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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
三章【異世界から来た女騎士と愛を交わした】

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第4話〔うん 今日も平和だ〕④

「よかったら、まだ手は付けてませんし食べますか?」


 と川沿いの手洗い場からハンカチで手を拭きながら出てきた少女に、聞く。


「え。なんで、食べないの?」


「そういう訳ではないんですけど……」


 うまく説明できずに悩んでいると、自分の腕を見た相手が。


「あ、ごめん。そういうコトね」


 ム。


「貸して、食べさせてあげる」


「え、いや。それなら、半分に分けてもらえませんか?」


「クレープを半分て、ムズカシイわね……」


 確かに。


「――なら、鈴木さんが食べた後の半分をください」


「ぇ。べ、べつにいいけど……」


 何故、そこで恥ずかしがるのだろうか。



 ***



「エリアル導師、ワタシなんだか急にお腹の調子が……」


 少し先に見える川を前に、隣の魔導少女に短髪の騎士が不調を訴える。


「なら、出せ」


 と(おもむろ)に少女が言う。


「イヤいくらワタシでもこんなところで、さすがに……」


 そして騎士が意図せず見た方向に。


「ちょっと、あそこにいる人達に場所を聞いてきます。エリアル導師は、先に行っててください」


 そう言い残し、やや急ぎ足で、短髪の騎士がクレープ屋の前にたむろしていた三人の女子高生に近寄る。――そして。


「すみません。便所を探してるのですが、どこにあるか、ごぞんじでしょうか?」


 聞いて、振り返る三人の驚く顔と後ろからでは分からなかった個性的な容姿に、互いが若干ビクつく。


「――え、なにガイジン? わたしマジ無理なんだけど」


「あたしもありえんてぃー、てゆうかオーマー?」


「いや俄然ギャングでしょ」


「……――えっとベンジョは……?」


「――ベンジョソン? なに、誰か探してんの?」


「ベンジョとかマジありえんてぃー、てゆうかニホンジン?」


「いや俄然ガイジンでしょ」


「……――ええっと……?」



 *



 そして再びベンチに座り、(ぼう)と景色を眺めている内、聞きたかったことを思い出す。


「そういえば、異世界での暮らしはどうですか?」


「――どうって?」


 食べていたクレープから顔を離し、相手が聞き返してくる。


「ええと、望ましい暮らしは……――あ。そういえば、家って、どうなったんですか?」


「家? ああ、家ね。建ったわよ、けっこう前に」


「なら、もう住んでるんですか?」


「住んでない。ていうか、今のところ住む予定もないわよ」


「え。何故ですか?」


「あんな大きい家に一人で住んでも、楽しくないでしょ?」


 そう言われても、家を見たことないのだが。


「……――ということは、(しばら)く今まで通り、お城で?」


「そ、ね。水内さんが一緒に住んでくれるっていうなら、話はべつだけど」


「いやそれは……」


「ん。言わなくても、分かってるわよ」


 ふム。


「でもね。水内さんが考えてるほど、甘くないわよ」


「……なにがですか?」


「んー。人の、気持ち?」


 こっちに聞かれても。


「――まあ自分と違う考え方をとやかく否定するつもりはありません」


「水内さんらしいわね」


 ム。


「でも、ちょっと変わったかも。――前は、もう少し他人行儀(ぎょうぎ)だったし」


「……――そうですか?」


「そ。もっと言うなら、自分にも他人にも興味がないって、感じだった」


「それを言うなら、鈴木さんだって変わりましたよ。なんというか、見ていて不安な気持ちにならなくなりました」


「どういうこと。わたし、水内さんを心配させるようなコト、してた?」


「してません。ただ、年齢のわりにしっかりとしているので」


「それって、ダメなの?」


「駄目ではないです。けど、不安にはなりますよ。知らなくていい事を知っている、自分よりも若い女の子を見ていると」


 そして相手の目を見る。と――。


「……そういうことは、気安く言わないほうがいいわよ」


 ――伏し目がちに頬を染めて少女が言う。――次いで、立ち上がり。


「ね。水内さん、わたしたちのコトがメンドクサクなったら、ちゃんと突き放してね」


 ム。


「――よく分かりませんけど。その必要があれば。ただ、心にもないコトを言えるほど器用ではないので、気づいてなさそうなら教えてくださいね」


「そ、ね。気が向いたら」


 曖昧(あいまい)だな。


「じゃ。そろそろ帰る準備でもしましょ」


「え、早いですね? まだ時間的に余裕はありますよ」


「いいのいいの。わたしは相当に満足したから。それに商店街は閉まるのも、早いのよ」


 なるほど。


「あと、あんまり連れ回すとカワイソウだし」


 そう言う相手に合わせて、自分も立ち上がり。


「自分は平気ですよ?」


「もちろん、水内さんのコトじゃないわよ」


 と空いている方の手をヒラヒラさせ、少女が歩き出す。



 ***



「ジャネバーイ」


 去り際やや大げさに手を振る三人組に、短髪の騎士が小さく手を振って答えた後――。


「……――しかし、異世界の子って変わってますねぇ」


 ――隣に居る相方を見ずに述べる。――と。


『随分とお楽しみでしたねェ』


「へ?」


 驚いて咄嗟に自身の持つ通信石を確認しようとする短髪の騎士に隣の魔導少女が、所持していた石を見せる。そして。


『念の為に聞いておきますが、そちらの状況は?』


 その質問に、再び騎士の顔が青ざめる。



 *



 で、来た道を戻る途中にまさかの出会い。


「なんで二人が……?」


 しかも何故にスーツ。と、後頭部を掻きながら苦笑いしている相手を見て、思う。


「なに、その恰好……」


「いやあは、はは、は……――?」


 すると気まずそうに笑う相手より前にスーツ姿の魔導少女が。


「ん。なに?」


 急に近づいてきた相手に問う少女。しかし無言の魔導少女の視線は。


「――なに、食べたいの?」


 そう問う少女に、今回は頷く相手。


「むむ。なにやら美味しそうですね」


 とスーツ姿の短髪の騎士も、物に顔を寄せる。


「――で、その。ホリーさんはなにを……?」


「ぇ? あ、ええっと……あ――」


 途端に相手が顔をハッっとさせ。


「――そうでした、ジブン便所を探していたのです。ヨウジどのは知りませんか?」


 ム。


「それなら、向こうにありましたよ」


「おお本当ですか、ならさっそく」


 言って動き出した短髪の騎士が、やや行った先で、振り返り。


「ワタシの分も残しておいてくださいね!」


 そして走り出す。






 結果、帰ってきた短髪の騎士に魔導少女が親指を立てて。


「イケる」


「ガガガガーン」


 はい、買いに行こうね。






 ――そうして、不安げに始まった一日が終わり、迎えた夜。


 何故か突然、以前に渡したクマのぬいぐるみを壁に押し付けてもう一方の手を添える魔導少女が、謎のキメ顔をして、自分を見る。


 なに……?


 更に――。


「ほろほろと混ざり合うこの一体感、素晴らしいっ」


 ――買ってきた土産を両手で掲げ、ダイニングで感嘆(かんたん)の声を上げる女騎士。を見て。


 うん、今日も平和だ。


 と納得して、頷く。

【補足】

 作中に出た≪ギャル語《若者言葉》≫の遣い方に、誤りがあれば、指摘をおねしゃす。m(_ _)m

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