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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
四章【異世界から来た女騎士と】

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第97話〔まさかワタシが勝つなんて〕⑤

 結局疑いを晴らす決定打に欠ける内容ではあったものの、場の雰囲気は改善し次の会場に到着したことで有耶無耶と保留。で――。


「――ここは?」


 と外観は他と同様の会場を見つつ、自分にとっては常の案内役に内部の事を尋ねる。


「こちらの第三会場でも、最強の乙女を選出するために苛烈な争いが行われております。しかしながら本種目は他の競技とは一線を(かく)する、まさに天賦の才を持ちうる者のみが勝ち残り勝利を収める、血も涙も出ない冷酷な闘争と化しているでしょう」


 そんな血生臭い乙女はイヤだな……。


 すると内心の不安が顔に出ていたのか、解説をした相手が気遣う雰囲気を醸し出し。


「……どう致しますか? 実際を目にするのが(はばか)れるのであれば、外壁の映像を観るなどでも私は構いませんが」


 うーん、あんまり刺激的なものは好みではないし。そうしようかな……。


 ――けど、誰か出ているのかは聞いておかないと。


 そう、決断をし兼ねる自分の視界にひょいと横から騎士が、顔面どアップの末に下がり、入ってくる。


「ヨウジどの、――いいですか?」


「は、はい……。何ですか?」


「ワタシ、この試合は直接目にしたほうがいいと思うのですよ」


 ム――。


「――それは、どうしてですか?」


「ワタシの記憶が確かなら、この会場には救世主さまが居ると思います」


 なぬ。


「救世主さまはワタシ達よりも先に向かわれたので知らないとは思いますが、一人だけ観戦してもらえなかったと分かったら怒ると思うのですよ、ワタシ」


 それは、――確かに。


「なので会場内を観に行ったほうがいいと思われます、よ?」


 ふム。


「そう、ですね。分かりました。――そうしましょう」


 何故かは分からないが、もし怒られるとしたらホリーさんのような気がするし、行こう。






 そうして前述の説明もあり、やや恐る恐る会場の中に入り出場した選手達が試合を行う石造りの台を中央とした階段状の観客席から、沸きに沸く声援を受ける中心で――。


『おおっとッ謎の美少女Sの攻撃が見事に命中っ! 相手選手の後が無くなりました!』


 ――古くから見掛ける玩具、もといピコっと鳴るハンマーを振り下ろす見るからに自信に満ち溢れた美しい髪を(なび)かせる少女を観賞する。


『では決着が付くかもしれない三戦目っ。ジャン、ケンッ』


 そう、マイクらしき物を握る司会者の声に合わせ客席からも発せられる次戦の音頭。


 て――。


「――……なんですか、これは」


 と隣席の預言者に顔を向け、尋ねる。


「はい。此度は過去に類を見ない試みを多数取り入れた大会となっており、この第三会場ではまさにそれが好評であるかを確かめる上で打って付けの場と思っておりました。ゆえに、この様子を見る限り十分な成果を得たと判断してよさそうですねェ」


 たしかに、盛り上がってはいるが……。


『おおッ謎の美少女Sッ華麗に防いだっ!』


 同時に左の席で観戦している騎士を含めた客席全体からワーと高ぶった声が上がる。


 そしてその波がやや収まったのを確認し。


「……――冷酷な闘争というのは……?」


(まさ)しく、血も涙も無い過酷な対立と思いますが?」


 違いますか。といった顔で見てくる、相手から――台上に目を転じ。


 確かに血も涙も出てはいないけども……。


 と、繰り返される遊戯の行く末を暫し観る。






 置かれた台を間に対戦する相手と正面から向き合う二人が交わす三種の拳。その三すくみで構成された古くから伝わる古典的な遊戯を元に繰り返される攻防は、拳遊びに勝った者だけが攻撃を許され、負けた者は守りに徹しなければいけない。


 それは判断力や瞬発力だけでなく、何より運を天に任せた――。


 ――あ。そういうコトか。と気付き、預言者の方を見る。


「さっき言ってた、天賦の才って……」


 次いでこちらを向く相手が、(ニコ)りと――。


「――運勢とは、何事に()いても付き纏う巡り合わせ。それは乙女とて例外ではございません」


 それは、そうだけど……。も。


「だからって、どうしてこんな……」


 バラエティ番組の一区画(コーナー)みたいなノリにしたんだ。


『それではっ、準決勝進出を懸けた第四試合最後の戦いを始めたいと思います』


 続いて沸く観客の声に包まれる舞台上に現れる二人の選手。その一方が、繰り返し大きな声援を受けていた――。


『まずは参加者名“謎の少女S”として、ここまで一度も被弾なく勝ち上がって、ェ? ぁ、ちょっとっ』


 え。


 ――小柄な少女が、唐突に台上で小さく跳ねて司会者のマイクを奪い取り、皆の注目を集める。


 ス、鈴木さん、何を……?


『参加票に書いたのは“美”少女よ。間違えないでくれる?』


 そして()手繰(たく)った最初の遣り方とは反対に持ち手の方を出す作法で返そうとする少女を見て、戸惑いつつもマイクを受け取る感じの女司会者が改めて仕事道具となる拡声器を口元にもっていく。


『も……申し訳ありませんでした』


 次いで、気を付けなさいよ。と拾われる声、同時に会場内の雰囲気が一気に元の状態に戻り、選手紹介の続きが始まる。


 ま、何処に居ても鈴木さんは――鈴木さんだ。






 さて。


 試合はこれから佳境に入る様子ではあるが――。


「――そろそろ、俺は次の観戦をしに行きますね」


 あくまでも目的は皆を見て回る事。なので観ていたい気持ちはあるものの、時間的な配分は考慮しなければならない。


 そんな訳で立ち上がる自分を、左右の二人が顔を向けて追い。


「え、――もう行くのですか?」


「はい。早めに動いておかないと、万が一観れなかった時に悪いですから」


 まぁ皆の実力からして、初戦で敗退しているとは考えづらい。が絶対とは言い切れない。


 ただ――巻き込む必要はないので。


「もし、ホリーさんさえよければ残ってもらっても。きっとそのほうが鈴木さんも喜ぶと思いますし」


 と言うか、もの凄く観ていたい感がするし。


「そ、……そうでしょうか?」


「はい。――勿論、無理にとは言いません。なんでホリーさんの意思で、自由に決めてください」


 ただ決断に時間が掛かりそうなら先に行くけど。とは言わず、一先ず相手の返事を待つ。


「ぅーん。ワタシとしては、――ヨウジどののほうがいいとは思うのですが……」


 ム。


「いいと言うのは?」


「ぇ? ぁ……いやぁ、それをワタシの口から言うのはダメとぉ」


 いや、なんでよ。


 内心でツッコミつつ、何気なく舞台の様子を窺う。と――。


 ぁ。


 ――立っていたこともあり、離れた客席に居ながらも迷わずいつもの様に自分が上から相手を見る形で目が合った、次の瞬間。


『ああっとッ美少女Sに初めて攻撃が命中っ! いったい何があったのでしょうか!』


 おぉ……。


 理由は全く分からないが、早々に退席したほうがよさそうだ。


 ――何故なら。


『こっこれはスゴイッ、美少女Sの一撃を受けっ相手選手が足場から吹っ飛んだッ』


 なんとなく、ここから先の展開は血を見そうでコワい。






 結果そそくさと三番目の会場を後にし――。


「よかったんですか?」


 ――と横を歩く預言者に真意を聞く。


「言うまでもなく。私の目的は当初から洋治さまを導く事、なんら差し障りありません」


「……そうですか」


 なんだろう。なんとなく――怒ってる?


 すると、そんな気がする自分を足早に追い越す相手が宣言どおりに前を歩き始め。


 これまた同様の平凡な感覚を基に。


 今は、そっとしておこう……。と、ここ一年で(つちか)った無難な対応を講じることにした。






 女神杯予選が行われている今日、五箇所ある会場の四番目となる建物を前に。


「これは……?」


 明らかな疲弊を感じる人達が其処彼処(そこかしこ)と居る様子に当惑しながら、癖付いた流れで白のローブを着た相手に顔を向け、答えを求める。と、小首を傾げつつ――。


「――はて、私の思い違いでなければこの会場で行われている種目は」


 途端に背後で人の気配がして。


「あれェ、――ようじ?」


 ムと振り返る。そして、予想に違わず立っていた銀髪の少女に。


「マルセラさん。……ええと、この様子は一体……?」


「ぁ、ウン。それがね、――狩り物競争ってのをしてるんだけど」


 かり物……? ――何故に。


「それで持ってくる物を会場の外から頂戴しろって言われたんだけど。出店にはなーんにも無いし。だから皆、走り回ってクタクタって感じかなァ?」


 なるほど、そういう(コト)か。


 ただそれにしては一人だけ元気そうだな。と他の選手と比べ平然としている目の前の少女に、隣で話を聞いていた預言者が歩み寄る。


「マルセラ様、始まる前に狩り物表を配付されたと思いますが」


 次いで、あっと思い当たる。

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