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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
一章【異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした】
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第3話〔貴方は あのその斬られたい ですか?〕③

「ドコと聞かれても……――」


 ――そもそもこの人、タンスの引き出しから……――というか、なんで騎士の恰好を、しかも剣まで――……常識的に考えて、今、目の前でオカシナ事が……――。


「――なにがどうなってッ」


 座っていた椅子が倒れる勢いで立ち上がり、後退りながら相手の方を見、声を張るも気持ち上擦る。


「え? 何、え? 何々、な――何ですッどこですっ」


 と、周囲をキョロキョロし出す相手の姿に、何故か心が落ち着く。


「いや、そちらのことですけど……」


「ぇ。――私?」


 真っ直ぐに頷いて返す。


「ぁぁ、私の事ですか。――急に言うものですから、驚きました」


「ス、スミマセン。少しずつ、状況が理解できてきたみたいで……」


 倒れた椅子を元に戻しつつ、相手の方を見て、言う。


「それは無理もありません。突然の事で色々と頭が混乱しているのでしょう。かく言う私も状況がイマイチつかめず、どうしたものかと――って、ナゼ貴方にその様な話をしなくてはイケないのですかっ」


 テーブルの上を両手で打ち、前傾した姿勢で、相手が声を上げる。


 別に頼んだ訳ではないのだが。


「――あの。一旦(いったん)、落ち着きませんか?」


「私は、至って冷静です」


「ええと、そうではなくて……一度、今の状況を整理しませんか? そちらが必要なくても、自分はそうしてもらえると助かるんで」


「……――分かりました。わ私は、しなくても問題などありませんが、貴方が助かると言うのなら、救うのは騎士の責務です」


「はい助かります。一先(ひとま)ず、お互い椅子に座って、話をしましょう」


 ――で、警戒した態度を見せつつ、先ほどまで座っていたテーブルを挟み対面する席に相手が着席する。


「それで、どの様なお話をされるのでしょうか?」


 かなり協力的な姿勢からして、この状況を望んでいたのは自分だけではなかったのだと気づく。しかし話の腰を折るのは避けたいので、黙っておく。


「順番に、質問しませんか? そちらからして、答えたら交替(こうたい)しましょう。返答できないものはカウントしないやり方で」


「……――分かりました。私は一向に構いません」


 ム、カウントで伝わるんだな。まぁ見た目は英国人だし、これまでの会話は大体成立してるから、変ではないか。


「それでは、お聞きします。ここはドコでしょう?」


「大きく言えば、日本です」


「……ニホン? それは、いま居る国の名前でしょうか?」


「はい、そうです」


 いまのは二回質問した気がする。が、細かい事は気にしないでおこう。


「答えたので、こっちの番です。ええと――ジャ、ジャグネスさん? は何者ですか?」


「アリエル・ジャグネスです。先ほど言った様に、メェイデン王国の騎士団に所属する、騎士です」


「すみません、聞き方が悪かったです。ジャグネスさんは、何の目的を持っている方なのかという質問です」


「目的、ですか。そう、ですね。……詳細を、お話する訳にはいきませんが、ある人を探す為に、こちらの世界へ来たとだけ言っておきます」


「要は人探し、ですね。分かりました。質問をどうぞ」


 次は、こちらの世界、という言葉が示すところを聞こう。


「では――えっと、貴方は……」


「あ。スミマセン、名乗っていませんでした。自分は、水内(みなうち)洋治(ようじ)です」


「そう、ですか。ではヨウと」


「好きに呼んでください」


「分かりました。――ヨウ、貴方はどの様な身分の方なのでしょう?」


「ええと。一般的な……市民と、思います」


「要するに庶民(しょみん)ですね」


「そうですね――」


 ――なんだろう。そういうのを気にする人なのかな?


「そう、ですか。できれば国王との謁見(えっけん)を頼める役職か近しい身分であれば幸先はよかったのですが。そう易々(やすやす)と事は運びませんね」


 そもそも国王なんて居ないのだが。


「たぶん無理ですよ、それ」


「その様ですね。――貴方の質問を、どうぞ」


 なんかガッカリされてるんですけど。


「……――ええと。さっき言ってた、こちらの世界というのは、どういう意味ですか?」


「そのままです。私は、ベィビアと呼ばれる世界から、こちらの異世界へ、来たのです」


 見るからにやる気の削がれた顔で、悄然(しょうぜん)と相手が答えを返す。


「……それ、冗談ですよね?」


「私はふざけてなどいません」


 バカな。いやしかし、今日日、宇宙人だの超能力者だのが頻繁にテレビ出演をする時代。そういう妄想癖を持った人が存在していてもオカシクはない。けど、引き出しから出てきた事実をどう解釈すれば――……本物? いやいや、そんな訳はない。けど――。


「ぁ、あの……?」


 ――……まさか手品? だとしても何故この家に出てくる。――……ドッキリ? いや、それだと自分を狙う理由が全くない。なにせ、そういうのとは無縁の。


「あの、ぁ……――わ、私を無視しないでくださいッッッ!」


 突として耳をつんざく声量、そしてテーブルを叩く衝撃音。更には角部屋唯一の隣人から壁越しに(ドン)の忠告まで受けた後、ミシミシと(きし)む食卓の揺れがおさまる。と、静かに相手が口を開き――。


「――ぁ。かっ、壁の向こう……――まさか、トロールを捕らえているのですか……?」


「そんな聞くからに危険な生物は居ません」


 次いで、立ち上がり剣の柄に手をかけていた相手を着席させる。


「すみません、ちょっと考えごとをしていて。――なんでしたか?」


「え? あ、確認のため、聞こうと思い……ま、まあ、聞いたところで、返る答えは知れているでしょう、けど――……暗号の解読が出来る人物の、心当たりはありますか?」


「全くないです」


「やはり、ですか――」


 ――ガッカリして、相手が項垂(うなだ)れる。


 感情が表に出るタイプだな。


「――ちなみに、どんな暗号ですか?」


「……――見てみますか?」


「いいんですか?」


「内容が分からなければ、見ていないのと同じです」


 ――まあいいか。


 腰周りに付けた袋から折り畳まれた一枚の紙を取り出し、どうぞ。と相手が自分に差し出してくる。(それ)を、テーブルの中央で受け取り、手元に寄せて開く。


「こちらの世界へ来る直前に、預言者様からいただいた物です。探し人の居場所を(しる)したものらしいのですが、内容を理解できず。貴方の知人に解読出来そうな人物でも居ればと思い、聞きました。しかし望みは、なさそうですね」


 開いた紙の真ん中に横一行――○○市○○区……――五〇四号室。


 ム? ――……見たことが? いや、ここの住所ッ? しかも隣ッッ?


「もう、いいですか? そろそろ返してください」


「……――隣ですね」


「トナリ? ――どういう意味でしょう?」


「この紙に書かれている場所は、いま居る、この建物です。で、探し人は、隣の部屋に」


「それは、どういう意味でしょう……?」


「……――要するに、ジャグネスさんが探してる人の居場所が分かりました」


「なる、ほど。しかしそれだけではハッキリとした場所ま……で? デ、デェエエええええっっ?」


 なに、この()り取り。

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