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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
二章【異世界から来た女騎士と婚約する約束を交わした】

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第39話〔乙女の心をなめないで〕⑥

 盤上で対峙する赤と青の勢力。これから始まる戦いの幕が、もう直ぐ開けようとしていた。


「鈴木さん、ホリーさん、お願いがあります」


「ん。なに?」


「なにですか?」


「打ち合わせの時に言えばよかったんですが。今になって、すみません。――二人には、万が一に備えて、預言者様のうしろだてになってほしいんです」


「わたしにできるなら、いいわよ」


「ジブンにできるなら……」


 と息の合った返事をする二人。


()ずは、説明しますね」



 ***



「あぁ、やっぱり外はいいなッ」


 隣の馬上で体を動かしながら言うセシリアを見て、クラリスは微笑ましく――。


「――セシリアお姉さまは、――指揮官という(がら)では、――ありませんからね」


 ――と口にする。


「どういう意味だ……」


 言って、セシリアがメェイデンの方へ視野を伸ばす。


「しかしだ。これはこれで、悪くないな」


「――この様な戦い方は、――わたくしも初めて見ました」


「よほど戦う事が好きな奴が、メェイデンに居るんだろ」


「――女神杯(めがみはい)以外で国同士が争わないベィビアで、――戦い好きとは、――一度会って話をしてみたいものです」


「そん時は席を多めに、用意しとけよ」


「――はい」


 微笑んで、クラリスが返事をする。


「おし。準備ができたら始めるぞ。伝令、出しておいてくれ」


「――分かりました」



 *



「あくまでも万が一なので。ただ、もしそうなった場合はホリーさん、鈴木さんのことをお願いします」


「は、はい。でも、そうならないことを祈ってます……」


 不安そうな顔で短髪の騎士が、最後は呟くようにして、言う。


 ――さて、預言者様に連絡を。


「ね。水内さん」


 と思った途端に、少女が自分の名を呼ぶ。


「はい。どうかしましたか?」


「もう少し、説明してほしいんだけど」


「あ、いまのだと分かりづらかったですか?」


 変だな。小難しい内容ではなかったと思うけど。


「いまのじゃなくて。説明してほしいのは、水内さんの、考えのほう」


「ジブンも聞きたいです」


「――……俺の考え、ですか」


「そ。話してくれても、いいんじゃない。そろそろ」


「いいですけど。時間がないので大雑把(おおざっぱ)になってもいいですか?」


「いいわよ」


 と手振りを入れて、少女が承諾(しょうだく)する。


「なら。――この午後の戦いで、相手の(さかずき)を取って勝ちます。それが、俺の考える決着です」


「そんなことが、できるのですか? フィルマメントにはまだ沢山、兵が残ってますよ」


「けど本陣に人は、ほぼ居ません。たぶん」


「たぶん……」


「こっちは向こうと違って、相手の配置は見えませんからね」


「――だったら。どうして分かるの?」


「見えなくても、女神杯に参加できる人数は最初から決まってます。その数なら預言者様から聞いてますし、これまでの戦いで大体見当もついてます」


「な、なるほど……」


「という感じです。他に聞きたい事は、ないですか?」


「あ。ハイ、あります」


 短髪の騎士が小さく手を上げて言う。


「なんですか?」


「リエースの申し出を断った訳を、教えてください」


「――あ。それ、わたしも聞きたい」


「フィルマメントに対する加担を適当な理由をつけて止めると言ってた事ですか?」


「はい。申し出を断らなければ、配置を知られたり、奇襲を受けたりしなくて済むのに、どうして断ったのかと」


「奇襲は内容が分かっていればどうとでもなります。配置の方は、(むし)ろ無いと困るんです」


「え、どういうことですか?」


「現状、最終日まで(もつ)れ込めば残った戦力の差でメェイデンは敗けます。だからどうしても相手と正面から、ぶつかり合う構図を必要としたんです。けど勝てると分かってる相手は普通、無理はしてきません。理由でも、なければ」


「ということは、フィルマメントが出てきたのにはちゃんと理由があるのですか」


「あります」


「そ、それは……?」


「単純に言えば、勝つことへの(こだわ)りと執着心(しゅうちゃくしん)です」


「――でも勝ちたいなら、余計に無理はしないんじゃないの?」


「普通はそうですね。ただ本心では――」


 と。


「――すみません。先に、預言者様に連絡を」



 ***



 整列する自軍を越えて、敵軍を眺めていたセシリアのもとに一人の兵がやって来る。


「セシリア様、報告です」


「してくれ」


「はっ。マルセラ様からの報告で、先頭に居るのはメェイデン側の指揮官とのことです。更に後方で魔導団を(ひき)いているのは、メェイデンの騎士団長と」


「騎士団長……。ああ、アリエルか」


「――魔導団の護衛でしょうか」


「だろうな」


「――その分、――前線の戦力はさがります」


「ますます勝ちがみえてきたな」


「――連勝国をあまく見ては、――痛い目に合いますよ。――捕虜の件も」


「メェイデンと正面から戦って勝てる絶好の機会だぞ。小さい事は気にするな」


「――……セシリアお姉さまは、――マルセラに甘すぎます」


「あいつは関係ないだろ……」


「――わたくし、――ちょっと不愉快(ふゆかい)です」


「なんで……」


「――冗談です」


「……――とにかく。わたしの号令で一陣は突撃だ。続いて出ろとマルセラに伝えてくれ」


 と兵にセシリアは言う。


「はっ」



 *



 交信が終え、話を戻す。


「――誰だって、より良い結果を求めます。特にフィルマメントは魔法大国のリエースに勝って決勝に(のぞ)んでる訳ですから、半数が魔導団員とわかれば強気になります。更に本陣を空にする事で一層、勝機も見出(みいだ)せます」


「では執着心というのは?」


戦場盤(せんじょうばん)です。盤に頼り過ぎたが為に……――」


 ――始まった。



 ***



 セシリアの号令で交戦が始まると続けざまにマルセラ率いるペガサス団がメェイデンの陣を上から、――飛んで越えて行く。


 そして本陣を目掛けて飛ぶペガサスの群れを見送るセシリアが、にやりと笑って言う。


「こっちも全員で相手をするなんて約束はしてな――」


 だが次の瞬間にはもうセシリアの顔から笑みが消えていた。



 *



「盤に頼り過ぎたが為に、見て判断する事を(おろそ)かにしてしまったんです。だから見たままを信じて、単純な答えを出してしまう」


 自分達の居る本陣へ向かって飛ぶ、赤の集団を見ながらに言う。


「どういう意味ですか……?」


「騎士がローブを着てはイケないなんて規則(ルール)は、ないんです」

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