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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
四章【異世界から来た女騎士と】

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第49話〔差し当たって これは事故なのだろうか?〕⑩

「鈴木さんは、どうしてマイラさんの事を知ってたんですか?」


 席に戻った少女を改めて見、率直な疑問を(てい)してみる。


「ん。モチロン、初対面よ。今朝、知ったばかりのね」


 いつも通り関心のない、平淡な口調で尋ねた相手が言う。


 ただ今更、驚くほどの事ではない。けど――。


「――と言うコトは、預言者様がらみですか?」


「そ。でもカン違いしないでね。一緒になって、なんか(くわだ)ててるワケじゃないから」


 まぁどちらかといえば、本人の意思とは無関係に手伝わされてる可能性がある。


「鈴木さん的には、どうなんですか?」


 自分と比べるなら天と地ほどの差がつく洞察力を有す相手に、現時点までの状態(いけん)を伺う。


「ま、この話に裏は無いんじゃない? ただの厄介払いでしょ。それか、嫌がらせ?」


 嫌がらせ……。


「――この話、と言うのは?」


 途端に質問した少女の雰囲気が自ら発す何処か不穏な空気で移り変わる。


 ム……?


「――……ま。フェッタなりの考えで、いろいろとやってるんじゃない?」


 預言者様の考え……。――そういえば、出発する時に何か。


 カチャと静かに部屋の扉が開く。


 そして、ム。と振り返る、自分の視界を横ぎり――。


「さきほどは……どうも」


 ――座っている少女の傍らで、村娘が静粛に頭を下げる。


「べつに、わたしはフェッタに頼まれただけよ」


 すると村娘が、フェッタ? と小首を傾げる。ので、横から預言者の名だと若干声を抑えて伝える。


「……――それは知っています」


 そりゃそうか……。――よし、余計な気回しはせずに黙っておこう。


「――……なぜ、フェッタさまが私の事情を知っているのですか?」


「そんなの、わたしが知ってるワケないでしょ? て言うか、アンタは余計なコト考えずに、前だけ見て、生きなさいよ。今後は自分次第なんだから」


「それは……――はい、分かっています」


 で何故か、村娘がこっちを向く。


「ヨウジさん、お願いがあります」


 ム、呼び方が。――と、自分も相手を正面にして見る。


「はい、なんですか?」


「……近々、お城の方に行きます」


 ム――。


「――そう、ですか……?」


「……だから、お願いできますか?」


「ええと……、何の?」


「案内です」


 あー――。


「――街の、案内ですか? いいですよ」


 とは言え人に教えられるほど詳しくはないけど。ただ――。


「――村の方は、いいんですか?」


「今は、コボルト達も居るし――平気です」


「そうですか。そういう事なら、いつでも連絡をください」


 と返し。嬉しそうに頷く相手が再び少女との会話を始める様を、なんとなく水の入ったコップに口を付けながら、客観的に見守る。そして――。


 ――なんか急に、明るくなった?


 と、これまでの印象を(くつがえ)すほど陽気に話すその姿に、内心で首を傾げる。






 そうしてなんだかんだと時は過ぎて昼食後、いつしか完全に打ち解け合って話す少女と村娘に騎士と魔道少女が加わり、囲むテーブルに談話の花が咲く。のを――。


「いやぁ、ジブンは最近になってようやく着手し始めたコトなので、まだまだハヤりには(うと)い情報ばかりですよぉ」


「そう。都会は今、どんな子が居るの?」


「んーと、街に出れば可愛かったりキレイに着込んでいる人ばかりですね。救世主さまみたいに」


 唐突に騎士の顔が向かいに居る少女の方を向く。


「……なんでそこで、わたしに振るのよ。こっちのファッションやトレンドなんて、なんにも知らないわよ?」


「ファ、トレ……?」


 聞き慣れない単語の所為か、汲み取り切れなかった部分がある事を騎士が表情(ニュアンス)で示す。


「ま。わたしくらいのセンスになると、時代が後からついてくるのよ」


 というかは、ある意味で次元が違う。――コップに口を付け、水を飲みつつ、そう思う。


「だから、ダメ騎士に見習ってアンタも、少しはオシャレしたら?」


 そう言って相手を見る少女の向かい、自分の隣に居る外見上の変化が乏しい赤い少女が次なる皆の注目(わだい)を集める。


「いちお、アンタもわたし達と同じ土俵なんでしょ?」


 一体なんの話を……。と、自分も眼で話題に乗る。


「……――着飾る必要はない」


 いつも通り(おもむろ)に魔導少女が言う。


「へぇ、強気ね。それは、同居してる強みってコト?」


 次いで自分にはよく分からない質問をする少女に顔を向けて、赤い少女がフッとニヒルな笑みを見せる。


「ムッカ。――アンタ今、確実にバカにしたでしょ?」


「……――知らん」


 目を横に逸らし、あからさまな態度で赤い少女が言い捨てる。――と。


「念のために言っておくけど。水内さんが最初に選んだのは騎士さまってだけで、次優先してお鉢が回るかは、べつの話よ。って言うか、義妹(たちば)的に、可能性も無いんじゃない?」


 堂々とした態度で腕を組み、対抗する様に少女が言い放つ。


 理由はさておき、念の為に言いたい。“次”とか考えてもいませんからね。


 ――などの言い分を言おうか言わまいか悩む内に、スっと村娘の手が小さく上がり、皆がそっちを向く。


 そして少女の、なに? を切っ掛けに、その名状しがたい表情の口が開かれて――。


「――……たちば、同居……? それに救世主さま……?」


 あ。あぁ。






 それはふとして思い出した。ので――。


「……そうだったのですね」


「そ。だから、アンタも遣りたいように遣りなさい」


「は……はい」


 ――と、悪そうな顔をする相手に返事をする村娘に。


「あの、マイラさん。ちょっと聞きたいことがあるんですけど」


「え? あ――はい、何?」


 何故か若干相手が戸惑いながら(こた)える。更には皆の視線を受けつつ――。


「――……最近、身の周りと言うか――村の付近とかで、何か問題とか、は……?」


「問題? ――そうね……この村では、なんにも起きてないわ。どうして?」


「ええと。ここに来る前、ちょっとした助言というか勧告を受けたので、なんとなく気になって聞いてみました。けど、何もないなら、ただの取り越し苦労ですね」


 何事も杞憂(きゆう)で済めば申し分なし。が、そう納得する自分の心境とは裏腹に村娘の表情は段々と曇りだし――。


「――他の村の話にはなるけれど。最近この辺で見かけない毛色のコボルトや、トロールなんかが頻繁に目撃されてて、先週なんかはここからまだずっと東に在る村が襲われたって、村に来た御者が……」


 なぬ。


 思わず内心で、うろたえる。と魔道少女の隣に居る騎士がやや前のめりになって。


「そういえばジブンの元同僚が先週の討伐任務で亡くなったのですが、それですかね?」


 またさらっと……――。


「――それって」


 次の瞬間、騒々しくというよりは荒々しい勢いで、腕章をつけた二匹のコボルトが部屋に飛び込んできて――(わめ)く様に声を上げながら座っている村娘の周りを跳ね回る。


「な、なに? なんの騒ぎっ?」


 当然の困惑で自身の周りを見て、騒ぐ二匹に問い掛ける村娘。すると若干落ち着いたのか、ぴょんぴょんと跳ねるのは続けたまま、コボルト達が動き回るのを止める。


「マイラ、タイヘン! ナカマ、キケン!」


「マイラ、キケン! ナカマ、タイヘン!」


 そして更に二匹が交互に似た内容を口にし、なんとなく皆の雰囲気が合致していく。


「……――ええと。なにか、あったみたいですね……?」


 何気なく、村娘の方を見て言う。と、相手の顔が向き。


「これはいつもの小競り合いです」


「小競り合い……?」


「はい。時々山の方に残ったコボルト達が来て、村のコボルトと言い争っています」


 なるほど。


 しかしそう言うわりに、すっきりとしない様子の相手が手を口元にやり、不思議そうに。


「でも、いつもとは少し感じが違うみたい……」


 と言いつつ、跳ねる二匹に目を向ける。


 ふム。――まぁ実際に。


「そうしたら、見に行きましょう」


 正直そのほうが早い。


「……そうね。見てきます」


 そう言って、村娘が立ち上がる。


「自分も一緒に行きます」


 次いで立つ。と続け様に皆の腰が上がっていき。


「アンタにしては、決断が早いわね」


 皆から遅れることなく後ろへ椅子を引いた騎士を存外な眼で見て、少女が告げる。


「いやぁ、相手がコボルトなら、ジブンにも活躍の場があるかもと思いまして」


 ただ“かも”と言うあたり存分に本領を発揮している気も。――まぁしかし。


「それでは皆で、見に行きましょう」


 道中の一件でつくづく実感した自分の貧弱さにとっては、十分に心強い存在である。






 そうして向かった所に小競り合いなどは無く。あまりの衝撃に息をすることすら忘れて、見渡せる先の地平線を埋め尽くす緑の体表をした大きな人の群れを茫然(ぼうぜん)と眺めていた。


 が、最初に動き出した騎士が真っ先に自分(こっち)を見――。


「――逃げましょうっ」


 いや、けど。これは……――うん。そう。

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