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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
四章【異世界から来た女騎士と】

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第47話〔差し当たって これは事故なのだろうか?〕⑧

 そうこうして、到着した村の前で馬車を降りる。


「じゃあまた後でっぺなー」


 御者が台から元気に手を振り、馬車が走り出す。


「はい、またお願いします」


 そして、走って行く田舎っぺ御者。


「ではまたっぺなーっ」


 なんと意外にも“いい声”だった。


 皆で練習とか、してるのかな。


 ――なんて、どうでもいい事を思う自分に、黒髪の少女が歩み寄ってくる。


「で、ここからは、どうするの?」


 ム――。


「――ここから?」


「そ。わたし、入村の仕方とか分かんないわよ? 勝手に入っちゃっていいの?」


 入村て……。――まぁしかし。


「それなら心配しなくても」


 と過去の経緯を話し掛けた矢先、背後で人が立ち止まる気配がして――。


「――こんにちは」


 聞き覚えのある声、に振り返る。と次いで――。


「こんにちはです」


 ――会釈して、前回よりも早い登場をした理想の村娘に、し返す。


 が、何故か相手は表情を(しか)める様にしわを寄せ。


「遅かったですね」


 ぶっきらぼうに告げる。


「ええと。そうですか……?」


 というか、到着する時刻に予定とかあったかな。


「すみません。道中にちょっとした揉め事があって、それで遅れた。かもしれません」


「……揉め事?」


 言って、じろじろと相手が自分の身体を見る。


「ええと……怪我とかはしてないんで、大丈夫ですよ?」


 そしてハッと我に返るみたいに相手の目が正面を向く。


「……そう。――……そちらの方達は?」


 結果、目線の向かった先に居た皆を見て、茶色のスカートをはくエプロンつきの村娘がやや警戒した様子で自分に聞いてくる。


 ム――。


「――ええと、妹さんのことは知ってますよね?」


 最も近くに居た魔導少女を手で示し、言う。


「はい。導師さまのことはあの後、知りました」


 と頭を下げて、村娘が魔導少女に挨拶をする。


「なら、初対面なのは三――」


 ――いや、一名はいいか。


 近場でフヨフヨと自由に過ごす聖女をチラ見し、改めて口を開く。


「ええと。二人は自分の知り合いで、――騎士のホリーさんと、――鈴木さんです」


 念のため救世主という立場は隠しておこ


 そうして挨拶をする二人に、村娘が頭を下げて会釈する。と自分に顔を向け――。


「――お二人は今日、どうして一緒に?」


 ム。


「二人はですね」


 と其処で黒髪の少女がぬっと前に出てくる。


「わたしが居たら、なんか支障あんの?」


 その場合は、わたし“達”だと思うのだが。――と、村娘に突っ掛かる少女を見る。


「……鈴木さん、何ですか? 急に……」


「ん。――水内さんこそ、この()となんかあったの?」


「何か? ……ええと、マイラさんは以前、村を訪れた際お世話になった方で――」


 ――あ、そうだった。


「マイラさん、これを」


 相手を見、上着の胸ポケットから四つ折りにした紙を取り出す。


「……それは?」


「たぶん、見てもらえれば分かるかと」


 次いで差し出した紙を――相手が受け取る。


「分かりました。読ませてもらいます」


 ハイと返し、直後に渡した紙が開かれる。と直ぐに――。


「あの……これは?」


 ――眉間に機嫌を寄せて、相手が答えを求めてくる。


「ええと。おそらく預言者様の要望ではないかと」


 実を言うと内容(なか)は見ていない。ので、知らない。


「……私を、からかっているのですか?」


 へ――。


「――ど、どういうコトですか……?」


「私はこんな悪ふざけに付き合うために、待っていたのですか?」


「ぇ、いや。え?」


 一体なにが――。


 くるりと村娘が自分達に背を向ける。


「もう帰ってください。それで、二度と私の所には来ないでください」


「――待っ、待ってください。その紙に一体なにが、書かれて……?」


「紙はただの注文書です……から、早く行ってください」


 いや、なんで。


 と其処で再び少女が前に進み出る。


「ちょっとアンタ、勝手ね」


 そして村娘の顔が、堂々と腰に手を当てて立つ少女の――肩に宛がわれた(ほう)の手に向く。


「……なにですか。それに、それは……」


「ん? ああ。これはさっき拾った物よ。気にしないで」


 いや、気になるでしょ。


「拾った……。――勝手、と言うのは?」


 ム。


 唯でさえ物騒な相手に対し物怖じをしない口調とその様子を見て、思わず感心する。が。


「わたし達、今、着いたところなのよ。茶の一杯くらいは出しなさいよ」


 相手が、どう出てこようと()にも留めないので、当人には関係のない話だ。


「……私たちは、何も頼んではいません」


「だからナニもしないっての? 現金ね」


「ゲンキン……? 何をおっしゃりたいのかが分かりません」


「ふーん。わたしが聞いた話だと、水内さんのおかげで随分手広くやってるみたいじゃない? その恩人が、わざわざ足を運んで、来てんのよ」


 手広くって、言い方よ。


「……だからそれも、頼んではいません……」


 すると其処で、今度は少女の方が相手に背を向ける。


「あ、そ。分かった。そういう考えなら、それでいいわ。自分達によくしてくれた恩人を、なんの説明もなしに追い返すのね。はい分かった、オッケー――」


 ――ちらりと目が向けられる。


 ム……。


 しかし何を意図してかは分からなかった――ものの、村娘の方を見。


「……ええと。どういった理由で、そう思ったのかは気になりますが。マイラさんの迷惑になるようなら、自分達はもう帰ります」


 一応、目的は既に果たした事だし。


 という訳なので――相手に一礼してから、踵を返す。


「ぇ……ぁ、あの……マ、待ってっ」


 直ぐにムと振り返り。ハイと応答する。


「……カ、帰りの馬車が来るまで、なら……」


 ム――。


「――けど、それだと迷惑では?」


 途端に相手が眉間にしわを寄せる。がしかし、これまでとは違った感じで、どこか恥ずかしそうに。


「イ、いいからッ付いて来てくださいっ」


 そして、ぷいっと自分達に背を向けてから足早に――村の方へ、歩いて行く。


 すると同じ様に状況を見ていた少女の顔が自分の方を向き。


「さすがね」


 ――なにがでしょう。






 総体的に前と変わった様子のない村に足を踏み入れた直後、視界に在った建物から木製の洗濯カゴを抱えて反対側の家に駆け込む見慣れた毛色の獣人(コボルト)が前を通り過ぎる。


 ん? ――今のは……?


 と思うそばから目の前を、別の建物から出てきた獣が慌ただしく通って行く。


 ムム。


「なにやら忙しそうですねぇ」


 声に反応して見る。と、いつの間にか横に来ていた騎士がほんの僅か額に垂れる前髪を手を横にして上げつつ遠くを見る仕草で村の様子を窺っていた。


「そう、ですね」


 ――を口にする最中も獣が何となく目にする所を横ぎる。


 なんだろう、心なしか前回よりも村が騒々しい様な?


 と思う矢先にさっき前を通った獣が衣類などで満杯になったカゴを頭の上に乗せた状態で最初の建物に入って行く。


 ふ、ふム。


「……――なんか前とは様子が」


「マイ、カエタ! ハヤク、テツダウ!」


 ――ム。


 自分達の少し前で立ち止まっていた村娘に声を掛けようとした途端、前方を通ろうとした獣が四足を最大限に活用して()まり――こっちを向いて、声を上げる。


 そして何故か村娘に向かって走ってきた――と思いきや、横を素通りし、そのまま自分の前まで来て足を停め。背筋を伸ばし、直立する。


「ニンゲン、テツダエ」


「ぇ? ――……なにを?」


「コチ、コイッ」


 言うと同時に手を掴まれ、ぐいぐいと村の中へ引き摺るように連れて行かれる。


 え、いや、え? ――というか力強っ。


「どわッ、なっなにをするのですかッ?」


 引き摺られながらも、顔を向ける。


「キタナイ、ヌゲ! アラウ!」


「どわぁ! こんな所で――めくらないでくださいっ!」


 自分を引っ張っているのとは別の三匹に群がられ、着ている物を必死になって押さえる騎士。が何分手数が違うので、目を逸らす――と。


「それ以上、一歩でも近づいたら、撃つわよ」


 交代に小さなせめぎ合いが視界に入ってくる。が次の瞬間、背後から迫っていた獣に手の物を奪われ、少女が二匹に覆い被さられ――たところで、視界が引き入れられる建物の壁によって塞がれ見えなくなる。


 ……――うん。


 次いで、行き先が古典的な牢屋でないことを、内心でひそかに祈る。


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