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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
三章【異世界から来た女騎士と愛を交わした】

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第20話〔え えらいこっちゃ:大会編/本戦〕①

 試合の規則(ルール)などが書かれた紙に目を通し終え、内心で。


 一ラウンド三分で計八ラウンド、決勝戦は十ラウンドでラウンド毎に一分休憩(インターバル)


 ――向こうでいうところの、スポーツ競技みたいなものか。


 と思いを(まと)め。水晶玉の様な物から放たれる光の幕に映し出される映像を立って観ている短髪の騎士に、控室のベンチに座ったまま、顔を向ける。


「今やってる試合の様子は、どうですか?」


「ええっと、接戦が続いています。このままいけば判定かもしれません」


 何処(どこ)か力のない声で、映像から目を離すことなく相手が言う。


 ふム。


 そして唐突に、騎士の顔がこちらへ向く。


「どうかしましたか……?」


「――本当に、よかったのですか?」


「ええと、何について……」


「ジャグネス騎士団長を後回しにしたコトです」


 ム。


「いや、後回しにしたというか、順番的にホリーさんが先ですし。故意に選んだ訳では」


「だとしてもワタシを放って、一番になりたかったと思いますよ」


 ム。――……そうなのか。と、別れ際の事を回想する。




 ▼




「洋治さま、こちらは本戦での規則を記載した物です。大した内容ではありませんが、軽く目にしておいて損はないかと」


 やや離れた場所に二人の少女を待たせる預言者が、本戦出場の各選手にあてがわれた控室に続く建物内の岐路(きろ)で一枚の紙を自分に差し出す。――で受け取る。


「ありがとうございます。助かります」


 そう礼を言いながら相手の様子を(うかが)い、気になっていたコトを口にしてみる。


「そういえば、気分はどうですか?」


「おや、何の話でしょうか?」


「さっき、なんとなく機嫌が悪い様に見えたので」


 と言うと相手は頬に手を添えて心なしか嬉しそうに。


「私のような年増(としま)目前の者を口説くなど――今夜の予定をチェックしておきましょう」


 え、なにが。


「まァ冗談はさておき、少々自ら発表する楽しみを奪われた事に気を害しておりましたが。どうやら私もおめでたい女のようで、留意(りゅうい)していただいた事を知り、すっかり気を良くしてしまいました」


 ふム。――理由はどうあれ気を良くしたのなら、よかった。でリュウイってなんだろう。


「しかし気に()めるのであれば、優先順位は決まっております」


 言って預言者が、女騎士の方へ目を動かし、目配せの様な素振りを見せる。


 ム?


 そして自然と、目が合う。


「……えっと?」


 当然戸惑う相手を見て、考えなしに。


「ホリーさんの試合が終わったら、直ぐに向かいますので」


「ハ、ハイ、お待ちしております」


「ただ、さっきも言いましたが、ジャグネスさんに助言できる事はないと思いますよ。本当にそばで見ているだけと」


「その様な事はありません。ヨウが見ていてくれれば、私は目にも止まらぬ速さで戦える気がしますッ」


 なら見なくてもいい気がする。


「……――取り()えず、大怪我だけはしないように」


「はいっ勿論です」




 ▲




 うーん。――特にそれと思われる感じも。


「あの、一番というのは、ホリーさんより先にって事ですよね?」


「違います」


 違うのか。


「では、どういう意味での一番ですか?」


「えっ。そ、それは……ワタシには分からないと言うか、分かると言うか……」


 どっちだ。


「説明しづらい事なんですか?」


「と言うより、ワタシには一生(えん)のない話なので」


 そう言いながら短髪の騎士が来て、ベンチに座っている自分の隣に腰を下ろす。


「ホリーさんは一番になるのが嫌なんですか?」


「イヤではなく、なれません……」


「何故ですか?」


「ナゼ……――だってワタシ、ダメ騎士ですよ?」


「……それは、鈴木さんが冗談として言ってることで、本心でもないですよ」


「救世主さまを見ていると、そうとは思えません……」


 ム。


「――ホリーさんは鈴木さんのこと、嫌いですか?」


「え。そッ、そんなことっないですよ!」


 何故に焦った物言い。


「では、友達と?」


「トモダチ――相手は救世主さまですよ……?」


「互いがよければ問題ないのでは」


「それなら、救世主さまが嫌がると思います」


 なる、ほど。


「ホリーさんて、変に純粋(じゅんすい)ですね」


「え? ヨウジどのの方が、(もっぱ)らですよ」


 なんか以前に、似た返しをされた気が……――。


「――まぁそれは一先ず、置いといて。きっと鈴木さんは、ホリーさんを友達だと思ってますよ。だから冗談を真に受けないでください」


「むむ……」


 さすがに納得はできないか。――なら。


「今度直接、聞いてみたらどうですか?」


「救世主さまにですか?」


 (むし)ろ誰に聞くんだ。


「そうですね、鈴木さんに直接」


「な、なるほど……」


 そして(あご)の先に指をあて、相手が考え込む。


 ――ところで、そろそろ本題に入らないと時間が。






 現在、本戦一回戦の第一試合が行われており、第二試合に出る自分達はその間に控室で如何(どう)試合に(のぞ)むかを検討する予定だった。が刻一刻と迫る時を僅かに残し、(ようや)く本筋に戻る。


「取り敢えず、いま分かってるコトをまとめましょう。――確かホリーさんの対戦相手は九番隊の隊長さん、なんですよね? 顔見知りの」


「はい。組み合わせ表を見た時は驚きましたが、間違いなく、隊長です。ちなみに隊ではベネット隊長と呼ばれています」


 今は呼び方はどうでもいいのだが……、ん?


「ホリーさんは、そう呼んでないんですか?」


「ワタシがそう呼ぶと隊長は嫌そうな顔をするので、呼ばないようにしてます」


 よし、()れないでおこう。


「隊長さんは、どんな戦い方をするんですか?」


「主に二本の剣で切り刻みます」


 ……切り刻む。


「斬るのが速いって事ですか? それとも手数が多い?」


「両方です。隊長の剣は元から曲がっていて、踊っている様に攻撃をし続けます」


「なんか凄そうですね……」


「はい、なので手も足も出ません」


「……――ええと。攻撃の速さは、ジャグネスさんと比べると?」


「ジャグネス騎士団長と比べるなんて、無理です……」


「何故ですか?」


「速さ以前に、見えていないモノとは比較できません……」


 なるほど。――いや、まてよ。


「ということは、隊長さんの動きは見えてるんですか?」


「え、――あ、見えてると言っても姿を追ってるだけで、忽然(こつぜん)と消えるジャグネス騎士団長が凄すぎます」


 それは確かにそうだ。


「やはり覚悟を決めて棄権したほうが無難……」


 覚悟を決めて棄権、なんとも言えない言い回しだ。


「まぁ勿論、ホリーさんの身になにかある前に棄権はしてください。ただその時は一緒に怒られるなら怒られましょう」


「え? どうしてヨウジどのまで怒られるのですか?」


「怒られるというか、行動を共にする以上は結果も受け入れるのが当然です」


「そんなぁ、ヨウジどのは無理に残らずワタシを置いて先に行ってくださいよぉ」


 正しく使えばカッコいいはずのセリフをこんなにもダサく使うなんて、凄い。


 と思った途端に――。


『本戦一回戦、第一試合が終了しました。第二試合に出る選手は(すみ)やかに試合場までお越しください』


 ――できれば()だ来てほしくなかった時が放送される。


 なんにも決めてないのだが……。


「こうなったら怒られるよりかは笑われてっ」


 だから何故に受け狙い。――ん。いや、まてよ。

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