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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
三章【異世界から来た女騎士と愛を交わした】

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第11話〔どげんかせんといかん〕①

 女神杯(めがみはい)以降、そこそこの頻度で(おこな)われる事実上の訓練が終わり。自分の体を抱き締めていた相手が小さな間を空けて、静かに離れる。


「ど、どうでしょう……?」


 寝間着姿の女騎士が、やや不安そうな顔で、聞いてくる。


「そうですね、加減はできてきたと思います。ただ安定しないのと、腕よりは指の方が痛いです」


 言うと相手が手の平を見るようにして自身を観察した後、申し訳なさそうに。


「……スミマセン、このような事に付き合わせてしまって」


 ム。


「無理をして合わせている訳ではないので、気にしないでください。大事な事です」


「はい。そう言っていただけるだけでも、気が楽になります」


 とは言うものの、相手の顔は浮かない。


 ふム。


 ――訓練を始める前、何故それをする必要があるのかを説明された際に知った事。それは騎士と呼ばれる人達に必ず共通する、身体強化という技術。ただ詳しい話の(ほとん)どは知識として保管するしかなかった。


 教えられたところで、魔力というモノを知らない自分には無縁だからだ。


 その上で実感も出来る事は、強化する前は鍛錬(たんれん)をしている普通の体。故に個々の技術が長所になり短所にもなる。


 で今回の場合は優れているからこそ起きる反射的な、本来なら長所になる筈の短所を抑制する、特訓――。


 ――そういえば、何に反応しているのか謎のままだな。


「ジャグネスさん、ふと思ったので聞くんですが」


「はい、何でしょう?」


「そもそも、どうして反射的に強化してしまうんですか?」


「そ、それは……――ヨウに触れられると、恥ずかしくて……つい」


 いや、ほぼ直立不動(ちょくりつふどう)で対応しているのだが。


「――実を言うと、少し不安です」


「ぇ、……何がでしょう?」


「ジャグネスさんが反射的に体を強化してしまうのは、騎士としての本質に関わる事ではないかと思うんです」


「えっと、つまりは……?」


「下手に抑え付けることで、危険な目に遭わないかが心配です」


「なるほど……――でしたら、心配には及びません。ヨウ以外の者に心を許す事など、ありえませんから。ただそれでも心配だというのなら、それを踏まえた上で訓練すればいいだけのことです」


 相手が胸に手を当てながらに言い、にっこりと微笑む。――で続けて。


「それに……このような事は早く終えて、もっと沢山ヨウにくっつきたいので……」


 ム。


「今でも腕を組んだり、日常的に支障ない程度のコトは出来てると思いますが?」


「いえっそれだけでは足りません。もっと、もっとです」


 ふム。


「ヨ、ヨウは……思わないのですか? 私と、その……」


「もっとくっつきたい、と?」


「えっと……、はい」


「思わなくはないですよ。ただ……」


「ただ?」


「……――ちょっと失礼します――」


「へ?」


 ――と、相手を抱きしめる。






 特訓のかいあって確かに耐えていられる時間は延びた。しかしまだ、される側は実用段階ではない。


 訓練課題を増やしたほうがいいのだろうか。


 と、自室の真ん中で顔を真っ赤にして独り直立不動状態の相手を見、思う。


 さて、戻ってくるまで明日の準備でもしておこう。






 ――そして朝一、預言者の部屋の前で待っていた短髪の騎士に挨拶をしたあと、小さな欠伸(あくび)が出る。


「む、ヨウジどの寝不足ですか?」


「いえ、大丈夫です」


 思っていたよりも時間が掛かったもので。






 いつものように自分を中心として横並びする三人に、朝の一言を添えてから、預言者が本題を口にする。


「という訳で、女神祭(めがみさい)の時期が迫ってまいりました」


 なにが、という訳、なのかは分からないが。


「めがみさい――ということは、お祭りですか?」


「はい、お察しの通りです」


 いつものように小さく手を打ち合わせ、相手が微笑む。


「――どんなお祭りですか?」


「全日程は三日、初日と二日目は城下に出店が並び、最終日には城内の野外広場に特設する会場で闘技大会が行われ、締め括りは魔火(まび)が夜空に打ち上げられます」


 おお(まと)まってる、さすがだ。――ではなくて。


「闘技大会ですか」


 一番、気になった部分を口にする。


「おや意外にも洋治さまの関心は其処(そこ)に?」


「そうですね。向こうでも直接の観戦はしたことがないので、興味があります」


「なるほど。でしたら当日は特別席での観戦を約束いたします」


「一般席でいいですよ……」


否々(いえいえ)、どちらにせよ救世主様の手前そうなるかと」


 ――確かに。


「預言者様も観戦するんですか?」


「ええ勿論です。毎年、楽しみにしておりますから」


 全く以て趣味が多彩だな。


「それとも、私が隣に居ては(もよお)しを楽しめませんか?」


「え、何故ですか? 見るなら皆で見たほうが楽しいと思いますよ。なので、そんなコトは全く気にせず一緒に見ましょう」


「そうですか、洋治さまがそれほどまでに願ってくれるのでしたら、お断りする訳にはいきませんねェ」


 (にこ)やかに言う預言者。と同時に左右で動きがあったが、よく分からないので気にしないことにした。


「――ところで、今日の仕事は?」


 お祭りも大事だが、今、肝心なのはそっちだ。


「はい。本日は、いまお話しした女神祭に関連する内容となっております」


 なるほど。


「女神杯とは違い、女神祭の主役は民です。よって城に(つか)える我々は祭りを支える側に回らなければなりません」


 なるほど。


「それゆえに毎年、安全対策としての見回りや、(きょう)をさかす為にいくつかの店を出しております。今年は、その内の一つを洋治さま達にお任せしようかと」


 なる、ほど。


「何を出す店ですか?」


「はい、まだ何一つ決まってはおりません」


 え。


「であるからして本日は、いえ本日から一週間は、女神祭に出す店の準備に奔走(ほんそう)していただきたく(ぞん)じます」


「――……一週間?」


「女神祭は一週間後に開催です」


「え、まじですか」


「ええ、マジです」


 エエ……――。


「――何故、もっと早くに……?」


「うっかりしておりました」


 てへと相手が笑う。


「……――誰一人、話題にすらなってなかったんですが……」


 鈴木さんはそもそも知らないだろうから(のぞ)くとしても、誰か一人くらいは言いそうな。


「乙女になると忙しく、それどころではなかったのでしょう」


 どういう意味だ。


「という訳で、早急に宜しくお願いいたします」


 言って相手がニコニコと書類を手に持ち、こちらへ差し出す。


 うーん。






 ――そうして、いつもの部屋に戻ると待っていた少女に事情を説明する。


「なるほどね。で、ナニするかは、まだ決まってないわけ?」


「はい。というか普通に困っています」


「なんで? 思いつくとこから適当に選べばいいんじゃないの」


「それが思いつかなくて困っています」


「……水内さんて、お祭りには行ったことあるわよね?」


「子供の時に、二回ほど」


「その時に、ナニか買ったりしたでしょ?」


「いえ、買ってません」


「なんで……」


 と言われても――。


「――それに、こっちを基準にして考えなければイケませんから、向こうの流行(はや)りばかりを取り入れる訳には」


「そ、ね。――てなると、相談する相手は一人しかいないわね」


 ム。


「誰ですか?」


「ま、行けば分かるわ。久しぶりにね」






 で――やって来た店の個室、座敷の間で猫耳ゆるふわパーマの相手が。


「事情は理解しました。が、なんでうちが――じゃなくて、ワタシが今日、日勤だと知っていたのでしょうか?」


 たまたま……?


「アンタのシフトくらい、カネか時間があれば、なんとでもなんのよ」


 おまわりさーん。


 そして、借りた服を着ている短髪の騎士が表情を曇らせる猫耳ゆるふわパーマを向かいの席で見ながら。


「ヨウジどの、あの方はいったい……?」


「え、タルナートさんですよ? 聖騎士団総長の」


 言うと何故か相手がこっちと猫耳の方を交互に何度か見。


「嘘ガーン」


 この場合のガーンはどういう意味だろう。

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