から刃を繰り出すその力に、それぞれ感嘆の声を出さずに敬意を抱き始めていた。

 最初に口を開いたのはバーディッグだった。


「お前……名はなんと言ったかなぁ?」


「ディライトだ……あんたはバーディッグだったな」


「あぁ……いや楽しくてな……やはり俺には人間に対する憎悪が持てんのだぁ。戦えればそれだけでいい……相手が強ければそれでなぁ」


「そっか……俺は違うなぁ。正直面倒だし、死ぬかもしれないってのは嫌だね」


「ほぉ……その割には……」


「うん。変わったんだわ。すげー奴に変えられたってのが正解かな?」


「アヒャヒャ……バーンかぁ……あれともやりたかったなぁ!」


「あー無理無理。お前じゃ勝てないよ」


 はっきりと断言され、バーディッグの笑みが消える。

 しかしディライトは一切臆していない。

 そして、バーディッグが想像した通りの言葉を吐いた。


「俺に勝てない奴がバーンに勝てる訳がない」


「……ぬかせ」


 バーディッグの雰囲気が変わる。

 今までは笑みを浮かべて楽しそうに戦っていたバーディッグだったが、ディライトの一言で本気になった様だった。

 魔力を解放し、身体の形状が変わっていく。

 細身の身体の節々からは刃が飛び出し、手には大鎌を持っている。

 バーディッグの最終形態。

 今までは身体から飛び出した武器は一直線にディライトに向かって飛ぶだけであったが、今はおびただしい数の武器がバーディッグの周りに浮遊している。


「お前を殺してバーンを殺しに行く事にした。失せよ、まがい物」


「だから無理だって……あんたじゃ俺には絶対勝てないよ……」


「ほざ……!」


 バーディッグは凄まじい悪寒を感じ、ディライトから距離を取る。

 が、もう遅い。

 バーディッグを包むように地面と空中から無限の刃が溢れていた。


「なぁっ……!?」


「ただの刃じゃないぜ? この世にない物質……俺のオリジナルだ」


 バーディッグは全てを弾かんと浮遊させた無数の武器を振るうが、バーディッグの武器はけたたましい音を上げながら全てが砕けていった。


「無駄だよバーディッグ。これは武器殺しの武器……創造魔法〝鋼を喰らう剣の群れ(エンドオブザソード)〟……あんたは初めから負けてんだ。だから無理だって言ってんの」


「貴様ァァァァァァァァ!」


 魔王バーディッグの怨嗟の絶叫を合図に、無限の刃は魔王の全てを喰らい尽くしたのだった。


「ふぅ……魔力スッカラカン……寝ていいかな?」


 そう言ったものの、バーンに変えられた彼はヴァンデミオン城に向けて既に歩き出していた。



「ま、弾除けくらいにはなるかな」


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