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獅子魔道之章(ししまどうのしょう)  作者: 三紐房 大和
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冴えない男

朝比奈 昇は、すっかり暗くなった街中でスクーターを停車させて、スマートフォンを取りだし、情報を確認していた。

二十五歳、ボサボサの髪に、やや太った体型。滋賀県内に暮らす、冴えない男だ。

彼はフリーライターで、ネットで広まっている怪しげな怪談話、都市伝説を実際に調べ、記事にすることが大好きだった。幽霊を信じていないわけでもなく、むしろ最近は体がだるいし、近々自分の身に危険が迫っているとさえ感じている。だからきちんとお払いをかかさない。

特に今回は、かなりぼんやりとしたもので、ガセ情報の可能性が高かった。

なにせ、〈丑の刻、二匹の獅子がどこかに通っていく。二匹についていくと、戻れなくなるらしい〉というものだからだ。どうやら神社に向かっていったという目撃証言があるが、何県の、どの神社かまではわからない。朝比奈はひとまず、自分の近辺の神社を調べあげるしかないと思った。

観光がてらに違う県へ移動するのも良いが、午前一時から午前三時、電車もバスも使えない時間帯は、さすがにどんなに好きでもいく気にはなれなかった。

腕時計を見ると、十二時を回ったところだった。

「ここからだと、泉神社が近いか」

独り言をつぶやき、スマートフォンをしまうと朝比奈はスクーターを走らせた。


泉神社に到着すると、朝比奈はヘルメットをスクーターにおいて、神社内へととりあえず入っていった。

たった一人、こんな時間に来るとさすがに寒気が走った。

ショルダーバックからカメラを取りだし、ひとまずあたりを撮影していく。時間はまだ午前一時ではなかったが、噂はそこまで正確ではないことが多い。

すでに何かしらが、カメラに写りこんでいればラッキー程度の気持ちで、朝比奈はシャッターを切っていく。

腕時計がちょうど、一時を指したとき、異変が起こった。強風が吹いたかと思うと、あたりがにわかに変わりはじめた。

真夜中だったはずの空は晴れ渡り、どこからか、笛の音色すら聞こえてくる。

朝比奈は戸惑いながらも、シャッターを切り、これはなかなかすごいことを体験していると内心、興奮していた。

やってきた入り口の鳥居にカメラを向けたとき、光る二つの物体が、こちらにやってくる姿が見えた。

二つの物体は鳥居をくぐり、怪談を駆け上がって朝比奈をめがけてやってくる。

恐怖よりも、好奇心から朝比奈は二つの物の正体を知りたくて、そこから動けずにいた。

二つの物体はご祭神のところで、相対してピタリと止まった。

美しく輝く獅子だ。見とれながら、朝比奈は噂を思いだしていた。

自分は、二匹の獅子を追ってきたわけではない。この場合は、戻れるのか?そんなことを考えていると、上空から山伏の服装を着た天狗のお面を被ったものが、二人、地面に着地した。

天狗のお面は茶色く、むしろ本物の顔のようで、コスプレにしては翼が、自在に動きすぎるようだと、朝比奈は思った。

「こ、これはもしかして特撮物の撮影とかですか?すごい技術ですね、夜を朝にしちゃうなんて」

すべてを言い終わらないうちに、天狗は朝比奈に近づき、こん棒で突き飛ばした。

近くの木に激突した朝比奈は、状況が飲み込めないまま、カメラが壊れてしまったことを理解した。地面に崩れると、思いのほか、こん棒で殴られた腹がズキズキしている。

呼吸もかろうじてできるが、動くことは容易ではなかった。天狗がこちらに近づいてくるのが見える。

このままではまずい・・・・・・。

だが天狗が目指しているのは、自分よりもご祭神のほうだった。二匹の獅子は、いつの間にか姿を消し、ご祭神の中から、声が聞こえてくる。

「お願い!助けて!いや!」

朝比奈は若い女性の声に、頭が混乱しそうになった。他人を心配をしていると、一人の天狗が自分の首を掴んで、持ち上げると口を動かさずに言った。

「人間がやってくるとはな。珍しい客人に、良いものをみせてやろう」

もう一人の天狗が、ご祭神を乱暴に開けると、中から巫女の服をきた女性が、出てきた。腕と足は縄で縛られ、胸元はあわれにもはだけている。




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