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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
三章【異世界から来た女騎士と愛を交わした】

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第16話〔下ネタはヤメてください:大会編/予選〕①

 女神祭(めがみさい)最終日となる三日目の早朝、城内の野外広場に建造されていた立派な施設を前に残っていた眠気も覚める。


 もっと簡易的な物だと思っていた。


「……――朝の早いうちなのに結構、人が居ますね」


 時が経つにつれて増える人の流れに目を向けた後、自身の妹を背おう隣の女騎士に言う。


「観戦も参加も自由な、人気の大会です。まだまだ人は集まってきますよ」


「なるほど。けど、人気なのに開催するのは一日だけなんですよね?」


 しかも、その為にこんなドデカい建造物まで。


「はい。理由までは知りませんが、その分、警備も緩和され私を含めて大半が非番となります。ですので、この様にヨウと観戦をしに足を運ぶ事が可能なのです」


「なるほど。それを聞くと、短い日程に感謝したくなりますね」


 あれ、まてよ――。


「えっと、それはその、どういう意味で……」


「――ジャグネスさんは、参加しないんですか?」


「え。あ、っと、その……した方が、いいでしょうか……?」


 ム。


「いえ、そういう訳ではないんですが」


 なら何故。


「おや。アリエル、貴方今年は出場しないのですか?」


 声に反応して見る方から来ていた預言者が目の前で立ち止まり、質問をする。次いで、後ろに付いて来ていた二人も足を止め、(そろ)って朝の挨拶をした後――。


「それで、今年の出場を辞退するという話の答えは?」


 ――再び同じ問いが女騎士に。


「えっ、ジャグネス騎士団長は闘技大会に参加されないのですか?」


 驚く素振(そぶ)りを入れ、預言者に続いて短髪の騎士も同じ相手に問う。が逆に――。


「て、言ってるアンタはどうなのよ?」


 ――少女から質問を受ける立場になる。


「え。ジブンですか……?」


「そ。出ないの?」


「ジブンは……出たくありません。出ても、どうせまた予選落ちですし……」


 ム。


「――また、と言うことはホリーさん、大会に出た経験はあるって事ですか?」


「ええっとハイ、騎士になってからは毎年出ています」


 え。


「……毎年。なら、どうして今年は出ないんですか?」


「ワタシはもう九番隊ではないので、今年は自然と免除です」


 うーん。――話が見えてこないな。


「ええと、九番隊に居た時は、どうして出ていたんですか?」


「闘技大会には各隊から最少で一人は出なければならないからです」


「それで毎年、ホリーさんが……?」


「はい、隊長の指示もあったので」


 それを聞いて――相も変わらずタフな人だな――と思う自分と似た感じの印象を、相手の横に居る少女からも、受ける。


「しかし今年はそういう事もなさそうなので、安心です」


 確かに。


「――なら、今年は皆でのんびりと観戦しましょう」


「はい是非ともっ」


 で話が(まと)まったと思いきや、預言者が――。


「してアリエル、貴方が出ない理由は何です?」


 ――忘れていた事を思い出させる。


「ぇ? ぁ、えっと……」


 何故か、こっちに女騎士の視線がチラチラと向けられる。


 ム?


「おや。そういう事ですか」


 え、どういう事。


「しからば強制する気にはなれませんねェ」


 隣に居る騎士がホッと胸を撫で下ろす。


「さりとて心残りは今年の優勝者に贈られる賞品でしょうか。私の記憶が確かなら、優勝賞品は――ドキッ二人で行く楽園、二泊三日の旅ご招待! だったと思うのですが。まァ出場を辞退する貴方には関係のない話でしょう」


 行き先が名称で分からない謎の旅行なのだが。


 しかし耳をぴくりとさせた女騎士が、急に自分の両肩を掴んで顔を寄せる。――そして。


「ハイ私も、ヨウと一緒に楽園でドッキドキドにっ」


 俺は、なにも言ってませんよ。あと、ドがいっこ多い。






 会場の入り口広間で受け付けを済ませて戻った女騎士を迎えた後、短髪の騎士に顔を向け、預言者が口を開く。


「次はホリー、貴方の番ですよ」


「え、なにですか?」


「参加表に、貴方の名前を書いてくるのです」


「へ。そんなことをしたら、ジブンも参加するハメに……?」


「おや、(はな)から出場する腹積もりだったのでは?」


 一体イツそんな話に。


「いえ、あの、ジブンはさっき、出たくないと……」


「それではなに故、貴方もアリエル同様に鎧を着ているのでしょう?」


 ム。


「――わ私は、有事の際に直ぐ駆け付ける為にとっ」


 何故か短髪の騎士ではなく、女騎士が慌てて弁明する。


 なるほど、だから鎧を着ていたのか。


「だとしても通常は腕輪に収納しておくだけで、よいはずです。貴方達は最初から、出場する意思はあったのではないですか?」


 そう追究(ついきゅう)しようとする預言者の言葉に二人が黙り込む。しかし、直ぐに――。


「……ジブンは本当に、出るつもりはなかったのですが……毎年の事だったので、つい」


 ――妥当な言い分で短髪の騎士が抜ける。次いで――。


「でも、ジャグネス騎士団長はどうして出ないつもりだったのですか? ――ひッ」


 ――余計な(こと)を言って、小さな悲鳴を上げる。


 見てない上に今更だが、思わず声が出る程の恐い顔でもしているのだろうか。


「ホリーはさておき、実際のところはどうなのですか? アリエル」


「――えっと、その……――朝、自宅を出る直前まで悩んではいたのです。が、やはり不必要に武器を持って戦う姿を見られたくは……」


 ム。


「もしかしてそれって、俺に、ですか?」


 と聞く自分に、相手が恥ずかしそうに頷く。


 ふム。


「まぁ命のやり取りを積極的に行うモノなら、考えも変わりますが。お祭りの一環(いっかん)として開かれる訳ですから、それほど激しくはないんですよね?」


 問う相手を特定せず、知っているであろう顔ぶれに向けて、言う。


「仰るとおりです。祭りに興をさかす範疇(はんちゅう)の内容となっております」


「なら出来る範囲で怪我とかをしないように楽しんでもらえれば、俺は構いませんよ。それに、ジャグネスさんは騎士で団長ですから、戦っている姿を見て、悪く思ったりはしませんよ。むしろ応援します」


 言うと、照れているのか嬉しいのかよく分からない表情をして女騎士が自分の名を呟く。


「おやおや、そのような(げきれい)を受けてしまってはアリエルも奮起せざるをえませんねェ。という訳で、手早く名前を書いてくるのです、ホリー」


「ええッ? 今の話にジブン、まったく関係がなかったと思うのですがっ」


 確かに。


「細かい事などは、よいではありませんか。それとも貴方は洋治さまに大会に出ろと申すのですか?」


 へ。


「え。どうしてヨウジどのが……?」


「どうして? その訳なら先刻、貴方自ら説明をしていたではありませんか。大会には、各隊から最少で一人は出なければならない、と」


「え、でもジブン達は……」


「無論、(れっき)とした部隊ですよ」


 実に楽しげに手を打って、預言者が言う。


 そういえば、そんな話を以前にされた記憶も。しかし、そういう事はもっと早くに。


「……――そっそれなら、ジブンよりもエリアル導師のほうが……」


 短髪の騎士が、少し前に独りで立てるようになった寝惚け眼の魔導少女を見る。


「おや。貴方は年下で意識もハッキリとしない相手に、助けを求めるのですか?」


「年下と言っても一つしか……、それにどう考えてもジブンのほうが弱い……」


「多少の事は気合いで、どうとでもなります。元より貴方が諦めるのであれば、そこで大会を終了しますよ?」


 なんという(はた)迷惑な仕様――。


「――ええと。ホリーさんが無理をする必要はないですよ。大会には、俺が出ますので」


 と言った途端に女騎士が勢いよく詰め寄ってくる。


「駄目ですっ、絶対に駄目です! ヨウが出るなど私は、何であろうとも認めませんッ」


「いや、けどホリーさん嫌がってますし。第一大した危険はないと、さっき」


「だからと言って、危険がない訳ではありませんっ。万が一にも死んだら、どうするのですかッ?」


 ムム。


「あ。なら、始まったら即刻で棄権します。それなら」


「駄目ですっ、とにかく駄目なのです!」


 そして放つ言葉すらも迫る勢いで出す女騎士、の目に(うっす)らと見え始める。


 ム、ムム。


「――わっ分かりました。ジブンが出ますっ。ヨウジどのが言うように、いざという時は棄権すれば、なので――参加表に、名前を書いてきますっ」


 言って、止める間もなく短髪の騎士が受け付けに走って行く。


 すると話を傍で聞いていた少女が預言者に歩み寄り。


「ま。そんな権利、わたしの権限で無効にするけどね」


 世界を救った特権で、イジメに加担するのはヤメていただきたい。


「で、やけに熱のこもった演技ね?」


「はい。ただいま、救世主様にお借りしたスポ根なるものにハマっている次第です」


「そ。――見終わったら、次は超一流のスナイパーが出てくるヤツを貸してあげるわ」


「おお、それは誠に楽しみです」


 しばらく背後には立たないでおこう。

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