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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
三章【異世界から来た女騎士と愛を交わした】

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第18話〔下ネタはヤメてください〕③

 最終的に一人を除いて三人は立ち見する状態の中、始まった開会の挨拶が程無く終わり。リング上から司会をしていた女性が立ち去る。と最初の予選に出場する選手の一団が、ぞろぞろと現れ、台の上に上がっていく。


 ――計四回ある予選の一回目、各選手が手に一メートル程の棒を持ち、頭に色の付いたゴムボールみたいな物をのせ、台上で自由に広がる。


 三十人は居そうだな。


「へぇ、風船とかじゃないのね」


 大きな椅子で肩身を狭くして座る少女が誰に言うでもなく、述べる。


「あれらは特殊な製法によって作られた大会専用の道具となります。頭につけている球状の物は多少の事では壊れませんが、専用の棒を使い衝撃を加える事で壊れ(やす)い仕様となっております」


 なるほど。


「――いろんな色がありますけど、違いは見た目だけですか?」


流石(さすが)の洋治さまです。目の付け所が違いますねェ。と言うのも、あれにはとても愉快な特性が(そな)わっているのです」


「ゆかい……?」


「はい。壊れる際、つけている本人に聞こえる程度の、変な音が鳴ります。その音は色で異なった音色を」


 制作費が血税でなければいいのだが。






 ――太鼓(たいこ)の合図で始まった闘技大会一回目の予選、乱闘する選手達の中から次々と頭上のボールを壊された失格者が出る流れでリングを去る者より、得物に殴られた衝撃で倒れ込む数の方が圧倒的に多かった。


 全く(おだ)やかじゃないっ。


「想ってたより、面白いわね、これ」


「そうですか……?」


 いろんな意味でこの大会、大丈夫なのだろうか。


 と思うそばから、先に失格した者の上に重なって倒れる者まで。


「この熱き戦いを上から見下ろす、なんとも言えない高揚感(こうようかん)が、またなんとも」


 うっとりとした顔に手を添え、預言者が言い表わす。


 預言者様って時々なんとも言えない。






 一回目の予選が終了し残った二名の選手が司会の指示でリングを離れ、会場の建物内に戻って行く。


 うーん。


 勝ち残った選手の内、一名は一般参加で。もう一名は普段見る騎士の恰好をしていた。ただ、それよりも。


 まぁ消えてないから、死んではいないだろうけど。


 そう、慣れた手付きで会場の従業員(スタッフ)に運び出される失格者達を見て、心配する。






 続く二回目の予選、試合をする場に現れた人目を引く一名の騎士に驚く。


 ――あれって。


「ん? あれ、サバ読みじゃないの?」


 同じ様に黒い髪をオールバックにした女性騎士を見ているであろう少女が、リングの上で静かな存在感を放ち立っている相手の方に向けて、言う。


「ええ、ユーリアは大会の常連で前回の優勝者です」


 ム。――ということは。


「ひょっとして、ジャグネスさんが敗けた相手って」


「おや、ご存知(ぞんじ)で?」


「よくは知りません。去年の大会で敗けたとだけ本人から聞きました」


「それは端的(たんてき)に言えば事実です。前回、大会の決勝戦でアリエルはユーリアと対戦し敗けております」


「――へぇ。騎士さまに勝つなんて、サバ読みって意外にやるのね」


「元より王国聖騎士団で総長をしているユーリアの実力は、王国騎士の中では随一です。反対に、匹敵するアリエルの方が異色と言えるでしょう。本来は総長補佐、位に籍を置くのが妥当(だとう)なのです」


「ならどうして、そうしないんですか?」


「本人に、それを望む意思が無いからです」


「――どこの世界でも、出世願望がないヤツって、嫌みったらしく見えるけど。騎士さまは、そんな感じに見えないわよ?」


「仰るとおりです。アリエルが騎士になった理由も、今の地位に執着するのも、全ては母親に起因いたします」


「ふーん。なんか、気になるわね」


「では今夜あたり」


 ――浴場で、か。まぁ自分は、知りたくなったら本人に直接聞こう。






 なんだ、これは。と思わず口から出そうになった言葉を心の内で呟く。


『予選第二組、勝者二名、控室にお戻りください』


 マイクの様な物で拡声し淡々と司会が言う。そして、それに従い静かに戻って行く騎士の後を残ったもう一名の、一般参加な上に珍しい男性選手が、やや放心状態で続く。


「見慣れた光景とはいえ、いつにも増してユーリアの試合は豪快かつスッキリとしておりますねェ」


 確かにスッキリとはしたが……。


 と、石台の周りを囲む砂地に散らばって倒れている失格者達に目を向ける。


「ね。サバ読みの棒に、なんか入ってんの?」


「いえ。皆、同じ物を配付(はいふ)しております」


「だったら。なんで、あんなにぶっ飛ぶわけ?」


 しかも片手で、力いっぱい振るう訳でもなく。


「詳しい事は存じませんが。ユーリア(いわ)く、体内の魔力で触れている物の重量を増やしているそうです」


「――要は持っている物が重たくなるんですか?」


「おそらくはそういう事だと思われます」


 だとしたら当てる瞬間の角度や重さによって生じる――。


「それって、裏を返せばダイエット()らずね。セコイわよ、サバ読み」


 ――そういう見解から始めるのか。


「ダイエット? なんでしょうか、それは」


 結果生まれた疑問を解く為に質問をする預言者の言葉を無視するというよりかは、考え事をしていて耳に入ってなさそうな少女に代わり。


「ダイエットというのは、主に体重を減らす事です」


「なるほど。――とすれば、少々誤解かと。ユーリアの力では物を軽くする事は出来ませんので。更に言えば生物には何一つ効果を発揮いたしません」


「――え。そうなの? だったら。ただの重たい女ね」


 言い方よ。






 予選の三組目――が今まさに始まろうとする中、とんでもない事態に。


 え、え? え。


 何度も探してはいるものの、全く以て姿が見当たらない。


「え。どうすんのよ? もう始まっちゃうわよ」


 しかし一緒になって探していた少女の心配を余所(よそ)に、司会の口からは開始を宣言する前の言葉が発せられ――た直後、もの凄く慌てた様子で自分達の探し人が建物内から出てきて台の上に駆け上がり、転倒する。


 そして起こる観客席からの笑い声に対して何処(どこ)か嬉しそうに頭を掻く遅刻してきた短い髪の騎士を見ていた少女が。


「まさか、寝てたんじゃないでしょうね?」


 十分に有り得る話だ。


「――であれば、私はその図太さを称賛いたします」


「褒めて、どうすんのよ……」


「いえアレほど人目を集めた後に、死んだふりとやらをどのように行うのか、実に興味がございます」


「あ、それはそうね」


 ……――大丈夫かな。と、開始を前に再度発せられる司会の言葉が聞こえているのかと不安になる相手の、動向を見守る。






 予選の三組目は、始まって早々にリング上で選手が入り乱れて争う文字通りの乱闘となり。其処(そこ)で見事に逃げ惑い続ける一名の騎士を皆と一緒に見守りながら幾度目かの危ない場面を見て、肝を冷やす――。


 今のは危なかった。


 ――次いで、頭についている物の上を(かす)める様に通り過ぎていった他選手の棒が他所の物を壊す。と間一髪で避けた短い髪の騎士が慌てて、その場を離れる。


 おお……。


「ほんと、しぶといわね」


 若干面白くなさそうなのは気の所為(せい)だろうか。


「しかし私の予想と異なり、よい動きをしております」


「ま、そうね」


 普段はダメと批判(ひはん)を受けているが、過去にトロールの攻撃を数分にわたり避け続けたり、なんだかんだで危機的状況を乗り切ってこれたのは、地力があっての事なのかもしれない。


「ですが、最後は総合の実力がものを言います。故に勝つのは、あちらとあちらの、二名でしょう」


 と預言者が他と比べて明らかに活躍している計二人の選手を指差す。


 ふム。


「おや、少し目を離した隙にホリーの姿を見失ってしまいました」


 え。――それを聞き、直ぐに見ていた選手から転じてリング全体を視界に収めつつ対象の姿を探す。――すると。


「あ。……アレじゃない?」


 疑いを持った感じで告げる少女の小さな指が示す先に、積み重なって倒れている失格者の山が。しかし肝心の相手は見当たらない。


 ム。


「どこですか?」


「ほら、一番下。見たことある(あし)が出てる、でしょ?」


 言われて、場所を見る。


 た、確かに……――けど。


「おや。アレが死んだふり、と言うものでしょうか?」


 だとしたら非常に危険な前振りだ。

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