表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロット・シン
二章【異世界から来た女騎士と婚約する約束を交わした】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/293

第29話〔ちょっと寝違えました〕②

 戦場盤(せんじょうばん)の様子を見て、真っ先に立ち上がったのは魔導少女だった。そしてその足でテントの外へ出る垂れ幕に向かって歩く。


「え? エリアルちゅわんどこ行くの」


 隣の席に座っていたおかっぱ少女が顔の向きごと、立った相手を、目で追って、問う――が返事はなかった。


「妹さん」


 何故か自分の掛けた声には応じて、相手が立ち止まる。


「ジャグネスさんのところへ、行くんですか?」


「うん」


「止めても行きますよね」


「うん」


「――分かりました。馬には、乗れますか?」


「乗れる」


「乗る馬は」


「ない」


「なら、先に馬を」


「あ。ワタシの馬でよかったら」


 短髪の騎士が小さく手を上げて言う。


「借りる」


「はい、エリアル導師のお好きなように」


 いやそれなら。


「ホリーさん、妹さんと一緒に行ってもらっても、いいですか?」


「えっ。ジブンがですか」


「一人でいい」


「だそうです……。というか、行ってもワタシでは役に立たないですよ」


「ダメ騎士」


「はいッ」


「……――妹さん。一人で行かせるのが心配で、言った訳ではありません。行くのなら、全員で無事に帰って来てほしいからです」


「その口振りからして、洋治さまには何か策がおありなのですね」


「策というか、考えはあります。なので妹さん、ホリーさん、お願いします」


「……うん。分かった」


「うぅ不安です」


「どうせ死ぬなら。アンタだって、誰かの役に立って死にたいでしょ」


「とうとう、この時が」


 来てません。



 ***



 ペガサスから地上におりたマルセラは出迎えてくれた二人の姉に近づき、結果を報告する。


「思ってたより相手の反応が早くて、全部は巻き込めなかったけど。こっちの思惑(おもわく)通りには、なったよ」


「戦場盤で見てた。問題はない、上出来だ」


「もっかいくらいイケるかも」


「焦るな、仕損(しそん)じるぞ」


「そう? (めし)は熱いうちに()え、じゃないの」


「なんだそれ……」


「――まぁまぁ。――マルセラ、女神杯(めがみはい)は明日もあります。――急ぐ必要はありませんよ」


「時間もないしな」


「えー」


「おまえな……」


「ね。お願い、あと一回だけ」


 二人の姉に手を合わせて、マルセラは二度三度と懇願(こんがん)する。


「……三つは残しておきたい。だから、二個だけな」


「やったーっ」


「ただおまえは残れ」


「ええっ」


「あのなぁ。隊を任される身で、ほいほい戦場に出ていくなよ……」


「ヤダ」


「おい……」


 そして始まる二人の言い合い。それを見て、クラリスはゆったりとした足取りで、マルセラと共に帰ってきた二名のところへと向かった。



 *



「その辺で、待機してください」


 テーブルの上に置いたブローチを通して交信する相手に、そう指示をする。


『わ、分かりました……』


 不安そうな声で返事をする相手と、もう一人の存在を表す二つの青い点から転じて盤上の青い集団の様子をうかがう。


 午後の部が終わるまでは、あと三十分。現状で散らばった青は再び団結して、撤収したと見せ掛け戻ってきた赤と再度交戦となり。なんとか今の状況を維持している。


『ヨウジどの、ワタシ達の周りに敵は……』


「戦場盤に見える敵は、二人の近くには居てません」


『初日みたいに、突然襲撃されたら……』


「たぶんないですよ。二人を奇襲する理由が今は、ないですから。――それよりも、妹さんの方は?」


『はい。エリアル導師なら、いつでも大丈夫そうです。でもどうして、馬からおりてはいけないのですか? おりたほうが絶対に安定すると思いますよ』


「これといった理由はないです。ただ、後々何かあった時には都合がいいので」


『なるほど。ヨウジどのを信じます』


「なにが、なるほど、よ。アンタ絶対、分かってないでしょ」


『はい……』


「おや。救世主様は、洋治さまのお考えがお分かりに?」


「モチロン、分かんないわよ」


「……――まあ大した考えではないので」


「ならばどのようなお考えで、エリアル達をこの位置に?」


「直接、加勢に行ったところで状況は変わりません。実際このまま何事もなければ、残りの時間を交戦して今回は終わりです。けど、さっきの攻撃をもう一度受ければ()が悪くなります」


「もう一度、来るでしょうか」


「分かりません。だからこそ備える必要があります。来ないのなら、それでいいです」


「仰る通りで」


「――ったく。昨日から、やりたい放題ね。あちらさんは」


「こうなるように、仕向けられていましたからね」


「え。そうなの?」


「洋治さまは、前もって全て察しておられたのですか?」


「分かっていた訳ではないです。なんとなく、何かある。と思っていただけです」


「そう思った理由が、あるのでしょうか?」


「一言でいうと、昨日からずっと違和感がありました」


「どのような?」


「最初の奇襲。あれは、損得でいえば、損です」


「そうでしょうか。見事、敵の罠にはまった感じでしたが」


「確かに奇襲としては成功です。けど、その所為(せい)で次からは間違いなく警戒されます。不意打ちは、とかく、そういうものです」


「相手にとって好機(こうき)ではなかった、と」


「はい。奇襲するには早いです。次につながる案でも、なければ」


「結果から見て、あったというコトでしょうか」


「はい、警戒されているコトを逆に利用したんです。今日の午前中は、こっちがどう反応するのかを見られました。午後は、それで誘導されたんです。攻撃した時に、最も被害が出るように。――そして魔導団員を奇襲したのは、邪魔な相手を戦場から遠ざける為です」


「それは、さすがに考えすぎじゃない? 相手がビビるかなんて、分かんないわよ」


「女神杯は二年に一度です。魔導団員の数が少ないのを相手が知っていても、不思議ではないです。特に不意打ちされた理由が分からないうちは、出したくても、出せません。ただ偶然という意味でなら、一発で狙った獲物がつれたのは偶然かもしれませんね。まあ、唯一の有効な手段なので(はな)から確率は高いと思いますけど」


「納得をしました。どうやら、今回の女神杯はこれまでとは似て非なる国との一戦と考えた方が、よさそうですね」


「かもしれません」


『あのぉ』


 (かしこ)まった声が、ブローチから発せられる。


「どうかしましたか? ホリーさん」


『はい。ペガサスが出てきました』


 え。


 盤を見ると、赤い点が二つ、青の集団へ向かって飛行していた。


「様子を教えてください」


『えーと。馬の下に、(ヒモ)で、(タル)みたいな物をぶら下げて飛んでいますね』


 樽……――あ。


「それ、樽の中は火薬ですね」


『なんと』


 色々と合点もいく。


「え。先に使われちゃったの? ダメ騎士の出番、完全に、なくなっちゃったわよ」


『ガガーン』


 イヤ、そこはガッカリするところでは――て、急ごう。


「妹さん、いま居る場所から樽のヒモを切れますか?」


『イケる』


「ひも?」


 少女が、不思議そうな顔で聞いてくる。


「はい。なにか……?」


「ん。なんでもない、水内さんに任せる」


 ム?


「――えっと。そしたら妹さん、直ぐにヒモを切って、樽を落としてください。味方の上で切る訳にはいかないので」


『分かった』


 これで、一安心だ。


『えっ。エリアル導師? ――ワ、ワタァアアア』


 そこから、ノイズのような強い風の音が入り、声がかき消される。


 この展開は予想してなかった。



 ***



「今日はもう終わったし。あなた達は、気にしないで戻っていいよ」


 謝罪しに来た二名の隊員が、マルセラの指示に従い、一礼してから去っていく。


「――おまえが、気に病む事でもないからな」


 部下と話す妹を後ろで見守っていたセシリアが相手の肩に手を置いて言う。


「え、――なにが?」


 姉の意図が分からず。マルセラは相手に顔を向けて、そう聞き返す。


「おまえな……」


「――セシリアお姉さまは、――マルセラのことを心配してるのですよ」


 ゆったりとやって来たクラリスが、二人の輪に加わり。三姉妹が揃う。


「私、心配されるコトしたの?」


「――先の失敗を、――マルセラは悩んで?」


「あ、――タル爆弾のコト?」


「――はい」


「私、ぜんぜん気にしてない、よ」


「ウソつけ。考え込んでただろ。顔を見れば分かるぞ」


「考え込むっていうかは、ムカっとしたの」


「なんでだ?」


「だって普通はヒモじゃなくて、タルの方を狙うよ」


「おかげでこっちは部下を失わずに済んだんだから、いいだろ」


「よくないッ。ぜったい、バカにされたんだよっ」


「そんな訳ないだろ。子供じゃあるまいし」


「ぜったい、そう!」


「ないっ」


「そう!」


「だからないってッ」


 そして始まった言い合いをクラリスは声をしのんで笑い。しばし見ていることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ